幻の旅 ―東北― 7 [第45話]
幻とはいったどういうものをいうのだろう…。
そんなことを考えながら、あの日の朝を思い出している。
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私は、郡山市から北に向かって旅立った。
過去の人生における或る一時期の私であったら、彼女と別れたことでおおよそ投げ槍になるか、または絶望に陥り、旅をキャンセルしてしまっていたに違いない。
しかし、あのときには若さがあったし、野望もあった。揺るぐことのない人生のビジョンを描いていた自信のようなものが私の心を支えていたのだ。
旅を続けねばならない、と考えたのではない。
自由に未知なるモノを探し求めて、身体の何処からか湧き上がってくる好奇心に逆らうことなく前進をするならば、自ずから旅は続くものであったし、北に向かって然りであった。
彼女の薬局を開店の時刻に訪ねて、その後、私は北へとバイクを走らせた。
続く