レビュー05「夕闇通り探検隊」
ご挨拶
お久しぶりです！
小説家兼シナリオライターの和田賢一です！
前回から２週間近くが経ってしまいました…
早くもネタ切れか
と思われた方もいるかもしれませんが
特にそういうわけでもなく
ちょっと体調が悪かっただけだったりします
ところで話は変わるのですが！
みなさんは一生忘れられない宝物になった
あるいはトラウマになったゲームってありますか？
私にはあります！
そのゲームのタイトルとは！
知る人ぞ知る
カルトゲームの中のカルトゲーム！
「夕闇通り探検隊」
です！
ゲーム紹介
ちょっとホラーかつノスタルジックな雰囲気の
タイトルの本ゲームは一体、どんな作品かと言いますと
一言でいえば
５月６日から８月１４日までの１００日間、中学生３人組+雑種犬が夕暮れ時の街をお散歩するゲームです
…いや、ホントなんです
ホントにお散歩ゲームとしてファンの間では未だに語り
草なんですってば
もちろん、本作はホラーゲームであり
散歩だけしているというわけではありません
彼ら三人の中学生と一匹の犬は街にはびこる
数々の奇怪な噂話の真相を探るべく
夕方から夜までの間、民俗学でいう
フィールドワーク活動を行っているのです
そう…
とある怪異な存在にかけられた
死の呪いから逃れる手段を求めて…！
では、ここで
本ゲームの商品としてのスペックなどを見てみましょう
ジャンル アドベンチャーゲーム(AVG)
対応機種 PlayStation
開発元 株式会社 EXIT
チーム YURA
販売元 スパイク
プロデューサー
昇龍
椎橋 晃
櫻井 光俊
鈴木 将一
宮下 研一
ディレクター
小西 喜朗
寺井 智
石橋 佳巳
デザイナー
木邨 圭太
シナリオ
木邨 圭太
三島 美佳
プログラマー
松田 賢一
音楽 三島 美佳
沖田 伊作
美術 寺井 智
青柳 健二
角田 敏次
人数 1人用
メディア CD-ROM1枚
発売日 1999年10月7日
ところで…、なのですが
「トワイライトシンドローム」というゲーム名に
聞き覚えのある方は多いのではないでしょうか？
１９９６年に発表されたADVホラーゲームの傑作で
「探索篇」、「究明篇」の２ディスクで構成されており
３人の女子高生が
都市伝説の真偽を確かめるべく
夕闇に潜む様々な怪異と対峙するという
ホラーな内容のゲームであり
実は本作「夕闇通り探検隊」は
こちら「トワイライトシンドローム」のスタッフが
多く参加されていることもあって
正当な後継作に
位置付けられています
そのせいか、両作品はストーリー的な関連はないものの
世界観やシステムなど
共通する部分が非常に多く見受けられます
ゲームシステム
前述した通り、本作「夕闇通り探検隊」はゲーム終了まで
１００日間という時間制限が設けられていて
その１日１日の流れは大きく分けて
学校シーン、相談シーン、散歩シーン
そしてプライベートシーンの４つに分かれています
プレイヤーはゲーム時間である１００日間にわたって
物語の舞台である陽見市に散らばる
奇怪な噂を入手しその真相を検証・確認して
解決に導く
…というのがこのゲームの主たる目的となります
選択するキャラクターによって入手できる噂が違ったり
解決に必要な行動が取れなかったり
また、同一の噂でも選択したキャラによっては
結果が異なるという豪華仕様だったりします
では、シーンの一つ一つについて
引用で解説していきたいと思います
学校シーン
ナオ、サンゴ、クルミの中からキャラクターを選択し、2Dで表現された学校内を探索して噂を入手する。
探索範囲は廊下、2年2組、2年3組、トイレ、校舎裏（夏休み中）。
制限時間は現実時間で5分間。
相談シーン
入手・検証した噂についての相談をする。検証が全て終了した噂は、ここで相談することによって解決される。
制限時間なし。
散歩シーン
ナオ、サンゴ、クルミの中からキャラクターを選択し、2Dで表現された陽見市内を駆け回って噂を検証する。
走る速度はキャラによって違うが、犬のメロスが居る場合は引っ張られるので速度が上がる。
制限時間は現実時間で7分間。
プライベートシーン
散歩シーンで選択したキャラの寝るまでの生活を見ることができる。深夜には霊障の度合いによって心霊現象が起こる場合がある。
…つまり、制限時間がある中
プレイヤーが適正なキャラクターを選び
適正な行動を取らせなければ
本ゲームの主たる目的である
噂を解決することができないどころか
噂を入手して怪異の謎に挑むことさえできず
立往生…なんてことになってしまいます
しかも、このゲーム内に用意された
噂は全部で４４！もあったりします
とてもではないですが、初見で噂を全て入手し
解決できる人などいないでしょう
そこで役に立つのがこちら!
