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おうちフリースクール運営者のヤドカリ物語④ついに最終目的地へ
おうちフリースクール運営者のわたなべさやこです。
おうちでフリースクールを始めてからの3年間で2軒の築古賃貸を住み歩いたニンゲン2人とわんわん1匹の引っ越し記録をこのマガジンにまとめています。
今回は、おうちフリースクール開業から4度目の春を迎えるタイミングにあたる2022年の春、ついに最後のお引越しを敢行したときのお話です。
【前回の記事】
フリースクールわんわんを迎えるために築古マンションから築古戸建てに2ヶ月で引っ越しを強行したお話
私たちは2020年4月から私が出産準備休業に入る2022年3月末までの2年間、この教室で暮らしながらおうちフリースクールの営みを続けて参りました。
この上尾市のレトロ戸建てを後にした2022年春より、私達夫婦は一度は離れた桶川市に戻る事を決意します。
結婚以来4つもの賃貸を渡り歩いた我々夫婦の”ヤドカリ生活”も、ようやく終点に向かうこととなりました。
つづく。
▽スクール運営&大型犬飼育可の神物件を2年間で引き払った理由
前回の記事では褒めちぎっていた”築古戸建て賃貸”も、結果的には2年間という短期間のうちに引き払うことになりました。
「え、あんなに気に入っていたじゃん」というツッコミが聞こえてきそうですが、理由はシンプル。もう死ぬほど寒かったんです。
友人知人に「家が寒い」というと、大抵「あー、戸建ては寒いよね~」というような反応が返ってくるのですが、いやマジでそんな生易しいレベルじゃなかったんです。
あの寒さは誰にもわからない…(by新巻鷹弘)
どのくらいの寒さだったか本当にわかってほしいので、思い出せる限りで書いていきます(誰得)。
2階の寝室の室温計は、朝7時の時点で0℃を表示。
外気温じゃないですよ?寝室内の温度です。
「さぶいさぶい」と言いながらハンテン羽織って階段を降り、洗面所で顔を洗おうとすると、水道のレバーを上げても水が出ない。
なんと室内の水道が凍結している…‼
1月から3月アタマくらいまで凍結。長い。
もうしょうがないから灯油ストーブをONにし、水道の水が出てくるまで待つ。
待つ間はイヌを抱いて暖をとる。これでもう寒くない。
で、そのイヌの吐息が白いのだよ。
イヌの吐息を浴びながら顔面を保湿。
(この家の中でイヌだけ元気)
寝室やダイニングでこのレベルに寒いので、冬場の入浴はもはや修行です。
絶景の見えない東北地方の露天風呂をイメージして頂ければと思います。
灯油ストーブのおかげで、生徒さんが滞在する日中はそれなりに人が生活できる室内環境にはなるので、教室としては80点くらいでした。
でも、我々夫婦が生活の場として24時間を過ごすにはあまりにも過酷な家だったので、この家に住んで1年目の12月の時点で「これは早々に新しい家を探さなくてはいけないかもしれない…」と緩やかに合意形成が図られるに至りました。驚くほど、ごく自然な流れで、淡々と図られました。
▽そろそろ身を固めないと
引っ越しや物件探しが割と好きで、長いヤドカリ生活も案外楽しみながら歩んできた我々ですが、ここまでくるとさすがに「そろそろ身を固めようか」という方向で考えるようになりました。
ヤドカリ、最後の脱皮。
夫の職場も県内南部地域で大体固まってきたし、私は学校教員を辞め、おうちフリースクールの運営でこれからもやっていきそうな雰囲気。
さらに、おうちフリースクールの仕事を通して私は「お世話になった上尾市で今後も頑張りたい」という気持ちが強くなったから、生活拠点の候補は、夫婦共に「上尾市かその近辺で」ということになりました。
そして何より、イヌを迎えたことが大きな後押しとなりました。
イヌを迎えることによって、例えばもう賃貸マンションに住むという選択肢は消えるし、飼い主の自然な感情として「イヌにとって最も心地よい暮らしがしたい」と考えるようになる。
今後の生活スタイルがグッと固まってくる(固めざるを得なくなってくる)のです。
▽熟考の末最後の新居は上尾市のお隣、桶川市のド田舎エリアに
結論から書かないと話がまとまらなそうなので先に申し上げてしまいますと、長い長い検討(それからハプニングやら事件やら)の末、私たちの最後のお引越しの目的地は埼玉県桶川市内随一の田舎エリアに。
畑のド真ん中の小さな戸建て住宅で暮らすことに決めました。
なんなら家(ウワモノ)より、今うちで使わせてもらっている畑のほうがデカいです。
最寄り駅まで徒歩50分(!!)。
バスも1時間に1本来ればまだいいほうという、とんでもない立地です。
我々夫婦のこれまでと、これからの生き方を話し合い、「駅チカライフも憧れだったけど、我々にはやっぱり田舎がお似合いだよね」という結論にいたりました。
のんびりした地域で、畑借りて野菜でも作って、エダマメ栽培してビールで流し込んで、騒音を気にせずガンガンDIYして。
イヌものびのびできる生活を選ぼうということになりました。
フリースクールも、確かに駅チカのほうが子ども達は通いやすいだろうけれど、イナカまで頑張って自転車で来てもらうのもいいかもね。
