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読書記録 「ようかん」

和菓子のnoteを書き始めて約3ヶ月。
気をつけて和菓子をいただくと、知らなかったことがいろいろ見えてきました。

そのひとつが、何気なくいただいてきた羊羹です。
ひとくくりに見てきた羊羹ですが、「実はいろいろな種類がある!?」と今更ながら気がつくという…残念な知識。
そんな羊羹の疑問を解決してくれるような本に出会いました。

2019年10月発行の「ようかん」は、虎屋の菓子資料室「虎屋文庫」がつくった本です。(価格は税抜き2200円)

羊羹について約160ページでまとめられていますが、カラー写真のページよりも文章でしっかり説明したページがメインで、「へ〜」「ほ〜」と何度も言ってしまうくらい読み応えがありました。

もっともありがたかったページは「『ようかん』の進化」です。
ようかんがどのようにして生まれて進化してきたのたのかを、さまざまな資料から解き明かします。

関西でよく作られている「こなし」(虎屋では羊羹製)や、蒸羊羹水ようかん煉羊羹など、「その違いってなんなの?」と思っていたことがかなり解決しました。うれしい!

虎屋が考えるようかんは、最初の「こなし」から「煉ようかん」まで5種類にまとめられています。

ほかに興味深かったのは、「虎屋のようかんの歴史」のなかの戦時中のくだりです。
原材料が不足するなか、日持ちがする羊羹が慰問用に送られたり、軍に納められたりと、甘いものが体と心を慰めてくれていたであろう時代。
お菓子を作り続けていた虎屋の東京工場が、大空襲で消失してしまいます。

「倉庫に納めてあった海軍用のようかんは、火災で全て溶け出てしまったので、集まってきた人々に配ることになったが、『遠く上野下谷からも来て、バケツに入れて持って行くんです。皆んな喜んでね。甘いものがない時でしたから』(『菓子屋のざれ言』)と武雄は語っている。」

※黒川武雄氏は虎屋の十五代店主
「ようかん」P124

戦時中の話はいろいろあれど、お菓子屋さんから見た戦争の話というのはこれまで聞いたことがありませんでした。

溶けた羊羹をバケツに入れてもらうなんて衝撃です。
でも、もらった人はきっと忘れられない味になったことでしょうね。

現在主流の煉ようかんですが、お店によって(時期によっても?)味が違うような気がすると感じていましたが、もっともっと繊細なものだということもわかりました。

煉ようかんの原材料は、砂糖、小豆、寒天だけですが、材料や配合、煮詰め方のちょっとしたことで、歯触りや舌触りがまったく異なるのだそう。
とても奥の深いものなのだな…と、もっと味わっていただこうと思いました。

そのほかの羊羹にまつわるさまざまな話もどれもとってもおもしろくて、一気に読めます。
羊羹好きならぜひ。今よりきっとようかんの世界が広がります。


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