駄々のあと慰めるかのように終列車  [第55話]

地下鉄の階段をホームへと下りながらどんな会話をかわしたのだろうか。

ラッシュ時よりも人ごみが少なくなったものの、私たちがホームで別れを惜しんでいる間にも、人は増え続けホームを埋め始めていた。

そうか、終電車がもうすぐ来るのだ。

  駄々のあと慰めるかのように終列車  ねこ作

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電車に乗る前、アナウンスの騒音の中、あの人は無言だった。
なんにも言わずに黙って私を見つめた。

そう、そんな優しいさようならが切ない。

  沈黙がサヨナラせかすシンデレラ  ねこ作

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時刻は12時を回っていたのだろう。

また明日、また明日、と心の中で繰り返している私は、そこに滑り込んでくる電車のガラス窓に写る自分を見ている。

揺れる意識。
揺れる私の姿。
ブレーキ音を軋ませて止まる電車。
開くドア。

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シャツのボタン、上から順に
外してみては、またとめてゆく。

「どうするのよって… わからない」

そんなあなたの笑わない顔を、
真正面からゆっくり見つめた。

初めてのこと。
長い夜。

続く