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【イベントレポート】指名が絶えないデザイナー3名に聞く「人生100年時代のキャリア戦略」とは?

ブランディングやデザインコンサルティング、サービス開発支援などを手掛けるWab Design INC.では、デザインの最前線で活躍するゲストたちが様々なテーマを語り合う”DD session”を不定期で開催しています。
今回は2023年3月に開催されたDD session《指名が絶えないデザイナー3名に聞く「人生100年時代のキャリア戦略」とは?》より、会社員 / フリーランス / 副業、そして制作会社 / 事業会社など様々な経験を積んだゲスト3名のトークを一部抜粋してお届けします。


イベントの概要

今回のイベントでは「人生100年時代のキャリア戦略」をテーマに3名の現役デザイナーが登場。「人生100年時代」「VUCAの時代」「AIによる仕事の代替」「VR/AR/MR」などのキーワードが飛び交う現代、ウェブデザイナーやUXUIデザイナーがこれからのキャリアをどう生き抜いていくべきか、働き方や学び方などゲストがそれぞれの経験を交えながら、当初の予定を超える約2時間に渡って語り合いました。

ゲストスピーカー

伊賀 絢子(UXUIデザイナー)
フリーランスとして15年間、大手事業会社のインハウスデザイナーとして様々なプロダクトのデザインを担当。自分にマッチする仕事をスポットで手伝いつつ、現在は大手事業会社の英語学習サービスと、ペット向けIoTサービスのデザイナーとして活躍中。

辻之内 孝信(UXUIデザイナー)
パティシエ、料理人からデザイナーの道へ。デザインコンサルティング会社や大手の事業会社でWebデザイン、UIや体験設計を行う。現在は、土木のDXをやっている会社で体験設計や金融(暗号通貨の取引所)のインフラ会社でデザイン部のマネージャー 兼 UI設計を担当。

塩尻 武志(rite.inc CXO)
フリーランスとして幅広く受託案件を行いつつ、大手上場企業の飲食店向けSaaSプロダクトに参画し、UX企画・設計/マネジメント業務を行う。現在はスタートアップのB2B SaaS系プロダクトの立ち上げからジョインし、CXOとして0-1のプロダクト開発中。また個人ではブランディング戦略/CX.OPSのデザインコンサルを行っている。

モデレーター

渡邉 大純(Wab Design School代表 / Wab Design INC. CAO / Information Architect)
本質的な課題解決ができるデザイナーを育成する学校 Wab Design School 代表、および運営母体のワヴデザイン株式会社 執行役員。ウェブサイトやデジタルプロダクトのUXUIデザインから、企業におけるデザイナー育成や評価制度の構築まで幅広く支援を行う。またデザイナーのキャリア構築のサポートや転職支援などを行う、国家資格キャリアコンサルタントとしても活動中。


ジェネラリストとして価値を提供する

ー 今日は「人生100年時代のキャリア戦略」ということで、ゲストの皆さんがどのようにキャリア戦略を考えているのかをお聞きしたいんですが、伊賀さんは今どんな仕事をしていますか?

伊賀 私は「 英語学習サービス」と「ペット向けIoTサービス」に携わっていて、「英語学習サービス」ではUIデザイナーとして新規機能追加や既存の画面を改善する仕事をしています。一方で「ペット向けIoT サービス」はベンチャーでゼロイチのフェーズなので、幅広くあらゆる未確定なことを視覚化しています。CEOがすごく近い位置にいるので、意思決定の決断をお手伝いするような仕事も多いです。

ー 意思決定者の判断を手伝うビジュアライザーというわけですね。なかなか大変じゃないですか?

伊賀
 そうですね。ただ私がやっていることはアプリのUIデザインがコアなんですけど、パッケージ、リーフレット、サポートサイトなども担当しているんです。ビジュアライズっていろんな方法があって、例えばサポートサイトをゼロから作らなきゃいけないってなると、まずコンテンツをリスト化したりとかっていうことがあったりとか、パッケージで言うと「紙で箱を作ってみる」みたいなところだったりとか、まず何もないっていう状態だと何も決めようがないので「違う。これじゃないね。」っていうことがわかるだけでも発見なんです。だからとにかくまず作ってみるっていうのをやっています。

ー UIの部分が主戦場ではあるけれども、そこに至るまでの周辺の制作物、例えば紙のパッケージを作るというところまで幅広い領域を仕事にしているんですね。では、伊賀さんが提供する価値とはどのようなものでしょうか?

