見出し画像

塩は要らない!無塩論者の危ない思想

コンビニコラムから派生して、無化調論者に対してのひとつの僕なりの警鐘を唱えた。もうひとつ危ない現象として、減塩レシピ、塩なしレシピに代表される塩は身体に必要ないものであり、そして塩を徹底的に排除するのが健康にいいという危ない説だ。僕はこの人達のことを無塩論者と呼んでいる。昨日と同じく、サイエンスデータに基づかない危ない主張をしている人たちのことだ。今日は塩の重要性について、話したいと思う。

昨日のコラムでも話したが、塩は塩化ナトリウムという成分である。このナトリウムが如何に大事かというと、簡単に話すとまず身体にとって必須ミネラルのひとつであり、身体の細胞内外の体液の浸透圧を調整する役目を取っている。このバランスが消化吸収においてとても重要な役目を果たす。

入院したときに、点滴される体液に近い成分には大体500mlに3g程度の塩化ナトリウムが入っている。そう、塩を注入することで身体のバランスを保っているのだ。僕はトリアスロンをしているが、アイアンマンなどの長距離のレースでは、常にレース中に塩を食べている。塩のナトリウムイオンは、脳からの電気信号を伝達する物質でもある。汗を書いてナトリウムイオンが足りなくなると、運動中に足がつったりしてしまう。人間がお腹の中にいた頃の羊水も海水も血液も大体同じ組成だ。これだけ書いただけでも塩がいかに大切な物質なのかが分かると思う。

塩を取りすぎることで高血圧になるというエビデンスは、塩を摂取することで、血圧が上昇し減塩で血圧が下降する「食塩感受性」の人には当てはまるが、それ以外の人たちにはあまり当てはまらない。厚生省基準の一日の塩分摂取量が10g以下という説も、食の摂取と血圧値が連動しない「食塩非感受性」の人にはそこまでの意味をなさない。むしろ塩を取らないことでミネラル不足になるというリスクもはらんでいる。ミネラル不足になると味覚障害など様々な不調を起こす。

とりわけ料理において塩はとても重要な存在だ。それは食材の味を引き出す能力を持っているということ、すなわち食欲を増進させるという成分であることだ。鳥ガラで炊いたスープに、ほんの一つまみの塩を入れるだけで、そのスープの奥深い味へと進化する。塩は浸透圧の原理で、食物の水分を外に出す作用にもなる。野菜の水抜きに塩を使うのもそうだ。魚に塩を振れば、タンパク質の溶解が始まり、焼き上がりがプリッとする。これは先程の脱水性と反対の作用で、食べ物の保水性を維持できるのが塩なのだ。ちなみに汁物の味付けでは1%前後の塩分濃度で加減を取る。パスタを茹でる塩水もそうだ。この1%という値はだいたい体液の塩分濃度だ。

現代は短いフレーズしかなかなか聞いてもらえない。キーワードとして減塩、無塩と聞くと「すぐに身体にいい」という安直な連鎖反応をするのではなく、昨日の化学調味料も同じことだが、何事も正しく理解をして、正しく評価をして、正しく恐れることがとても大切だと思う。

ちなみに我が家のぬか漬けは塩分濃度7−8%ぐらいだ。このぐらいが僕にとってはちょうどいい。


いいなと思ったら応援しよう!