ハスラー(1961年)気取り
ポールニューマンの『ハスラー」。トムクルーズとの「ハスラー2」も面白かったが、私は断然前作が好きだ。
この映画を観た頃、日本はバブル期でビリヤードがブームだった。「ハスラー2」が大いに貢献したのだろう。都内のあちこちにプールバーができていた。
私と友人の二人の阿呆は、「ハスラー」に感化され、週末の夕方渋谷で待ち合わせて徹夜で勝負だ!とナインボールの一騎打ちを行った。無論、金を賭けている。上等なプールバーではなかったので、酒は自販機のビールのみ。勝負は、午後六時に始まった。
お互い缶ビールをぐいぐい飲みながら十番、二十番と勝負を重ねた。隣に黒板があり、勝った方が正の字を書いていく。朝の六時まで続けて勝ち越した数を精算する仕組みだ。
最初の数時間はお互い鼻息荒く、快活に軽いノリでプレイしていた。ときおりトムクルーズの踊りなどを入れる余裕があった。勝負はほぼ互角で、大いに楽しかった。しかし、零時を過ぎた辺りから疲れと酔いでかなり辛くなってきた。しかし、われわれはハスラーである。ポールニューマンを見よ!疲れ果てながらも続けたではないか!
阿呆な二人は、勝負を続けた。既に一〇〇番勝負を越え、黒板は正の字で一杯になりつつあった。勝負はどちらかが抜け出すということはなく、互角のまま続いた。
というよりも午前二時あたりからもはやビリヤードとは言えない様相を呈していた。ひたすら缶ビールを飲みながらプレイしていたので、眠気と酔いで手元が狂い始め、普通なら絶対外さないボールを外すわ、ふらついてこけるわ、ボールが二重に見えて突いたつもりが空振りだったりして、滅茶苦茶だった。それでも阿呆な二人は勝負を続けた。
朝の六時になった。二〇〇番近くプレイしたと思われる。二人とも目に隈を作りぐったりとビリヤード台に倒れ込んだ。スコアを見ると、同点だった。ため息が出た。
それよりも、ビリヤードの周囲を見て目を丸くした。飲み干した缶ビールの空き缶が山のように積み上がっていた……。五〇本は軽く越えていた。
周囲の人たちが呆れた顔で見ていたのを今も思い出す。
まったく阿呆なハスラーたちである。