日本料理の食卓作法2-B~どんなものが出るのかな?~
2006年8月10日 (木)
8.酢の物
別名:酢肴、変わり酢の物などなど…
「こはだ 胡瓜巻蓮根 黄身酢掛け 防風 赤芽」
「もって菊 水前寺海苔 いくら」
「根三つ葉 田芹 アスパラ 春菊 帆立貝 酢びたし」
「かに酢 胡瓜 あしらい」
「ほたる烏賊 松葉独活 分木 黄身酒盗掛け」
「焼穴子 独活 諸胡瓜 赤芽」
「あん肝 おろし ラレシ 胡瓜 独活」
「卯の花 まぐろ ゆず釜盛り」
さて、いよいよお酒を相手の料理も終盤となります―。
それぞれの肴でお酒を楽しんできましたが、ここで口中をさっぱりとさせ、最後のお食事を美味しくいただけるようにする、という意味合いで出されるのが「酢の物」です。
栄養学的にも「酢」はアルカリ性ですから、お酒や酸性の食材を使った料理のあとに食べるのは、理にかなっていると言えますね。
酢を使った一品は「先附」として最初に出ることもありますし、献立の中ほどで口直しとして出されることもありますが、日本料理の基本である「五味」のうちの「酸」は、他の味との緩急をつけたり、バランスをとるためにも大切なものなのです。
日本でもっとも古い調味料は「塩」と「酢(梅酢)」といわれていますが、昔は刺身もこの二つで食べていました。
余分な話ですが「塩梅(あんばい)がいい」という言葉はここから来ていて、「塩気と酸味のバランスがいい」という意味合いで始まり、そこから変じて「ちょうどいい」とか「具合がいい」というような使い方をされるようになりました。
そしてこの酢の物、簡単なようでいて、じつは大変にバリエーションが豊富なものです。
単純な酢味の和え物から、魚介を使った「〆物」、また焼いたり揚げたりしたものを使った「変わり酢の物」など、数多くのものが考え出されてきました。
使われる「和え酢・掛け酢」も種類が多く、また個々の料理人が独自に工夫をしたものもたくさんあります。
家庭でもおなじみの「二杯酢・三杯酢・土佐酢」などを筆頭に、以下にその一部を挙げてみますね―。
黄身酢・白酢・甘酢・胡麻酢・黄身酒盗・酢味噌
辛子酢味噌・蓼酢
ぶどう酢・みかん酢・柿酢・梅肉酢・南蛮酢
ちり酢・ぽん酢 などなど…
また、最近では洋食や中華の影響もあり、バルサミコ酢や赤酢を使ったり、タイのスウィートチリソースを使ったりする場合もあるようです。
使われる食材としては、野菜、食用菊、きのこ類、海藻類、豆腐などの植物性のもの、魚では白身やひかり物と呼ばれる青魚、烏賊や蛸、貝類などが多いでしょうか―。
この料理は基本的にはさっぱり系なのですが、「変わり酢の物」「酢の物替り」などとして出されるのものの中には、肉を使ったり、また温かい料理があったりします。
「三枚肉のオレンジ釜盛り おろしぽん酢」
・三枚肉を一口大の竜田揚げにし、打ち野菜(レタス、
人参、胡瓜、玉ねぎ)とほぐしたオレンジの果肉ととも
にオレンジ釜に盛り付け、おろしぽん酢をかけたもの
「ずわいのかぶら蒸し バルサミコべっ甲あん」
・ずわいがにのかぶら蒸しの上に白子の唐揚げを重ね、
バルサミコ酢を使ったべっ甲あんをかけた温かい酢の物
こうなると、口直しというよりも、充分にボリュームのある一品ですね―。
食事前に、これを肴にもう少しガツンと飲んでしまいそうな献立です。