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その会社のコアを見つける。


僕は経営コンサルタントで、
いろいろな業界の、いろいろな大きさのクライアントさんをサポートする時、とても集中して「そのビジネスのコアにあたるもの」を理解しようとします。きっとあなたがビジネスを前に進めるときにも、それは役に立つでしょう。

この話は例えば、過去低迷した「レゴ」が
復活したストーリーを伝えると、
わかりやすいかもしれません。

レゴは長く子供たちの創造性を育む玩具として、
世界中の子供に親しまれてきました。

けれどパテントが切れてしまって、窮地に陥ります。
同じようなブロック型のおもちゃが次々現れるだけでなくて、
その中にはレゴと一緒に遊ぶことができるものがあり、
価格もレゴよりも安価でした。

売上も利益も急落し、レゴは様々な打ち手をうちます。
「今のレゴの資産は『ブランドだ』」と
とらえた当時の経営者は、「脱レゴブロック」を掲げます。
テレビゲーム、テレビ番組制作、テーマパーク、アパレル、時計、ベビー用品、シューズ、キャンプ用品などに多角化していきました。

その中には、もちろんうまくいったものもあります。
例えば「レゴ・スターウォーズ」。
スターウォーズの映画の世界観を
レゴで再現できるキットは、世界中で売れました。

けれど、それ以外のほとんどすべてが不採算で、
のちに撤退することになります。

そんな中、レゴが復活する鍵になる戦略はなんだったのでしょうか?
もちろん現実は複雑な打ち手の集合体ですが、
大切な要素をシンプルに語るならば、大きく分けると2つあります。

1つは、不採算事業からの撤退です。
不採算でうまくいかない事業を続けていては、
どんな打ち手を打ったとしても、
穴の開いた鍋に水を貯めるようなものです。
うまくいかないものをやめるのは、とても大切なことです。

これは、スティーブ・ジョブズがアップルに戻ったときにも
最初に行ったことです。窮地に陥ったとき、「やめる」はとても重要なポイントです。
事業の撤退、
社員の大幅な解雇などドラスティックな打ち手を打ちました。レゴにとっては、初めての経験でした。

ただ、不採算事業から撤退するだけでは「復活」はしません。
大切なのは2つ目の打ち手です。

それは、「改めて、レゴブロックに集中すること」でした。
パテントが切れ、世界中のビジネスが「レゴブロックを作ることができる」状態でしたが、改めて「レゴブロックに集中する」ことにしたんです。

これがとても大切です。
本当に魅力的なビジネスを作ろうと思ったら、
「誰でも、どのビジネスでも、『何をやってもいい』わけではありません」。
そのビジネスらしいビジネス ー あるいは、そのビジネスのDNAを生かした事業 ー しか、躍動していかないのです。

もちろん「過去に回帰」するわけではありません。
自分たちのビジネスのコアを見抜き、改めて「その時代に適応し直す」必要があります。

レゴは苦戦していましたが、
主要市場の一つであるアメリカで、1つの成功がありました。
「レゴ・バイオクロニクル」です。
それは「6人の主人公が、島を支配する邪悪な敵と戦う物語」があるレゴキットでした。

そう。レゴを組み立てる体験に「物語」を追加したんです。
これでレゴは新たなスピリットを得ます。

もちろん、「物語」を追加しただけではありません。
製品の開発サイクルは、それまで平均2年でしたが、それを半年にします。デザイナーは、子供の声に耳を傾けるようになります。新作レゴの開発の仕組み ー クリエイティブを大切にするビジネスは、(コンサルティングでもやることですが)クォリティの高いクリエイティブが生まれるプロセスを作らねばいけません ー をつくります。

ただ、その中でもコアになるのは
「レゴ社の持つ本当の価値に集中すること」だったんです。

ここに「経営」鍵があります。僕のコンサルティングの鍵があります。
「その会社のコアは何か」

レゴのコアは、「ブロックづくりを通して、子供の創造性を育む」ことでした。それは、レゴが大切にしている価値観が形になったものでしょう。
本当に大切にしたい価値観は、大切にしなければ簡単に手元から抜け出てしまうのですが、同時に、決して消え去ることがありません。あるビジネスにとっては「その価値を改めて再構築すること」でしか復活できないことが多いんです。

僕が大切にしているのは、
ビジネスには、大小規模は関係なく、「そのビジネスが存在する理由、コア」があることです。
その魂のようなものをちゃんと見抜き、「その時代に適応する」「顧客に、改めて適応する」ことが、ビジネスを新たにデザインする時の鍵になると考えています。
たった1人の方のビジネスでも、これから生まれるビジネスでも変わりません。その人の中に、大切なものはあるからです。

僕はコンサルティングで、ゆったりと、じっくりと話を伺います。
耳を傾けます。

話を伺っていると、もちろん様々な「情報」を受け取ることができますが、それ以上に、歴史、声や顔の表情、何度も現れる話、全体の話の構造から、「そのビジネスの核」が立ち現れる。
それをどうやって「改めて、具現化し直すか」が、集客やセールスのコンサルティングであれ、組織づくりであれ、事業全体の再構築であれ、そこが重要なことだと考えています。

ビジネスは1つ1つ、一人ひとり、違うことを伝えたい。

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