お勉強だけじゃなくて、今よりもっとのびのびイヌと遊んだり、一緒に野菜作ったりしてみるほうが、ひょっとしたらさらに楽しいスクールライフになるかもねと思いました。
むしろ駅チカに住んでいる子ならフリースクールの選択肢が多くあるけれど、イナカエリアの子にこそ私のスクールのような居場所が必要かもしれない。
私のスクールは、生徒さんは1人でも2人でも良いのです。ゼロだって良いのです。
こういうユルイ支援者こそ、率先してイナカエリアを担当していくのもまた何か意味があるのではと思っています。
生徒さんだけじゃありません。
いつか子どもが生まれたら…と考えたら、うちに生まれるような子の場合はイナカのほうが合っているだろうなとも思いました。
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マシュマロしたり
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▽引っ越し貧乏も悪くない
振り替えれば2018~2022年の間は、寝ても覚めても”家”というもののことばかり考えていた日々だったように思います。
1~2年に1度のペースで転居をしていたら、そりゃそうだ。
引っ越しにかかる費用も、合計すると決して小さくはありません。
それでも、「あの労力や出費は無駄だったか?」と聞かれれば、我々は一概にそうとも言えないのです。
この記事を書いている今現在、最終目的地となった今の家に暮らしてから丸3年が経過したことになりますが、私たちは今の生活を心から気に入っています。
「いろんな家に住んで経験値上げたからこそ、最後に良い選択ができたよね」という話をよくしています。
賃貸生活は、大変なことも「こんなはずじゃなかった」ということもたくさんありました。
でも、どのハプニングも結局は「所詮賃貸だから」で片付くのです。
一応断っておくと「所詮賃貸だから汚していい」とか「所詮賃貸だからぞんさいに扱っていい」という意味ではありません。
むしろお借りしているおうちだからこそ、持ち家以上に気を遣って、大切に使っていました。
「所詮賃貸だから」で片づけるポイントとは、例えば極度に寒い家というのはどんな構造だからそうなってしまっているんだろう?と自分達なりに徹底的に調べることで、自分達の家を持つときの糧になる。
気密性の技術って、調べれば調べるほど面白いですよ。
また、「所詮賃貸だから」でたくさん失敗しておいたおかげで、「本番の家購入では絶対に譲れないポイント」がよりリアルに浮かび上がってきます。
わが家の場合は、「とにかく寒くない」がそれでした。
トラウマレベルに寒い家に住んだからこそのこだわりです。
おかげで、どんなにインテリアや外構が素敵な家を見に行っても、簡単には転がりませんでした。
もうオシャレかどうかなんて本当に2の次なので、ただただストイックに”暖かさ”だけを求め続けました笑
それから、住宅トラブルや法律についても随分勉強しました。
実は、一度は上尾市内の新古住宅の購入を決めかけたのです。
信頼していたハウスメーカーさんだったし、何より希望の上尾市内の一戸建てだったから「もうここしかない!」と契約の直前までいったのだけれど、実はこのメーカーさんにとんでもない詐欺を仕込まれていたことが発覚(契約直前で気づいたからよかったけど)。
「頂いた見積もりのココとココ、おかしいですよね?法律上請求できない項目ですよね?」と指摘したら、営業さんも社長さんも顔を青くして黙ってしまいました。
最後には「何もお答えできません」としか言ってくれなくてとても悲しかったけれど、ひょっとしたら我々のような業種ってナメられやすいのかもしれません。
今住んでいる家の購入にあたっては、さすがに詐欺に遭いそうにはなりませんでしたが(笑)、本番の家購入前に不動産関係の基礎知識を身につけておいたことで、担当の営業さんとの打ち合わせや話合いもかなりスムーズに進んだし、何より自分達が「わからない」不安を残すことなく、納得感をもって住居計画を進めることができたので、結果的にはよかったです。
家の購入にあたっては、宅建のテキストを1冊携えておくの、すごくおすすめですよ。
▽その支援者らしいその土地だからこそのスクールを
いろいろな教室を渡り歩いておうちフリースクール運営を続けてきた私が思うのは「おうちフリースクールに正解はない」ということです。
だって、結局どの教室(家)でも、問題なくフリースクールの運営ができたのですから。
駅前ピカピカのテナントでのスクール運営も興味がなくはないけれど、背伸びしたり無理したりする必要はない、金銭的にも精神的にも、今の自分の身の丈にあった形で堂々と運営すれば良いと思うのです。
私の場合、複数のおうちでスクール運営をしてきたからこそ、自分が”家”に求めるものも、”教室”に求めるもの、その両方が少しずつ明確になっていったような気がします。
さあ、いよいよ4月から新しい教室でのおうちフリースクールが再開…!
まだ教室整備が終わっていないので今回の記事は写真が少なめでしたが、そのうち教室内の配置や備品なども紹介できたらと思っています。
皆さんの教室のこだわりはありますか?
コメント欄にて教えてもらえたら嬉しいです^^
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