日本料理の食卓作法2-B~どんなものが出るのかな?~
2006年7月20日 (木)
4.お造り 別名:刺身、差味、向附、お向う、など…
生の赤身や白身の魚、貝類などを包丁し、盛り付けたものを一般的には「刺身」とよびますが、「身を刺す」と書く言葉が嫌われて、「包丁して身を造る」から「お造り」とよんだり、茶懐石の膳組みで飯と汁の向こう側に置くことから「向附(むこうづけ)」「お向う」とよんだりします。
「刺身」とはもともと、さばいてしまうと何の魚かわからなくなるので、身にその魚のヒレを刺しておいたことから付けられた呼び名といわれています。
四方を海に囲まれている日本は、新鮮な魚介に恵まれているため、早くから生食の習慣が生まれていました。
しかも、長いあいだに刺身を切ったり盛ったりする技術が進み、一つの文化と言えるほど発達したのは、他国に例がありません。
刺身用の包丁だけでも大変な種類の刃物があることを考えると、日本人が刺身に寄せる情熱がよくわかります―。
切り方も「平造り」「糸造り」「小角」「薄造り」などなどがあり、魚の特徴を考えて、もっとも美味しく食べられるように切ることが基本となっていますし、それとともに調理法もいろいろと研究され、魚の種類によって酢〆や昆布〆にしたり、皮目を炙ったり、洗いにしたり、という工夫を重ねてきているわけですね。
一人前の分量も、昔は「山水盛り」「七五三盛り」といって、器の中に遠景、中景、近景の三つの山があるように、それぞれ七切れ、五切れ、三切れと、合わせて十五切れを盛り付けました。
しかし今では、一品ずつ出てくる喰い切り料理のなかで、十五切れもの刺身を食べることも少なくなり、合わせても五切れ、七切れなどの少な目な盛り付けとなっています。
喰い切り料理の場合、お造りは個人盛りで出されることが多いのですが、盛り付けの基本は「赤・白・黄」の三色であり、奇数です。
向かって左側には淡白な白身魚、右には貝類の黄色、中央または奥に味の濃い赤身の魚が盛り付けられていますので、食べる順番としては左・右・中央(奥)とすると美味しく食べられるわけですね―。
魚介の種類によってはこの原則で無い場合もありますが、人間の舌はいったん濃い味に触れてしまうと、そのあと薄い味のものを食べたときに「味がしない」と感じてしまいます。
ですから、お造りはなるべく淡白な味のものから食べるようにすると、最後まで美味しく食べられます。
添え物として、大根や独活、胡瓜、人参、南瓜などを細かく打った「けん」や、大葉、穂紫蘇、紫芽、赤芽、防風などの「つま」、山葵や生姜などの「辛味」が一緒に盛り付けられています。
これらは消化を助けたり、毒消しの効果があったりしますので、刺身と一緒に食べていただくとよいですね。
つけ醤油は、土佐醤油(かつおだしで調味した醤油)のことが多いですが、魚介の種類によっては、ぽん酢や煎り酒などが用意されます。