オケージョンを利用してメディアを選択する方法
今週もウェブ解析士のnoteをご覧いただきありがとうございます。
現代のマーケティングでは、ターゲットとなる消費者に合わせて、パーソナライズされたコンテンツの提供が重要視されています。少し前に1to1マーケティングが流行ったことからも分かりますよね。
しかし、同じ消費者でも時と場合によってニーズが異なります。同じ人が同じスーパーで買い物するとして、普段の食事用に買うお肉と、クリスマスや誕生日会などのパーティー料理用に買うお肉では好まれるものが変わります。消費者ごとの好みを把握するだけではなく、その人が特定の瞬間にどのようなコンテンツを求めているかを理解する必要がありそうです。
もっというと、ニーズが生じる瞬間と、その時求めているものを理解することができれば、それに合わせた適切なメディアや訴求内容が見えてくるかもしれません。というわけで、今回はそれを見極める方法を検討してみます。
オケージョンとプレファレンス
オケージョン
コトラー先生によると、「オケージョンとは、日にち、週、月、年、または、消費者者の生活における時間的局面のこと」だそうです。特に今回の記事の中では消費者が製品やサービスに対して特別な関心を持つ瞬間やニーズが生まれる瞬間を指してオケージョンと呼んでいます。
缶コーヒーの事例を見て見ましょう。
缶コーヒー飲料はブレイクタイムや残業している時の眠気覚ましとして利用されていました。このように「眠くなるタイミング」がオケージョンです。そして、一般的には「午後の休憩」や「残業時」といった眠くなるタイミングが缶コーヒーのニーズが生まれる瞬間とされてきました。アサヒ飲料は朝にも眠気を感じるのではないかと考え「朝専用缶コーヒー」としてワンダモーニングショットを生み出します。今までにないオケージョンを正確に捉えたことで成功した事例です。
プレファレンス
プレファレンスとは、消費者の好みや選好を意味します。個々の消費者が何を価値あると感じるか、どのようなメッセージが響くかを理解することは、パーソナライズされたマーケティング戦略を構築する上で不可欠です。
中の人はプレファレンスを「好意を抱くこと、好意度合い」と認識していますが、森岡毅氏は「そのブランドを選ぶ確率」というもっと突っ込んだ捉え方をしています。パーセプション(認識)とは違い、実際に行動に移すような力を持っているのがプレファレンスのようです。
ちょっとややこしいですが、下記している内容では何に好意を抱くかと言う意味合いでプレファレンスという言葉を用います。
メディア選択に活用する
オケージョンとプレファレンスはなんとなく理解できたと思います。では、実際にメディア選定するときにどのように活かせるかを見ていきましょう。
あれこれ言うよりも仮想事例を挙げて考えていきましょう。そうですね、飲食店を事例に見ていきましょうか。
友人との食事
例えば、友人と食事の約束をして、そのときに利用する飲食店を探しているとしましょう。プライベートで行く場なのでおしゃれな所がいいなとか、話に花が咲くように落ち着いた雰囲気のところがいいなとか、あれこれ考えると思います。
この時のオケージョンとプレファレンスを整理すると以下のような感じになりますね。
オケージョン:友人との食事の場を探す
プレファレンス:おしゃれで落ち着いた雰囲気
雰囲気を選好理由に挙げるのであれば、ビジュアル訴求が欠かせませんね。となると、Instagramなどのビジュアル訴求できるメディアが有効かもしれません。「タグる」と言われるように、現代ではソーシャルメディア上でも検索行動が取られるため有効な手段になりそうです。
なので、オーガニック運用にしても、広告運用にしても、あるいはUGC施策をとるにしても、このオケージョン×プレファレンスであればSNSで訴求してくのが良さそうです。
外回り中の時間調整
次に検討したいのは、外回り営業をしていて目的地に早めについてしまった時です。この場合、時間調整をできる場所を探しますよね。腰を落ち着けて休憩できるのが理想です。加えて、溜まっている仕事をこなすことがあるかもしれません。この時のオケージョンとプレファレンスは以下のような感じでしょうか。
オケージョン:時間調整に立ち寄れて休憩できる場所を探す
プレファレンス:電源、Wi-Fiが利用できる、喫煙の可否など
こういった場合、「近くのカフェ」などで検索するでしょうし、求めるものは機能的価値です。であれば、相性がいいのは検索エンジンなので、ウェブサイトを起点にSEO(検索エンジン最適化)やMEO(マップ最適化)を行うのが良さそうですね。
会食に利用する
取引先のお偉いさんと食事に行く時のことを想像してみましょう。相手の好みに合わせるのはもちろんですが、下手なところにはいけないですよね。希少性や話題性のある場所を選んだり、(高級な)有名店を探すかもしれません。この場合のオケージョンとプレファレンスは下記のような感じでしょうか。
オケージョン:会食会場を探す
プレファレンス:格の高さ、知名度、希少性、話題性など
そこそこの店であれば、食べログや一休.comなどのポータルサイトでも良いのですが、格の高さなどといった場合はミシュランガイドやあるいはテレビなどのメディアに取り上げられているといったことが箔をつけることがあるかもしれません。
そうなるとプレスリリースなどのPR(パブリックリレーションズ)が有効的な手段になるかもしれませんね。
まとめ
すべてのメディアで一貫して同じことを訴求し続けるのも、ブランド戦略として一つの方法ですが、オケージョンごとのプレファレンスを理解して、その場面で利用されやすいメディアを選んで訴求していくというのも有効な方法かもしれませんね。
余談ですが、コカ・コーラはあらゆるオケージョンで想起されるために、パーティー、軽食、プール、映画館といった様々なシーンをマス広告で採用してきました。想起されるオケージョン=CEP(カテゴリーエントリーポイント)を増やすことができるとメンタルアベイラビリティを向上でき、売り上げに貢献していくということです。
ぜひ、オケージョンの整理をして見てください。
あとがき
今週も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
メディアごとに特性が違うということは、メディアごとに訴求する内容を変えることでより有効活用できるのではと思ったことがこの記事を書くきっかけでした。実務的には、一つの訴求を横展開してメディアごとにカスタマイズしていくことが多いと思います。まぁ、こういった考え方もあるんだなくらいに読んでもらえれば嬉しです。
100記事まであと二つ。かんばります。
それではまた来週お会いしましょう。