攻略本です！しかも公式！
元の値段は９８０円ですが
ソフト同様
現在は恐ろしい価格になっています
ですが、限られた時間の中で
キャラクターたちを効率よく行動させ
全ての噂を入手するためには
プレイヤーのスケジュール感が重要となっており
初見で完全攻略が出来なきゃ嫌だという人には
必須のアイテムとなっております
さらに本ゲーム「夕闇通り探検隊」には前述した
４つのシーンに加えて
霊障シーンというものが存在します
ゲーム開始時にキャラクター達はとある怪異に
呪いをかけられ霊障値というものが設定されていて
これは１日ごとに+１されるだけでなくゲーム中の
行動によっても増減するようになっています
そして、この霊障値が100を超えた時
キャラクターたちは呪い殺され
ゲームオーバーとなってしまいます
いわゆるメメントモリですね（違う
正直、中学生が呪い殺されるって
めっちゃキツイのですが
３人ともそれぞれのキャラクターに似合った
死が用意されていて
不気味なほどのリアリティをユーザーに感じさせるのは
正に職人技と言えるでしょう
作家の端くれとしては見習いたいものです
物語
では次に本ゲーム「夕闇通り探検隊」の
物語設定を引用で見てゆきましょう
ここまで語ってきたことと
かなりの部分が重なってしまいますがご容赦ください
高度成長期に伴い、ベッドタウンとして急速に発展した街、『陽見（ひるみ）市』。この街にある陽見台中学校では、人面ガラスの噂が囁かれていた。
中学生のナオは、飼い犬メロスの散歩を口実に、想いを寄せる少女クルミを誘い、偶然を装いついてきたサンゴと3人で学校裏の森の中にある烏塚に向かう。
メ烏塚の手前から先へ進もうとしないメロスを水飲み場につなぎ、ナオはサンゴとクルミを残し、単独で烏塚に向かう。 そして辿り着いた彼の前に人の顔をしたカラス…すなわち人面ガラスが現れ、「あと100日で、誰か死ぬ」と告げられる。 ナオは恐怖のあまり気を失ってしまう。
その翌日、サンゴはおトイレ軍団ことサカイ ミカたちが「陽留見橋のあたりに花子さんのお墓がある」という噂話を耳にし、ナオたちを連れて噂を調べに行く。そして、陽留見橋近くの四辻でクルミはカスカと名乗る少女の霊と出逢う。
これを機に、陽見市で囁かれる数々の噂の検証が始まった。
何というかとても清く正しいJホラー！
って感じがしませんか？
実際、本ゲーム「夕闇通り探検隊」が発売された
１９９９年はいわゆるJホラーが全盛期の時で
ビデオを見た人を七日で呪い殺す女幽霊も
まだまだ現役でしたので
設定的にどーしても二番煎じ感がぬぐえず
そこまでヒットもせず
話題にもならなかったのかもしれません
ですが！
違います！
そうじゃないんです、皆さん！
このゲームの真の主人公は
胡散臭い都市伝説でもなければ
キショクの悪い魑魅魍魎共でもありません！
主人公はあくまでもユーザーである、あなたの分身
３人の中学生なのです
登場人物
ということで
ここからは登場人物に焦点を当てて
語ってゆきたいと思います
まずは主人公３人組+犬から見てゆきましょう
ナオ（村瀬直樹）
陽見台中学校2年3組。13歳。
中流家庭の一人っ子で、ナイーブだがそれを表に出さない性格。クルミのことが気になっている。霊的な体験は1度もないが、漠然とその存在は信じている。塾に通い、成績も優秀な模範的な良い子で、母親や海外出張中の父親にも逆に心配されている。怪談話は苦手で、弱気になるところをサンゴに責められることもある。
サンゴ（平内繭）
陽見台中学校2年2組。13歳。
名前を気に入っておらず、恋愛依存症の姉に嫌気がさし、女性らしさを封印するために『サンゴ』と名乗っている。幼馴染のナオに密かに想いを寄せるが、全く表に出さない。その心情から言動は男勝りで、年上の人に対しても腰に手を当てたまま話をし、尊大な態度を取る。また、霊の存在を完全に否定しているものの、時々10代の女の子らしく怖がる場面もある。一方で、同人誌に純文学小説を寄稿しており、電話でのみ話す同人誌仲間兼相談相手のトモキにだけは心を許し、普段見られない柔らかい口調になる。
クルミ（椎名久留美）
陽見台中学校2年2組。14歳。
幼い頃より日常的に霊的な体験をし、霊の存在そのものが現実の一部となっているために奇抜な発言や行動が多く、中学校では「宇宙人」と呼ばれ、両親は将来を心配して精神科に通わせている。屋外では常に麦藁帽子にオーバーオール。「なのね」「いじわるい」「アイヨ」と言った独特なセリフや、「ヒトリ」を「シトリ」と言うような舌足らずな発音、その他サンゴの影響を受けてか時折乱暴な言葉遣いになる時がある。