伊賀 デザイナーとして当たり前ではありますが、まず「人にちゃんと使われるものや喜ばれるものを作りたい」っていう気持ちがあると思います。あとはUIをコアとしながらもデザインの周辺領域であればどんどん拾っていくし、やったことないことでデザインに関わることだったら、興味があればやっていきたいという思いがすごくあります。

─ 例えば「私はUIデザイナーなのでそこはできないです」と言ってしまうのではなく、業務範囲では無くても課題を見つけたら「自分事」にするということですね。「他人事」ではなく「自分事」にするというのは凄くキーワードな感じがしますね。
辻之内さんは今どんな仕事をしていますか?

辻之内 私は建築DXの会社と金融インフラの会社で働いていますが、建築DXでは主に体験設計とECサイトの設計をやっています。体験設計ではサービス全体を通して「現場にいる人たちがどのようなことを感じて、どういうことを考えているのか」といったことを考えながらユーザーストーリーを作り、重視すべき点を考えます。またECサイトの設計では体験設計に基づいてUIの大枠を1週間以内に作り、設計する体験が合っているかどうかということを素早く確認します。もしダメそうなら「どこがダメなのか」ということをみんなで検討して、もう一回またUIに戻ったりすることを繰り返し、最適なデザインをみんなで作っていきます。

ータイトなスケジュールで バリバリやってそうな雰囲気がしますね。

辻之内 ですね。急に「2週間後には必要」みたいな話が割と多いので、まずスケジュール感を擦り合わせた上で、どのようなことを考えているのかを引き出す土台を素早く作ることが大事かなと思っています。形にして議論のたたきを作るような感じで、前提として「みんなの力でいいものを作る」ということを考えているので、そういった意味でも、まず最速で「とりあえず話せる状態」を作りたいといつも考えています。

ー 建築DXの体験設計では「ユーザーは誰だっけ」など抽象度の高い話をしつつ、ECサイトの設計では「UIをどうするか」など具体的な話をする必要があって、両極端なことをやっていると言えるかもしれませんね。
では辻之内さんが提供する価値とはどのようなものでしょう?

辻之内 
提供価値と言えるかわかりませんが、私は「コミュニケーションがすごく取りやすい」と言われることが多いんです。現在の会社や過去に所属していた会社などの人間関係が上手く続いていたり退職後も定期的に連絡取ったりすることがよくあるので、その延長線上でお声がけしてもらえることが多いかなっていうのは最近思っています。

─ 何かあったら「辻之内さんを呼ぼうか!」となり、辻之内さんがハブになって、散らばった情報の交通整理を行うようなイメージでしょうか。
コミュニケーションが取やすいからこそ交通整理の役を全うできる、これが辻之内さんの提供価値と言えそうですね。
それでは、塩尻さんは今どんな仕事をしていますか?

塩尻 僕は主に新規事業を中心に動いていて、今所属しているスタートアップもそうですし、その他も基本的には新規事業なんです。基本的にはそういった所謂アーリーフェーズの企業に関わることが多いので、必然的にプロダクトの立ち上げみたいなところから企画や仮説検証にコミットすることが多いです。プロダクト作りから始めることもあるし、所謂3CとかSWOT分析、ブランディングなどの戦略作りをお手伝いしたり、ターゲティングやセグメンテーションといった分析のフェーズで入ることも多いです。
関わる企業さんのフェーズや課題によって、もうどこからでも入りますという感じで、それを僕個人だけでやるというよりも組織全体としてやれるようにチーム作りをしてみたりとか、そのチーム推進をしたり、僕が抜けた時にもちゃんと機能するように、属人的にならないように心がけています。

─ なるほど。塩尻さんが単品で動くというよりは、みんなで動かすための仕組みを塩尻さんが作ってみんなで動くんですね。外部から入って3C分析やSWOT分析をしたり、この企業の強みは弱みは?競合優位性は?といった話をしたり、プロダクトに紐付くようなユーザーストーリーから ペルソナからプロタイピングまで、3名ともそうですが、まさにWab Design Schoolが目指すデザインジェネラリストを体現するような活動ですね。
では塩尻さんが提供する価値とはどのようなものでしょう?

塩尻 伊賀さんや辻之内さんと殆ど同じような文脈ですが、例えば僕はUXを取り扱ったりするんですけど、UXの専門家でもなければUIの専門家でもないって言ってるんです。「UXに詳しい」みたいなところに価値を感じてくれるケースも勿論あるにはあるんですけど、どちらかというと「僕の高い専門性はこれです。だからこの課題を解決するんです」っていうのではなくて、先にまず課題があって、「この課題だったらこれやるべきだよね」みたいな、ジェネラリストというか、専門家というよりも実践者というか、そこに価値を感じてくれる声が多いなと最近は思っています。「とりあえず塩尻さんならなんか言ってくれるでしょ」みたいな。

─ 「なんとなく塩尻さん」ではなく 「とりあえず塩尻さん」なんですね。

塩尻 そういう風にブランディングしてるというわけではなく、すごく高尚なロジックや思想があるわけでもないんですが、なんかみんなの役に立ちたいみたいな性格なんですよね。役に立って誰かがありがとうって言ってたらシンプルに嬉しいじゃないですか。

