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85年以上続く学校法人 伝統と新規事業のシナジーを可視化し、世の中にわかりやすく伝えるリブランディング | 正和行学グループ【制作事例】

正和行学グループは、東京都町田市を中心に2つの認定こども園と多数の小規模保育園、企業主導型保育園、送迎ステーションを運営し、「こどもが中心」の、こどもたちが主役の保育・教育を実践しています。

創立時から85年以上受け継いだ【想いと姿勢】、【時代と人が求める「行い」と「学び」の両立】をビジョンに行ったリブランディングを、ワヴデザインが担当しました。今回はリブランディングの目的や、リブランディングがもたらした変化、そしてそれがどのようにグループに根付いているのかをクライアントインタビューも交えてお伝えします。

こんな方にオススメ
⚫︎ブランディングに課題感がある教育事業の担当者
⚫︎複雑な事業を理解し、整理するパートナーを求めている方
⚫︎新しい保育の取り組みに興味がある方


本プロジェクトの概要

齋藤 祐善氏は85年以上続く保育園の承継者です。社会変革の起点を生み出してきた創始者である片岡重助の姿勢を受け継ぎ、新しい取り組みを意欲的に推進して活動の場を広げてきました。それぞれの事業同士のつながりがもたらすシナジーを訴求するため、今回のリブランディングを決意。ワヴデザインには、事業内容や組織として大切にしていることを今一度整理し、その思想をデザインを通してわかりやすく世の中に伝えることが求められました。


WABが提供したソリューション(課題解決)

ワヴデザインのブランディングでは表層のデザインのみではなく、組織が大切にしている本質的な部分をデザインで表現することが重要だと考えています。そのため、今回のプロジェクトでまず着手したのは、事業理解を深めるために施設の関連性を整理した組織図作り。施設ごとに単独のコンセプトがあって関連性が見えづらかった施設を、取り組みごとにグルーピングし、今までなかった「正和行学グループ」を新たに誕生させたことで、施設のみならず関連企業とのつながりも可視化されました。

初回ヒアリング時に事業理解を深めるために作成した組織図のドラフト

組織構造を整理することで事業理解を深めながら、グループの目指すべき姿(理念)をどのようにしたらわかりやすく内外に伝えられるかの議論にうつっていきます。コロナ禍でオンラインミーティングしか実施できない中で、この作業は困難を極めましたが、現場に赴き空気を肌で感じたことが打開策となりました。

理念である「いきいき」、そして当時から存在していた「つながり」「ひろがり」というブランド。すべてひらがな4文字というところに着想を得て、社会変革に挑戦し続ける「こころみ」と、日々の生活の基盤を築いていくという意味を込めた「いとなみ」が加わり、4つの言葉が生まれます。短くても覚えやすく、印象に残りやすいワードです。

いきいき社会を中心に置き、理念を実現するための4つの視点(素案)となった
対外向けの飾った言葉ではないからこそ、現在も大切な指針となっている

ワヴデザインではこの4つの言葉を軸に、同グループが行っている取り組みのコンセプトブックやロゴ、ホームページを制作しました。

ワヴデザインが手掛けた制作物の一例


クライアントインタビュー

プロフィール
齋藤 祐善(学校法人正和学園 / 理事長)
幼稚園事務長、保育園園長、 町田市議会議員などを経て学校法人正和学園理事長に就任。(正和学園創立より85年。4代目)2児(双子)の父。
現在ほかに、社会福祉法人芳美会理事長、全国認定こども園協会 理事、全国小規模保育協議会 理事(東京チャプタ―長)、社会福祉連携推進法人 あたらしい保育イニシアチブ 理事、児童発達支援研究機構 理事、一般社団法人こども DX 推進協会顧問 他。15名~400名までさまざまな施設を運営。「新たな時代の保育」を求めて試行錯誤の日々。

中村 和貴(Wab Design INC. / クリエイティブディレクター)
広い視野でのクリエイティブワークで問題発見・解決を得意。保育士と家族、保育園と保護者のコミュニケーションを深めるサービスkidslyや、保育園・こども園・幼稚園・学校などに特化した集金支援enpeyのブランディングも担当。主な受賞に、キッズデザイン賞、グッドデザイン賞ベスト100など。

覚悟を決めて、時間をかけたリブランディング

━━まずは、ワヴデザインにご依頼いただいた経緯をお聞かせください。

齋藤:当時5カ年計画を作っていて、最初のテーマがリブランディングでした。キーコンセプトやMVVを見直して、理念浸透を職員向けにやっていたのですが、それをどう対外的に伝えるかということを考えていて。個々の事業は珍しいものではないのですが、多岐にわたる事業が有機的に結びついたときに作られるシナジーが子供が育つうえで重要なのに、ただきれいなホームページをつくるだけではそれがうまく伝わらないという課題がありましたね。

正和行学グループ理事長の齋藤祐善さん

齋藤:また、そもそも一新したいという気持ちも強かったので、自分の想像の範囲じゃないところでトータルで考えられるパートナー的な会社を求めていたんです。そこで、株式会社エンペイの森脇さんにワヴデザインをご紹介いただきました。