メロス（村瀬メロス）
ナオが飼っている雑種犬。
ナオがクルミを誘った最初の口実が犬の散歩だったことから、散歩シーンで行動を共にする。大人しい性格だが、主人公達のピンチには勇ましく駆けつける場合もあり、また野生の感覚で霊を察知することができる。
勘のいい人ならもうお気づきかも知れませんね
実はこのゲーム、怪異との遭遇シーンと同じくらい
重要なのがこの３人の三角関係なのです
といっても大人のそれのようにドロドロした
生臭いものではありません
３人ともそれぞれに欠点や問題を抱えながらも
思春期の子供らしい真っすぐさや正義感を持っており
他の同級生との軋轢やイジメ、そして友情に
傷つき、苦悩し、少しづつ成長してゆきます
シナリオの中で語られるそれらのエピソードは
恐らく大勢のユーザーにとっても
身に覚えのあることであり共感を呼ぶことでしょう
だからこそ、そんな彼らの日常に暗い影を落とし
ゆっくりと、だけど確実で避けられない
死の呪いは恐ろしいものになったと言えます
人面ガラス
『カラスの呪いの噂』に登場する人の顔をしたカラス。ナオ、サンゴ、クルミに100日後に死ぬ呪いをかけた。
速い話が本ゲームにおけるラスボスですね
つまり、ナオ、サンゴ、クルミの３人は
この怪異を鎮めるため
たそがれ時の街を右往左往する羽目になった
ということで
正真正銘の悪役です
しかも、獲物を１００日という長い時間をかけて
なぶり殺しにするのだから
かなり悪質な怪異と言えるでしょう
しかも、この怪異が登場する
「カラスの呪いの噂」はゲームスタート時から
既に入手しており、エンディングを迎える１００日目まで
解決することも出来なければ消えることもありません
つまり入手した噂によっては怖いだけではなく
ちょっと笑えたり、泣けたり
ナオ、サンゴ、クルミの三角関係に焦点が当たって
ユーザーがやきもきしている間も
この「カラスの呪いの噂」、つまり死の呪いは
３人とユーザーにつきまとい続けているのです
このシステムに気がついた時
正直私は作り手の意図に狂気じみたものを感じ
ゾッとしたのを覚えています
いつか死ぬ、というのは
そういうことだと
まあ、どうせ死ぬなら泣き暮らすより
バカなことを言い続けて笑って死にたい
そう思えるようになったのは多分歳のせいでしょうねｗ
またサブキャラクターとして登場する
ナオたちのクラスメイト達についても触れておきます
ニシ タカユキ
ナオのクラスメート。一匹狼的な雰囲気があり、成績は優秀、スポーツは万能で、女子生徒に人気がある。噂話をする相手はもっぱらナオだが、サンゴも情報源としての信憑性は買っている。
サンジョウ ケイナ
ナオのクラスメートで、バスケットボール部に所属しチエル。明るくさっぱりした性格で、後輩に頼られる。ナオに好意を寄せている一方、タカユキが苦手。
ヤマザキ タクミ
ナオのクラスの委員長。ナオとタカユキに対抗意識を持っている。学力では二人に劣るものの、それなりに博学。
セガワ シンタ
ナオとは小学校からの知り合い。気が弱く、ユアサ軍団にいじめられている。
クメ コウジロウ
背が高く猫背で、自分の得意分野（オカルト）の事になると口数が多くなる。日ごろからユアサ軍団の陰湿ないじめを受けており、屈折した復讐を目論んでいる。
イナガキ マリオ
サンゴを師匠と呼び慕う少女。アニメ好きで、アニメ『東京クルセイダー』の登場人物のカップリングについて頭を悩ますほどの腐女子だが、、サンゴには大抵軽くあしらわれている。
アイバ ミナミ
サンゴとクルミのクラスメート。物静かな霊感少女。普段は実家の神社で巫女として働いている。登校拒否気味で、曇りの日のみ登校してくる。最初は誰とも関わりを持たなかったが、クルミとだけは話すようになる。
スナカワ サエ
サンゴとクルミののクラスの委員長。温厚で面倒見は良いが、注意ばかりするので皆から嫌われている。
ジェリー&クッキー（サガミ レイコ&ヨシノ トモミ）
異常なほど親密な二人組み。二人とも非常に内気な性格。常に二人でいるが、クルミだけは会話に入れてくれるようになる。教室などで怪談めいた噂話をしており、クルミにとっての情報源。仲良くなった友達にはあだ名をつけるらしく、クルミを『ペッツ』と呼んでいる。
