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詩集 幻人録

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2023年11月の記事一覧

ずるい心臓

ずるい心臓

あなたの涙が
心に沁みて
私の心臓は
潤いだした

後からやってきた
知らない恋人が
あなたの心は潤っているのね
と言ったが
それはあなたの涙のせいで

私の身体は渇いているのに
私の心は無理矢理泣いているもんで
もらい泣きにも似た
それはずるい心臓なもんで

涙を隠して

涙を隠して

涙を隠して見上げた夕暮れ
嘘つき子供の戯れ姿
意味は空虚に吸い込まれて死んだ
裸のロバが哀れにみえた

終末の心が捩れてる
見境なしに怒りをぶつけては
涙が透明だからって
しらを切った

頭痛が破裂しそうな夜だけは
闇夜に沈んでいかないもんで
溜まった時間が溢れかえれば
この夜ごと買い占めたけど

明るい太陽の伸びやかな熱に
汚れた私は恥ずかしさから
そっと黙って隠れてしまった
綺麗な花に憧れて

麗しの帰路

麗しの帰路

麗しの帰路
あなたの待つ部屋

魂魄になった感情は
戻せない時の鐘

時折りみせる笑みの源は
初恋の熱量

死んだあなたを想い
心がうんと泣いた

暗がりの中の海月
淀んだ海域の教え

びしょびしょになった私は
これからも歩き続ける

麗しの帰路を求めて

空の虎

空の虎

まだ見ぬ空の片隅よ
心に虎を飼っている
私の虎は私ごと
空の隙間に羽ばたいていった

穏やかな遊覧ではないが
とても心地がよい

果てしなく続く空の森
羽ある虎の吊るしあげ

私は無理矢理外気に触れた

なんていっても心が痛い
それでも尚飛び続ける
虎が私の心にいる限り

私は空で戦っている