春 3篇
春 3篇
春 3篇 @2004
▼春の坂道 山岡荘八著
滝坂道は、春がいい。しんと静まり返って藪に鳥が囀るのを聞きながら石畳をこつこつと歩いてみる。石切峠を過ぎると谷が開け、人家の気配が漂う。柳生の里も間近だ。
水が湧き出るのを見つけた。ふきのとうや土筆もある。宗矩、十兵衛はもとより、沢庵も武蔵も駆けたこの古道に時代を超えた高鳴りを感じる。
「春」がつく題名の書物を3冊、思いつくまま挙げてみます。(続)
▼春の夢 宮本輝著
昔のこと、仕事を終えて難波から近鉄特急に乗りました。隣席に若い女性が1人座って文庫本を読んでいました.一方で私は仕事の疲れもあり缶ビールを飲みながらぼんやりとしていたと思います。
ふとした事で彼女の本の1行を盗み読みしてしまいます。それが宮本輝さんの文章だったので驚きと歓びで、「それ宮本輝ですよね」と声を掛けてしまった。「ええっ…」と彼女。口には出さず、意は通じ、名も聞かず。
▼春の城 阿川弘之著
1977年6月27日と文庫本の裏表紙に書いてある。阿川弘之の他に原民喜、椎名麟三、武田泰淳、石川達三などを読み漁っていた頃だ。古本屋を見つけると必ず立ち寄り、というか母校の前は古本屋街なので、毎日、50円か100円の本を2,3冊買っては、講義に出るのを御座なりにして下宿に帰った。
1年で400冊ほどの本が四畳半に増えてゆく。あれから何度も引越しをするたびに箱に詰められて運ばれてきた1冊ですっかり日焼けしてしまっている。
[2004年(平成16年)2月21日]