鎌倉へ、、、 [第25話]
(22年前のきょう、3月16日、夜が明ける直前まで嵐のような雨が降っていたのでした。結婚式です…)
そう、24年前のあの日も雨が降っていた。
それにしても、今までに何度、このような回想記を同じ書き出しで始めたことだろう。
春の雨は、冷たさを幾度となく私の身に染み込ませる。歳月は刻々と過ぎ、記憶を朽ち果てさせて枯れ葉のように棄ててゆく。
晴れの日、くもる日、ときには深深と雪の降る日もあった。
暮らしの中で、私の意思とはかけ離れた物の司る悲哀があり、或る日雨が降っていたとしても、この日にはこの日特有の余韻のような思い出がこびり付くように記憶に残り、私はそれを言葉にして残すことに苦心をしている。
でも、諦めよう。記憶とは、儚いものなのだ。
私の心には覚悟ができ上がっていた。
東京駅の地下ホームから、いったいどのあたりで地上に出たのだろうか、雨の中を横須賀線は鎌倉に向かって走っていた。
渋々でもない、ザーザーでもない。シトシトでもない。
列車の窓の外からは音さえも届くことなく、冷たい雨は静かに鉄路を濡らし続けていた。