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食卓作法以前の話 その1「日常での食器と食べ方」

2006年2月22日 (水)

「作法 Ⅰ」も終わってないのに、いきなり「作法以前の話 その1」です。

あいかわらず予告破りをしていますが、誰も気にしてないか。

なんでかというと、ここ2、3日の間のお客様で、「犬食い」の人があまりにも多いのに驚いちゃったからです。

「犬食い」っておわかりでしょうか?

テーブルにかがみこんで、口を食器に近づけて食べること、です。

10~20代のみならず、3~50代の、特に男性に多いこの「犬食い」、とても見苦しいのですが、どうやらご本人達は無意識のご様子…困ったモンですねぇ…。

ひどい場合だと、1テーブル全部犬食いご一行様―。

全員の頭が食器すれすれまで下がっていて、話をする時は上目遣い、誰の背筋も伸びていません。

そして必ず、左手はテーブルの下に入っています。

実は、これがポイント!

犬食いの人は、私が見る限りほぼ100%、左手をほとんど使わずに食事をするのです。

なぜ、こんなことになったのでしょう?

「食卓作法」や「マナー」以前の問題として、取り上げてみました―。

日本は、箸の文化圏です。

しかも、その文化圏内でも唯一、匙(さじ)や蓮華(れんげ)など、すくって食べるような食器を用いないという特色があります。

旧くは「古事記」に箸の記述がみられ、奈良の正倉院にも、当時「神器」として使用されていた箸が現存していますが、大陸からの伝来時にはセットで使われていたであろう匙(さじ)は、その後の長い歴史の中で、しだいに姿を消していきます。

(実際、奈良・平安の正餐膳には、銀製の足付き膳に器各種、同じく銀製の箸と匙がセットされているものがあったそうです。また、現在宮中で天皇陛下が儀式で使われる物にも、同じような組合わせの一式が現存します)

それは、器の発展とも関係があります。

中国での食器といえば、陶器・磁器が思い浮かび、韓国での食器と言えば陶器・磁器に加えて金属、という感じですね。

日本はというと、陶器・磁器ももちろんですが、木製の食器も数多くあります。

白木を磨いたもの、渋や漆(うるし)を塗り重ねて防水としたもの、さまざまなものがつくられましたが、これらの木製食器は、何よりも直接口に付けた時のあたりの柔かさ、これが好まれました。

器に直接口をつけて汁を飲み、飯や副食の固形物は箸を使って口に運ぶ―。

こんなふうに食生活が定まってくると、食器は自然と手になじむ大きさ、重さのものが作られるようになります。

実際、ご飯茶碗や味噌汁椀などの大きさは、今でも直径が約10~12cm前後のものが多く作られています。

また、手塩皿や小鉢、煮物椀なども、同じような大きさのものが多く見られます。

しかし、これは規格として形があるのではありません。

もともとは、「人間の手のひらの大きさ」が基準になっていて、それにあわせて器が作られてきたからのサイズなんです。

持って持ちやすく、食べやすく、口へのあたりが柔かい、これが日本の食器の原点です。

さて、前置きがもの長くなりましたが、「犬食い」の話に戻ります。

お隣の韓国では、食事の際、卓上から食器を持ち上げるのはマナー違反です。

なぜなら、食器を持たなくてもちゃんと食べられるから、ですね。

汁物でもご飯でも副食でも、スプーン(匙)と箸とを上手く使って、こぼさずにきれいに食べることが出来ます。

かたや日本では、上でも書いたように、基本は器を手に持って食べる文化です。

箸だけを使う食事では、汁気の多いもの、こぼれそうな細かいものは、器をおいたままでは食べにくいですよね。

手に持ち、口元に持ち上げて食べる―。

これが最も食べやすい形のはずなんです。

それがどうでしょう?
右利きの人の場合、左手で食器を持ち上げるはずが、その左手はなぜかテーブルの下…。

片手をほとんど使わずに、箸だけで食べようとするから、かがみ込んでしまうわけですねぇ……。

お向かいの席から見えるのは、相手の頭のテッペンのみ…。
自分の彼氏がこれをやったら、私はその頭をぺちっ!と引っぱたくかもしれませんw

ねえ皆さん、左手をちゃんと使いましょうよ!

背筋を伸ばして、胸元に器を持って、堂々と食べましょうよ!

食べる姿が美しい人は、男でも女でも、絶対好印象を持たれますって!

今からでも遅くないので、ちょっと我が身を振り返りましょうよ!

マナーがどうこう言う以前の、いい大人がどうよ!というお話しでした(*^_^*)

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