おトイレ軍団（サカイ・ユリ）
サカイ ミカとイワセ ユリを中心に、日々トイレで気に入らない人物の誹謗中傷をしている集団。自称霊感体質のユリィの発言から、サンゴやクルミが噂を入手することもしばしば。
ユアサ軍団（ユアサ・シゲ・タケ）
ユアサ ミツルを筆頭に、弱いものいじめを繰り返すグループ。噂話には目ざといが、彼らの活動が噂の真相解明につながることはまず無い。
サブキャラというにはあまりに濃ゆく
主人公であるナオたちに
負けないくらいの曲者ぞろいで
変な子ばかりですね…
それでも不思議とリアリティがあり
どこかで見たことあるような人物だらけなのは
本当に見事としか言いようがありません
心に残った噂たち
本ゲーム「夕闇通り探検隊」には４４もの噂
つまり怪異が登場します
その中には人面カラスのように
ガチの魔物ホラーであったり
思い込み勘違いが生んだ
ちょっとシュールなコメディだったり
人間の狂気や醜悪さを感じさせる
ヒトコワだったり、と盛りだくさんです
その中で私が特に気に入っている噂
印象的だった噂をいくつかご紹介したいと思います
黄色い傘の噂
サンゴはおトイレ軍団がクラス委員のスナカワサエが呪われた黄色い傘を拾ったと陰口をしているのを聞く。確かにスナカワサエは持ち主不明の怪しい傘を拾っていた。怯える彼女のためサンゴはナオ、クルミとともに傘を元の場所に戻そうとするのだが…。
誹謗中傷から始まる幽霊譚。
不幸が重なり過ぎると人は誰かに恨みを投げつけたくなるのかもしれない。
怪談の幽霊の噂
ある日、クルミは理不尽な恨みを同級生のイナガキマリオに投げつけられる。腐女子である彼女はサンゴの同
人誌に深く傾倒しており、最近サンゴと仲の良いクルミ
に嫉妬していたのだ。「あんたなんか怪談の幽霊に殺さ
れてしまえばいいんだ」
その一言から街を縦断する大きな怪談にまつわる噂話
の検証に向かうクルミたち。
現場には数年前おきたおぞましくも悲しい事件が…。
顔が半分かけた男の霊は
多分本ゲームのなかでも一、二を争う怖さ。永遠に怨む
ことは永遠に苦しむことと同義なのかもしれない。
公園の三つ子の噂
高架下の薄暗く人気のない公園には三つ子の幽霊が出るらしい。
赤い子と遊ぶと血まみれになって死ぬ。
青い子と遊ぶと血を抜かれて死ぬ。
黄色い子と遊ぶと気が狂って死ぬ。
ナオは怯え、サンゴは馬鹿馬鹿しいと鼻を鳴らす。
しかし、クルミがその公園の砂場で掘り当てたのは
意外な代物だった。
さて、これをどうするか…？
正統なモノノケ譚。どうやら外道に堕ちた者に心をかけてはいけないらしい。
黒い犬の噂
そいつは隣の町からやって来たらしい。
巨大な体躯に黒い毛並み。
目は血走り、牙からよだれをダラダラしたたらせた
黒い犬。
今はワクチンによって根絶されたはずの黒い狂犬。
メロスという愛犬がいるナオにとっては気が気ではない。
サンゴ、クルミとともに黒犬が現れたというかるがね町近辺を調べるのだが…。
犬好き必見の噂。異形と化しても犬は人間の友達でいてくれるらしい。
しょうゆ婆さんの噂
駅の西側にあるガード下にみすぼらしいホームレスのような女が棲みついたそうだ。女はいつも醤油のような異臭にまみれ、クチャクチャと何かを汚らしく咀嚼しているらしい。何を食べているのか、と尋ねた者に女は必ずこう答えるという。「…人の味」
興味本位で女に接触しようとするクラスメイト達を諫めようとナオたち３人はガード下へと向かうのだが…。
いわゆる一つのババア無双。多分、このババアは呪詛師。
とまあ、こんな感じです
本当はもっと書きたいのですが
切りがないし全部書くのもアレなのでこの辺で
止めておきますねｗｗｗ
最期に
ということで長くなってしまいましたが
今回はこれでレビューを終わりたいと思います
現在、「夕闇通り探検隊」は配信などもされておらず
Amazonでは目玉が飛び出すほど高値で
取引されているようです
ある意味、再評価されているとも言えるのですが
シリーズが復活する見込みはまずないでしょうし
やはりしかるべき時に正しい評価が下されないと
残念な結果になってしまうのではないか、と…
巨匠と呼ばれたゴッホの絵も
彼の死後、やっと正しく受け入れられたと思うと
歯痒い気持ちになってしまいますよね
締め
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