「純喫茶トルンカ」読了
日本にこんなストーリーテラーがいたのか。これが最初の感想。
3つの中編からなる小説で、トルンカという喫茶店で起こるドラマを描いたもの。
特に1作目が秀逸で、トルンカでバイトする大学生男子のもとに客としてやってきた女性が開口一番「会いたかった」と告げる。ちなみに主人公は覚えのない人でぽかん状態。
さらにあなたと私は前世で恋人同士だったの、しかも前世では・・・と矢継ぎ早に語る彼女。
新手のストーカーホラー小説なのかな?と読み進めると(プライム会員は無料で読めるという触れ込みだけでダウンロードしたもので、前知識なにもなし)、進められる人間ドラマ。
笑いあり、哀しみあり、怒りあり、喜びあり。
たかだか100ページほどの中編でこんなに密度の濃い話を詰め込めるものなのか。
しかも「詰め込みました!」感が全然なくて、トルンカのまったりとした雰囲気と、それに合わせたかのような登場人物たちのまったり感がよく伝わってきて、こういう喫茶店が近くにあればいいなと真剣に思った。
そして最後の落としがうまい。
うわー、すげぇ・・・こんな文章書く人がまだ日本にいたんだ・・・と嘆息。
気がついたら3中編を一気読みしてた。
一気読みできる作家とか本って幸せだよね。最近ないもの。
一気読みしたいということは「先が気になってしかたない」という状態。
この感覚、米澤穂信以来だわ。
でも作者さんには悪いけど、2と3作目は1作目ほどのインパクトはなかった。2作目は個人的に好きな話だったけど、あそこで終わるのではなく、帰ってきた時の感動を描いてほしかった。
それを書かないから日本の作家、小説には侘び寂びがあるんだよという意見は重々承知。
でもこの作家の、特に1作目のあの終わり方を書けるなら、2作目も感動の再会を読者の涙が止まらないような書き方ができたと思うんだよね。読んでみたかった。
でもせっかくなので2作目も読んでみる。2作目はunlimited限定らしいので、買います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?