幻の旅 ―東北― 2 [第40話]
若さというものは、素晴らしい。
二十数年の歳月を経たことで、あの時代の自分を冷静で客観的に振り返ることができるからこそ、今、そんなことが書ける。
私は夜明けの京都市内を颯爽と走り抜けた。
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天気は良いし、太陽が昇り青空が広がっていた。とにかく信州へ、そして鶴さんの所へ・・・、このことだけを考えての出発だ。だから好天なのが何よりも嬉しい。京都市内を抜けて滋賀県に入る。旧中仙道であるR19に入り関が原方面へと向かう。左側に新幹線のあるところで第1回目のピースサインを交わした。
軽トラのおじさんが信号で止まっているときに「暑いでしょうね、革を着て…でもかっこいいよ。どこまで行くのだい?」と聞いてきた。「北海道に行くんだ。10日間の休みで・・・」と答えて別れてしまう。
【日記から】
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心の中には鶴さんが待っていた…はずだった。しかし、その気持ちを紛らわしながら、乗鞍高原に寄り道をしたり、上田まほろばYHに泊まったり、さらには草津白根道路も楽しみながら、北に向かっている。
家を訪ねても会ってもらえないかもしれない。もしも、会えたとしても願いが叶うわけでもないだろう。会えば必ず別れて帰ってこなくてはならないのだ。それが私には恐ろしかったのだろう。
それでも、北に向かって走った。
1泊目は上田市、2泊目は奥只見。3日目に猪苗代湖を見た。
日記ではそのあとのことを以下のように書いている。
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とにかく猪苗代湖に出てみた。海みたいな湖だ。大きいから湖という感じはしない。汐の香りがしないから何となく味が出ない。R252からR49にすでに移っていた。このあたりは磐梯朝日国立公園である。残念ながら一番見てみたい磐梯山には雲が掛かって見えない。猪苗代湖から磐梯山の東側を回って裏磐梯に出た。五色沼に行ってみたが人ばかり。ひとつだけ沼を見て…
(以下略)
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雲が掛かって見えなかった磐梯山が象徴するかのように、私の心にも雲が掛かっていたのだろうか。私はこのあと、山を越え郡山市内へと降りてゆく。
まるで神の導きのように彼女の住む町の近くまで、ほとんど何も頼らずに行ってしまうのだ。
雨が降り始める。しょぼしょぼと降り始めるのだが、それもやがて容赦なく大粒の雨に変わる。
<続く>