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デジタルは手段でしかない #163 DX

現代は、VUCA時代と称される通り非常に変化が激しく、速く、先行きが不透明で、何が起こるのかが予測が困難な環境下にあります。
しかしながら、各企業は、その様な環境にあっても、社会における存在意義を示すためにも成果を求め続ける必要があります。

特に日進月歩とも言えるのが、技術の進化、そしてイノベーションは、経済発展の原動力ともいえる革新的な変化をもたらします。

近年では、IT革命、インターネット革命といわれる通り、デジタル技術やデジタル技術を活用したサービスが、これまでの産業では考えられないスピードで進展しております。
これは、単に便利になるという一元的なものではなく、ニューノーマルともいわれる、これまでの常識を覆すような多元的な変化が避けられない状態を招いています。

2008年に国内で販売開始されたスマートフォンは、2010年で世帯保有率が9.7%でした。
それが、2020年になると86.8%にまで普及しています。
さらに、タブレット端末においても、38.7%まで普及している状況です。
これらの普及は、確実にインターネットを生活に取り入れることとなり、例えば、SNSは幅広い年齢層で利用率が高まっています。

主な媒体別の広告費の推移を見れば一目瞭然であるが、地上波テレビが辛うじて一定水準を保っているものの新聞や雑誌の紙媒体の低下は如実であり、手軽にインターネットで情報収集できる現状を物語っています。

同様にインターネットを介した電子商取引(Electronic Commerce)も確実に世界的に普及しています。
その特徴は、誰もが参加できる、民間主導で市場が形成される、スピードが速い、国境のない市場が形成されることと言われています。
また、昨今の非接触型のビジネスモデルや労働力不足に対応する意味も高まっています。
結果的に実際に店舗を持ったビジネスモデルが淘汰される事例が増えてきています。

これらのデジタル技術による環境の変化遍歴として、よく取り上げられるのがカメラです。
従来、カメラは、画像の記録をフィルムにしていました。
ユーザーは、何カットかを取り終えると、どの様な仕上がりになるかも分からないままフィルムを専門店に持ち込んで現像してもらい、後日、写真という形で手に入れていました。

そこに1990年頃に登場したのが、フィルムからイメージセンサーと呼ばれる電子部品に置き換えて記録するデジタルカメラです。
しかし、当初は様々なパーツの性能も低く、フィルムカメラを置き換えることになるとは予想すらされていませんでした。

ところが、写真現像の工程がなく、撮ったその場で撮影画像を確認できることやオンライン上で写真データを送受信する仕組みなど、フィルムカメラにはない機能が現れ始め、次第に評価を高め始めます。
さらには、基本となるパーツがすべて電子部品であることから、パソコンなどのデジタル機器と共に加速度的に進化するデジタル技術の進化と共に画質・機能・性能などが向上して行きました。

そして2005年には出荷台数でもフィルムカメラを逆転し、現在では、フィルムカメラがニッチな存在となっています。
また、2008年当時に発売されたスマートフォンに搭載されたデジタルカメラも日々進化し、2016年にはコンパクトカメラの生産量を8分の1までに激減させることになります。

更にスマートフォンは、高性能なデジタルカメラを搭載したデジタル通信デバイスとなりました。
タブレット端末などと合わせて普及が広がり、画像データを使った新たなサービスやビジネスの仕組みが生み出され、SNSを中心にオンライン上で世界中の人々が写真データをシェアするようになっています。
これは、フィルムカメラの時代では到底、予測できないような状況です。

2004年以降のデジタルの進化と浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念から広がったのが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)です。

トランスフォーメーションの意味は、一般的には「変換」ですが、より大きな変換であることから「変革」と捉えるべきかと思います。
また、デジタルトランスフォーメーションの英語表記は「Digital Transformation」ですが、略称は「DT」ではなく「DX」とされます。
DXの理由は、英語圏では、「Trans」を「X」と略すことが一般的であることからだとされております。

日本においては、2018年12月に経済産業省が企業向けに「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を出しております。
この中で、あらためてDXの定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と示しています。

DXの推進が強く求められる一方で、日本企業には課題も多く残されています。
例えば、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)などのITシステムでは、目先の導入が目的となり、結果的に、状況が変わる度にカスタマイズを繰り返し続け、肥大化、複雑化、あるいはブラックボックス化しているといわれています。
結果、保守・運用費が技術的負債ともいわれる足かせとなり、老朽化しても入れ替えることが出来ないなどの問題を抱えています。

この傾向からすると、DXに関しても、最新のデジタル技術を導入することが目的となってしまいかねません。
デジタル技術は、何らかの問題を解決する手段であって、それを活用することで、結果的にDXを実現させることにならなければなりません。
決して、導入することが目的となってはなりません。

経済産業省のガイドラインにおいても、その目的は、「DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること」となっています。

現在、各企業では、このVUCA時代だからこその問題を抱えています。
特に労働力不足は深刻な問題です。
そもそもの少子高齢化により物理的に不足して当然です。
継続した採用活用は行うものの、人材に代わる労働力を創造する取り組みを推進する必要があります。

その意味でも、定型業務などは、デジタルを含めたオートメーション化にシフトさせ、限られた人材には、クリエイティブな業務に集中させることが必要となって来ます。

しかし、これを逆手に取れば、企業としては少ない人員で対応できる体制を構築することであり、生産性の向上につながります。
反面、自分の業務範疇を定型的なものも決めつけた成長意欲の低い人材は、仮に労働力不足とは言え淘汰されて行く可能性もあります。

今後もVUCA時代の傾向は強くなって行くのかもしれません。
しかしながら、デジタルなどの技術も更に高まってくると期待しております。
既存のITシステムの再構築は当然ながら、IoT、AI、5Gなどの様々なデジタル技術を複合化した新しいデジタルシステムを導入、運用することでDXを推進する戦略的ICT(情報通信技術:Information and Communication Technology)が重要視されます。
そして、それが日本経済の活性化に貢献すると共に、私たちが未来のためにできることの一策になるのかと考えます。

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