『森に生きる少年〜カラスの日〜』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 13/19〜

パリと京都の街並みは似てるなんてえ俗説がありますが、フランスと日本の文化にある種の相関性が見られるのは事実のようで、本作も火に炙られた獣の肉が巨神兵のようにどろりと溶け出したり、『千と千尋の神隠し』の湯婆婆みたいなキャラが登場したり、さらには自然世界を霊的エネルギーの生成場所と捉えて丹念に描写するなど、にわかにジブリめいた作風なのですが(とはいえ、日本⇔フランスアニメーションの影響関係を大きく見た場合、事実はむしろ逆で、宮崎作品、特に『ルパン三世 カリオストロの城』に決定的な影響を与えたのはフランスのポール・グリモー監督の名作『やぶにらみの暴君』ですし、自然に対する畏敬の念は元々フランスの植民地から始まった国・カナダのフレデリック・バックら、NFBの作家の流れを汲むものでしょう)、麦畑上空を飛び交うカラスの図像がまんまゴッホになっている大ネタを衝突させて立派に自国愛を保っております。
人間にいぢめられた親父が人外になって山奥に住み着き厳しく息子を育てますが息子はそんな父をこわがって猫頭のおじさんや鹿頭の母親とも親しく接しておりましたところ、親父が見張り台から落下し負傷、致し方なく日頃「あっちへ行ったら消えちまうぞ」と脅されている山の向こう、人間たちが暮らす町へと赴き、医者の娘と巡り会うことで愛のなんたるかを知ります。
ざっと概要をさらっただけでもお分かりの通り、ちょいと要素を盛りすぎてテーマが散漫になってしまった印象がありますが、内/中/外というわかりよい三界の狭間に当たる幽明境に暮らす猫人間たちは、『アタゴオル物語』のますむらひろしやその元ネタである宮沢賢治の世界の住人であってもおかしくない、誠にきもちのいい造形でございます、ああそうか、ジブリと言うよりケンジの世界でしたね、これ。(ますむら漫画を原案にしたアニメ『銀河鉄道の夜』は必見ですぞ!)

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