─ 自分で領域を狭めたりとか「私は〇〇の人なんです」と定義しないような人だと、とりあえず目の前にあって自分ができることを「じゃあこれやっときますか」といった感じで、割とフレキシブルに対応できるような方っていますもんね。
お話を伺っている限り、3名の皆さんはいずれもジェネラリスト的な動きや様々な人や物事のハブになるような動きをされているんですね。

大切なものを軸に働き方を選択する

ー 今日のテーマは「キャリア戦略」ですけど、例えば新しいことの学び方の話もあるでしょうし、デザイナーとしてどう生存戦略として考えるのかとか、実際食い縁としてお金をどうやって稼いでいくのかとか、またワークライフバランス、家庭との両立、自分の趣味との両立、子育ての両立とか色々あると思うんですけど、 自分これ話します!という方はいますか?

塩尻  僕はどちらかというと自分の方針みたいなところで、ちゃんと一つ安定した収入の柱みたいなところをちゃんと作っておいて、その上でフリーランスなどで自分のシンプルに好きなことや一緒にやりたい人と仕事をしたり、「本業と副業」という言い方が正しいのか分からないですけど、会社に所属することとフリーランスを両立してやっています。

ー 観点でいくと「何を目的に、何を大事にするか」みたいなところでしょうか。辻之内さんはそのあたりどうですか?

辻之内 僕も本業は1個ちゃんと持ちながら副業をやってる状態なんですけど、ワークスタイルよりもライフスタイルの方を割と重視しながら、仕事の時間の割り振りみたいなことを常に考えています。子供が3人いるので、まだそこまで大きくないので成長も一緒に見て、最近気づいたんですけど、子供を育てる事ってデザイナーの視点に通じるものがあって、違った目線だけども子育てを通して自分がより成長できる感覚があります。なので、なるべくライフスタイルの方を充実させて、仕事はその追加でやるみたいな感覚でいけるといいなとは常々考えているところですね。

ー それは意外ですね。あれだけ仕事をしているのに時間が足りるのか心配になってしまいます。では伊賀さんはどうですか?

伊賀 私は自分の好奇心を大事にしたいと思っていて、例えば今は犬を飼っていて、結構犬中心の生活なので、犬のためになるような仕事をしていきたいとか、あと英語学習サービスに関しても自分がユーザーになれるようなサービスだったりとか、そういう自分の興味とか関心の先に仕事があるみたいな状態を常に作っておきたいというのが目的だったりします。
ただ、先程「デザイン周りで興味あることは何でもやりたい」といった話をしましたが、それはやっぱり自分の興味関心があるような仕事を何かしら常に持っておきたいっていうのがあって、そのために仕事の幅を広げていきたいということなのかもしれません。

ー 自分の興味関心がまずあって、それに関連する仕事を今後もやっていきたいと考えていて、その時に必要なスキルがあれば都度吸収しながら将来にも備えるような感じでしょうか?

伊賀 そうですね。それがちゃんとお金になるように、興味関心と自分が出来ることをマッチさせておくことが大事かなと思っています。

塩尻 確かにジェネラリスト的な振る舞いを普段からやっていると「何でもかんでもやるんでしょ」みたいに思われるかもしれませんが、やっぱり明確に嫌いなものってどうしても自分のパフォーマンスを最大限発揮できないと思うんですよね。そのあたりの線引きは見極めたいなと思いますよね。

伊賀 やっぱり好きなことの方が突き詰めやすいですしね。

塩尻 中国の昔のお偉いさんも「努力する人は夢中な人には勝てない」みたいな格言を残してるぐらいで、やっぱり真理なんだろうと思うんです。「努力」は少し「苦行」みたいなニュアンスも入っていますが、夢中にやるっていうのは苦行ではなくて自分がやりたいからやっているだけなので、努力とも思ってないですみたいな感じですね。

ー 将来のキャリア 戦略のなんか一番ベースとなるスタンスというか、戦略的に「こう考えよう」と能動的に考える際の最もベースのところに「そもそも興味のあることだからやっている」という大前提があって、それが結果的に「ジェネラリスト」になったり「ハブ」のような役割になったり、そうしたことに繋がっていく。そして今後もそれが積み重なっていくのかもしれませんね。


アーカイブ動画を公開しています

今回のイベントはYoutubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。
全編ノーカットでご覧いただけますので、詳細が気になった方は是非Youtubeチャンネルもチェックしてください。

またWab Design INC.ではデザインジェネラリストを育成するWab Design Schoolや上流から活躍したいデザイナーと企業を繋ぐ人材エージェントTHYNCなどを展開しています。詳細はそれぞれのWebサイトからチェックしてください。