ハイヒールこつこつ響く別れまで [第19話]
私は覚悟をしている。
この人とは年が明けたらお別れなんだということを。
「兄じゃダメなの、母を看るのは私でなきゃ・・・・」
口癖のようにいつもそう言う。
そのときの目を彼女は決して私に見せなかった。
銀座のメインストリートにクリスマスソングなど流れていない。
オフィスビルからスーツ姿で吐き出される男や女。
思い思いに雑踏へとまみれてゆく。
私も彼女と並んで
腕を組むことなく
どこに急ぐわけでもなく
歩いた。
ハイヒールの靴音が脳裏に残る。
私がハイヒールが嫌いなのは
あの時の音が蘇えるからなのかもしれない。