『熱風』 〜フランス映画(MyFrenchFilmFestival)長編19番勝負 3/19〜
『キリマンジャロの雪』『ル・アーヴルの靴みがき』のジャン・ピエール・ダルッサンが“怪物としての少年”の役柄(限界突破して恐すぎるヨルゴス・ランティモスの映画『聖なる鹿殺し』のバリー・コーガンを思わせる)に体当たりで挑んだ衝撃作。
とある農村の鼻つまみ者が何者かによって殺害される時点から逆向きに語りを起こし見知った顔のみで構成される田舎社会特有の濃密で閉鎖的な人間関係を浮かび上がらせる構成はノーベル賞作家ガルシア・マルケスの中編『予告された殺人の記録』そのまま、今で言うところの発達障害に該当するであろう少年の暴力性と純情が周囲の無理解=前近代的な共存概念の限界を炙り出してしまうやりきれなさが白眉。
実話に基づく作品だという点はひとまず脇に置いて、新しく村に越してきた“よそもの”の夫婦、いわば閉じた円のぎりぎり周縁に位置する存在(われわれ観客の立ち位置にも似て)が、円の中心にいながらアウトサイダーでいるしかない少年に抱く感情、ある種の共感が裏返った苛立ちは、心胆を寒からしめるほどリアル。
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