中勘助『銀の匙』読了

シルバーなスプーンではない方です。
牧畜されてる動物は確か鳥くらいしか出てきません。

これも青空文庫で読めます。

文弱な幼少期(結構モテる)の思い出

解説の和辻哲郎は「子供から見た子供の世界」と言いますが、流石に小学生になるかならないかの普通の子供だとここまで精密に物を見てない筈です。いやまぁ和辻哲郎自身は頭がいいから子供の頃からこうだったと言われたらそうだろうけれど。
とはいえ変に気取らず率直に書いてる文章に小学生以前の面影が見えるのも確かで、もう百年以上前の話なのに何だか当時のイメージが湧いてくるから上手い人の文章ってやっぱり違うなぁとも思います。私もこれだけ読んでてストレスのない文章を書けるようになりたい。

1910年に書かれたんだそうで

日露戦争が終わった年で、「白樺」や『遠野物語』と同い年。
第一次大戦から大正デモクラシーそして第二次大戦の間にも読まれていた筈。こう言っては何ですが尚武の気風には全く合わない男の子のお話なので時代ごとにどう読まれていたのか結構気になったりします。特に二次大戦に入る頃だとどんな扱いだったのだろう。

後編一九

ここだけは自然に対する描写のみが書かれています。
山を登っていく最中に道に迷って谷に紛れ込んだ時の記憶らしいのですが、どうもよほど強烈な印象があった模様。
一方で前編で本当に病弱だった子がたくましくなって、なんて思ったりも。いや彼は途中で急に病弱なのが治って勉強ができるようになったりしているんですが。
志賀直哉もここ読んでたんでしょうか。というのも『暗夜行路』での大山の描写がこの後編一九に影響を受けてるようなそうでもないような。何故か私の中でこの二つが繋がったりしたのです。

暇さえあればタダで読めるし難しくもないので、
機会があったら是非どうぞとお勧めできるお話です。
少なくとも読んで損する類の本ではないですし。

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