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ライフラインとしての使命 #188 配管とは

【少々、専門性の高い内容となりますが、お許しください。】

配管は、液体や気体を目的の場所に正確に送るためのシステムです。
具体的には、配管は管や継手、バルブなどの機材や機器を包括的に設計し、液体や気体を効率的に配送するシステムとして定義されます。
重要な点は、設計や機材だけでなく、施工(工事)も含まれることです。

配管は、人間の生活に直結する重要なライフラインです。
しかし、配管の多くは人の目に止まらない地下や壁の中に隠れています。
結果、災害時などで、水やお湯、ガスなどが出なくなって初めて重要性に気づくものの、普段は、関心が低いのではないかと思います。
私は、このような配管に関わる仕事に約30年従事して来ました。
その意味でも、少しでも、この場で配管とは何かをお伝えできたらと思います。

壁の中の配管イメージ

配管は単なる機械の組み合わせではなく、流体の運搬を実現するための総合的なシステムであり、その設計から施工までをトータルで考える必要があります。

また、その用途に応じてさまざまな仕様や流体が異なります。
例えば、衛生配管では給水や排水、空調配管では温水や冷水、その他にガスや薬品を扱う配管などがあります。
これらの配管は、使用される場所や要求される条件によって、異なる性能が求められます。

具体的には、耐久年数、耐圧力、耐温度、耐腐食性、耐震性、確保すべき流量、設備の運用や保守、安全性、消費エネルギー、騒音対策、環境への配慮などが重要な要素です。

そして、これらの要素を考慮して設計する際には、管種、管径、管壁の厚さ、配管ルート、継手の形状や位置、弁の仕様、保温・保冷対策、排水やエア抜き方法、ガスケットの仕様などを決定します。

また、必ずしも性能が優れていたら良いものではなく、現実的な問題として予算も考慮しなければなりません。

配管の予算には、初期の工事費用(イニシャルコスト)と長期間にわたる費用(ライフサイクルコスト)が含まれ、これらのコストバランスも重要な評価軸となります。

配管の設計は非常に多岐にわたる要素を考慮しながら行われ、それぞれの用途や環境に最適な性能を提供するために細部まで計画されます。

配管工事で使用される主な機材は、管(パイプ)です。
管は金属系(ステンレス鋼管、鋼管、鋳鉄管、銅管、塩化ビニルライニング鋼管など)と非金属系(硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管、架橋ポリエチレン管、ポリブテン樹脂管、コンクリート管など)に分かれます。
これらの管を接合し、方向を変えるエルボ、分岐させるチーズなどが管継手です。
その他にも配管には弁、計器、水栓、タンク、ポンプ、ろ過機なども使用され、さまざまな工事に対応します。

配管の施工は、設計に基づき、指定された機材・機器を使用して行われます。
一般的には、配管を施工するために特別な資格が必要とは限りませんが、施工の条件によっては特定の資格が必要とされます。
代表的な資格としては「配管技能士」があります。
この資格は国家資格であり、建築配管作業とプラント配管作業の二つに分かれています。
建築配管作業では、住宅やビルなどの給水・給湯・排水通気・空調などの一般的な配管が対象です。

一方、プラント配管作業は、石油製造やガス製造などの特殊な施設向けの配管作業を指します。
さらに高度な資格としては、「管工事施工管理技士」や「建築設備士」があります。
施工方法は、設計や機材・機器によって異なり、それぞれの製造業者が指定する施工講習会の受講が求められます。

私たちを取り巻く環境は、日々、変化しています。
その環境下にある配管の環境も変化しており、求められる特性も変わって来ています。

例えば、SDGsです。
SDGs (Sustainable Development Goals)とは、地球ぐるみで、環境破壊や貧困などに終止符を打ち、すべての人が平和と豊かさを享受、持続できる社会を実現させることを目的としています。

主に配管関連の目標

現代社会はしばしばマイオピアに陥りがちです。
この状態とは、目先の利益や短期的な視点に偏り、将来の地球環境の保全を軽視することを指します。
過去の産業革命や高度成長期の間、価格重視で長寿命化を無視した製品づくりが一般的であり、それが結果として廃棄物や環境汚染を招いたのです。

その意味でも、現在の配管を含む建築資材には、持続可能な長寿命であることが求められる傾向にあります。
また、昨今は、建築現場の労働者不足や高齢化が深刻となっています。
その意味でも、施工者に優しい配管が求められています。

例えば、ステンレス配管です。
ステンレス配管はその耐久性と再利用性から、生産時の二酸化炭素や改修時の廃棄物の排出抑制に寄与します。

また、施工においては、従来のような現場の負担を要する溶接やねじ込みによる配管の接合ではなく、現場の作業者の負担を減らすことが可能なメカニカルジョイントの開発も進んでいます。

拡管式・プレス式・ワンタッチ式

私たちの目指す未来は、単なる製品の提供を超えた、持続可能な社会の実現です。
配管においても、そもそもの液体や気体を目的の場所に正確に送るためのシステムという概念だけで成り立つものではなくなりました。
技術革新と共に環境負荷を減らす努力が求められる中、製品の品質とサステナブル性を両立させ、地球や社会に貢献する使命を果たす必要に迫られています。

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