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【コレステロールの嘘】 LH比とは?
最近、LDLコレステロール値だけでは、心血管疾患の発症との関連が怪しくなってきたため「LH比が大事だ!」という主張をよく聞きます。
はたして、LH比とは一体なんでしょうか?そして本当にだいじなのでしょうか?
この記事ではコレステロールでよく言われているLHにについて解説します。
「最近はLH比が重要と言われています」というプロパガンダ
以下の論文を見てみましょう
動脈硬化性疾患発症予防における LDL/HDLコレステロール比の臨床的意義と管理目標値の検討 2010 桝田 出
佐久間らは、急性心筋梗塞症(AMI)患者の54.8%がLDL-C 120mg/dl未満で、健常群よりもLDL-Cが低いにもかかわらずAMI発症に至っていることを報告しており、横井も我が国のガイドラインのLDL-C管理目標値を達成しているにもかかわらず急性冠症候群(ACS)を発症する患者が存在することから、LDL-Cだけを脂質管理の指標とするとACS発症リスクを見逃す可能性があると指摘している。
この論文で引用されている文献は以下です
佐久間一郎,岸本憲i明,浅島弘志他:LDLコレステロールが宿病の急性心筋梗塞症例が有する脂 質の特徴:一般住民健診受診者を対照群とした検 討.人間ドック24:129-136,2009.
横井宏佳:急性冠症候群(ACS)を未然に防ぐた めの脂質管理一量から質への転換;LDL-C/HDL C比が意味するもの一.Pharma Medica 26:173 177, 2008.
LDLが低くても心筋梗塞になってる。おかしい!だから、「本当はLH比が大事じゃないか?」という発想が生まれたのです。
ただ、このLH比に関してもLDLコレステロールと同じでLH比を下げたら心血管疾患の発症や死亡率を下げるというエビデンスはいまのところありません。LH比を下げたら予防できるのではないか?という淡い期待だけです。
これも単にコレステロール低下薬(スタチン)を処方するためのプロパガンダに過ぎません。
悪質なのは、LDL値が低くてもLH比が高ければスタチンを処方する理由になっていることです。
LDLコレステロールとLH比の相関
このグラフは「動脈硬化指数としてのLDL-C/HDL-C比の基準範囲 設定の試み」 崎元眞知子2012で掲載されていたグラフです(赤線と丸数字は私が追加してます)
論文中で、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007 年版)の診断基準に基づき、脂質異常症の定義を(LDL-C 140 mg/ dl以上, HDL-C40 mg/dt未満, TG 150 mgldl以上)としています。
① LDLコレステロール値140mg/dl以上でLH比が2.5未満→脂質異常症スタチンを処方
② LDLコレステロール値140mg/dl以上でLH比が2.5以上→脂質異常症でスタチンを処方
③ LDLコレステロール値140mg/dl未満でLH比が2.5未満→リスクが高い場合はスタチンを処方
④ LDLコレステロール値140mg/dl未満でLH比が2.5以上→LDLコレステロールは高くないけどLH比が高いからスタチンを処方
まとめ
LH比を導入することによって LDLコレステロールが正常でも、LH比が高い場合スタチンを投与することができるようになりました。
しかしLH比には何の根拠もありません。
LH比が大事だ!という医師には気を付けましょう。
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