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貯蓄保険の「返戻率」はミスリードを誘うための不誠実な数字
日本生命の広告でこういうのがありました。
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25歳から毎月1万円積み立てて、65歳から受け取れる年金なのですが、払い込んだ保険料に比べて、もらえる年金額が111%になるという商品です。
インデックス投資信託と比べてみましょう。
三菱UFJアセットのシミュレーターで計算してみましたが、リターン7%、リスク15%という全世界型のインデックス投資信託だとこんな感じです。
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40年も運用すれば平均値では2400万円、下ブレして下位5%の結果に終わったとしても670万円と、「返戻率」で見れば約140%です。個人的には保険会社の貯蓄商品はアホらしくてとてもお金を預ける気になりません。他の人は平均7%で資産を増やしているのに、自分がこんな商品に加入してしまったら相対的にはむしろ老後は貧しくなるでしょう。
そもそもの話として、証券会社がこんな「返戻率」のような数字で広告を打ったら、即座に金融庁から怒られるはずです。なぜ保険業界だけこのような広告が容認されているのか、不思議な話です。
保険会社の貯蓄商品は存在自体が「貯蓄から投資へ」の国策に反するものですし、返戻率をアピールする広告は消費者の誤認を意図的に誘うもので、消費者保護上の問題は大きいといわざるを得ません。
最低限、予定利率表記を義務付けて、他の金融商品との比較可能性を高めるべきです。冒頭の日本生命の商品でいえば、予定利率1%ということが明確に表示されていれば投資信託との比較がしやすくなりますが、商品のページをちょっと調べても予定利率が見あたりませんでした。
なお、たまたま日本生命の広告を目にしたので日本生命について書きましたが他社も同じです。むしろ、ちょっと前までは日本生命は広告でも予定利率を表示しており、リーディングカンパニーとしての矜持を感じていたのですが、残念ながら日本生命も返戻率表示の広告になってしまいました。
日本生命のトップは次の経団連会長だそうですが、このような広告が本当に日本の経済界のトップとして適切なものといえるのか、単にインターネット上のABテストで数字を追いかけるだけのものに堕してしまっていないか、改めて自省してもらいたいと思います。
こういった、なあなあの業界慣行が社会を揺るがす不祥事につながっていくというのを、この2年ほどイヤというほど目にして来たはずです。返戻率表示というのは消費者を惑わすだけの百害あって一利なしのものです。業界が自主的にやめられないのであれば、消費者庁の介入もやむを得ないところでしょう。
よかったら著書もごらんください。