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2024年7月・8月の株安の損失を回復した記念に、金融地獄を生き抜け「ショックとのつきあい方」を公開します

2024年の6月にそれまで使っていた資産運用手段を清算して、マネックスの「on compass」というファンドラップに一元化しました(厳密には確定拠出年金でも運用しているので全部一元化できたわけではないですが)。

ファンドラップとはなんぞやというと、お金を預けると事前に決めた方針で勝手に運用してくれるサービスで、年間1%程度の手数料で使えます。インデックス投資信託中心の運用であれば、長期的には手数料を超えるリターンは十分期待できるので、めんどくさがりの私にとってはありがたいサービスだと思っています。

で、2024年の6月から使い始めたということは、7月・8月の世界同時株安の影響をまともに受けたということです。そのころはちょうど「金融地獄」の原稿の最終チェックをしていたのですが、それを受けて最後に1つ「ショックとのつきあい方」の項を追加しました。

本音をいうと、これからせっかく金融教育の本を出そうと思っているときに冷や水を浴びせるような形でタイミングが悪いなあと思っていましたが、ついに2024年10月7日付で損失を全回復しました。日本株はまだ戻りきっていませんが、全世界に投資していればちゃんとショックから立ち直れるといういい見本になったのではないかと思います。

【参考】on compassの成績
  6月末 +2.84%
  7月末 -1.59%
  8月末 -3.90%
  9月末 -3.33%
  10月7日 +0.15% ← ショックを乗り越えプラスに転じました!

これを記念して「ショックとのつきあい方」の項を公開しようと思います(出版社了解済み)。こちらを読んで興味を持っていただけたら、ぜひ書籍もお買い求めください!


「ショック」とのつきあい方

 本書は2023年の夏頃から構想を練り始めて、2024年の夏頃に詰めの作業を行っているのですが、この1年の間の経済環境はまさに「激動」でした。
 2024年3月19日に日銀が17年ぶりの利上げを実施したことなどの影響で、銀行の普通預金の金利が0.001%から0.1%へと、100倍になりました(金利が上がるたびに本文を修正していたので、全部直したとは思うのですが、もしかすると中には修正漏れがあるかもしれません。それも激動の経済の余波ということでご容赦いただけるとありがたいです)。
 もうひとつの大きな変動といえば、やはり株価の急騰からの暴落でしょう。2024年2月22日、日経平均株価の終値は3万9098円68銭となり、史上最高値を更新します。バブル崩壊前の最高値を超えたということで、ひとつの時代の区切りがついたともいえる出来事でした。その後、株価は順調に上がっていき、7月11日には4万2224円2銭と、快進撃を見せます。しかし、そこから株価は暴落をしはじめ、1ヶ月もたってない8月5日には、3万1458円42銭と、株価にして1万円以上、割合にして25%もの大暴落をしてしまうこととなりました。
 原因としてはさまざまなことがいわれています。一説にはトランプ元大統領が狙撃されたことで、来たる大統領選での勝利の可能性が高まり、すると米中関係が悪化するので世界的な経済の減速が起こると予想されたからだ、というようなこともいわれています。
 なんだか風が吹けば桶屋が儲かるというような話にも聞こえますが、この説が正しいのかどうか、私にはよくわかりません(逆にいえば、暴落の理由などわからなくてもインデックス投資信託をやるだけなら支障はないということです)。まだ投資を始めていない人の中には、「やっぱり投資なんてしてなくてよかった、もしNISAのブームに乗っていたら悲惨なことになっていた」といっている人もいます。
 長期的に投資をしていく以上、こうした「ショック」のあおりを受けることは避けられません。ここ40年くらいでみても、ブラックマンデー(1987年)、(平成)バブル崩壊(1990年頃)、ITバブル崩壊(2000年頃)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)など、国内外でさまざまな経済ショックが起こり、そのたびに株価は暴落しています。
 しかしながら、目を海外に向けてみれば、たとえばNYダウ平均株価は、このようなショックでダメージを受けながらも、1980年末の963.99ドルから、2024年7月末の4万842.79ドルまで、およそ40倍もの成長をしてきています。そう、ショックはあくまでも一時的なものであり、長い目で見れば経済全体は成長していくのです。
 さて、読者の中には当然次のようなツッコミを入れている人もいるでしょう。「アメリカはそうかもしれないが、日本は(平成)バブル崩壊から30年以上も株価が元に戻らなかったじゃないか、だから投資なんてやるもんじゃない」と。その指摘には正直なところ一理あるのですが、このように考えてはどうでしょうか。
 ちょっと寂しい話ではあるのですが、「30年以上も株価が回復しなかったのは単に日本の調子が悪かったからで、アメリカを含めた全世界株式に投資をしていたら日本の調子の悪さを十分カバーして、儲かっていたのではないか」と。要は、株(投資)が悪かったのではなく、日本経済が悪かっただけであったということです。
 歴史を振り返れば、大航海時代には世界でも最も力のある国であったポルトガルが今では経済的には大国とはいえなくなっていたり、有史以来東アジアの覇者であった中華文明が産業革命に乗り遅れて日本の後塵を拝するようになったり(最近は国全体でみれば中国の方が日本よりも経済的に大きな国ですが、1人あたりGDPではまだまだ日本の方が上です)と、ある国が世界的な経済成長に乗り遅れて国際的な存在感を落としていくことはよくあることで、日本もその事例のひとつだったということなのではないでしょうか。
 そこから導き出される教訓としては、やはり「卵をひとつのカゴに盛るな」ということです。日本というカゴにだけ卵を盛った人はバブル崩壊で大きな損失を抱えてしまったでしょうが、世界各国のカゴに卵を分散させていた人は経済ショックを受けてもしっかり儲けているのです。そういう意味でも、投資をS&P500などの今調子のいいアメリカに集中させている人が多い現状は、本当に大丈夫なのかと少し心配です。
 もうひとつ、経済ショックの時に重要な格言があります。それは「布団かぶって寝てろ」というものです。要は「しばらく投資のことは忘れてしまえ」ということです。数字を追いかけていると気になって仕方がないので、世界全体としてはいずれまた株価は上がるだろうとのんびり構えてアプリを閉じるというのがオススメです。
 もちろん、個別株に投資している人や、アクティブ投資信託などで特定の分野に投資を集中させている人、生活に必要な資金まで投資につぎ込んでしまっている人、デイトレーダーなどは寝ているわけにもいかないでしょう。いつかは復活するであろう「経済全体」と、経済ショックに巻き込まれて会社が倒産してしまったら二度と復活しない「個別株」は別物です。個別株は、「損切り万両(投資で損をしたら未練を残さずにさっさと売ってしまう方がよい)」という言葉もあるように、早めに売ってしまうことが正解である可能性もあるので、寝ていたら大変なことになります。経済ショック時に寝ていても許されるというのは、「万年雪」のような余裕資金を全世界株式インデックス投資信託に丸投げしている人だけの特権だということです。

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