中村:コロナ禍だったのでオンラインでずっとお話を聞いたんですけど、事業が多岐にわたりすぎて自分の中にある保育園の概念が覆されるくらいの衝撃で、なかなか理解できなかったのを覚えてますね。

ワヴデザインの中村 本プロジェクトではグループ全体のクリエイティブディレクションを担当

齋藤:当時を振り返るとわかりにくいものもたくさんあったし、コミュニティー感というものは見えづらくて、どう言葉に変えるかというのはライターの方も苦労したんじゃないかなーと思います。出していただいたものが微妙にニュアンスが違うというのも何度かありましたね。

━━途中で不安になったりしませんでしたか?

齋藤:自分たちがリーチしていない人たちにも理解してもらうには時間をかけてゴリゴリやったほうが良いとは思っていたのである程度は覚悟していました。ワヴデザインさんも根気強く話を聞いて、一緒にしっかりと組み立ててくれたのはありがたかったですね。スケジュール的には完成するのか?行き着くところはあるのだろうか?というのはありましたけど(笑)。

中村:それは全員思ってましたね(笑)。でも現場に行って空気を五感で感じたときに今まで説明されてきたことが整理されて、元からあった「つながり」「ひろがり」に加えて「こころみ」「いとなみ」という4つの言葉がようやく出揃いました。それが今までの正和行学グループの取り組みにうまくはまってシナジーが見えてきたんですよね。


4つの言葉でコンセプトが明確に

齋藤:単独で存在していた各施策の目的が、4つの言葉のどこに属するのか区分けしていきました。一つ一つの要素が収斂されていくことで、事業のコンセプトがより明確になり、世の中に伝わりやすくビジュアライズできるようになっていったと思います。例えばリブランディング後に制作した「つながり保育プロジェクト」の冊子は、これまでは施設の紹介がメインだったところを、最初にプロジェクトのコンセプト紹介、次に街の紹介、そしてプロジェクトに従属するツールとして施設の紹介を入れる構造に変えたんです。

つながり保育プロジェクト コンセプトブック
つながりが分かりづらかった各施設の特徴が一覧で把握できるようになった

齋藤:これまでは施設ごとに資料があったのですが、複数の施設紹介が1冊にまとまったことで資料配布時の混乱がなくなりましたし、郊外の大規模こども園・小規模保育園・送迎保育園(※)・送迎バスを駆使して街全体で保育をしているんだという、単体だとわかりにくい施設ごとのつながりが見えるようになりました。

※送迎保育園とは
小規模園に登園した園児を郊外の大規模こども園に送迎する仕組み。当初は6、7名からスタートしたが、現在は160名を超える園児が利用している。都市部の待機児童問題と、郊外の大規模こども園の経営課題の両方を解決した正和行学グループ独自の取り組み。

ワヴデザインがデザインした送迎バス。各施設のカラーとつながりの「つ」を繋げたデザイン

齋藤:いわゆる保育事業者とはあまり考えてなくて、子育てのコミュニティを運営しているコミュニティーマネージャー・ソーシャルワーカー的な発想でプロジェクトを進めていたので、そういった部分もうまく表現できたかなと思っています。

街全体で保育をするコンセプトを元に、「このまちの未来」というコピーを採用


内側に与えた変化。そして、進化しつづけるもの

━━リブランディングを通して、内部的な変化はありましたか?

齋藤:ちょうど施設をたくさん作っていた時期でもあるので、新規採用が盛んだったんですよね。入ってくる前に私どもホームページを見てイメージを固めてくれていたので、園を通して社会を変えていこうという同じ目的意識を持つスタッフが多かったというのが嬉しい変化でしたね。

中村:マッチ度の高い人材が入ってきてくれるというのは嬉しいですね。

齋藤:今はスタッフが作ったプロジェクトがいくつか出始めているので、そういった動きも定着させていきたいですね。また、毎年の年次計画を立てる際も、必ず4つの視点から自分のやるべきことを分析して、アクションプランに落とし込んでいます。

中村:なるほど。どこか一つにプロットするわけではなく、同じことがらでも4つの視点からみていこうという考え方なんですね。

齋藤:そうなんです。つながりプロジェクトの中にも「こころみ」と「いとなみ」の要素はあります。ただ、どの要素かというのは常に変化していくもので、当初は新しい取り組みとして「こころみ」に位置づけされていた送迎保育園も、定着してきた今は「いとなみ」になっていったり。

中村:たしかに。それは面白いですね。ブランディング全般に言えることなんですけど、作って終わりではなく、時代と共に変化していく・育てていくというのがブランドの強さになっていくんだろうなと思いますね。

ひろがり保育プロジェクトのコンセプトブック
「行い」と「学び」の両立を表した正和行学グループのスパイラルロゴ

中村:でも理事長、プロジェクトがどんどん定着していくと、「こころみ」の部分が寂しくなっちゃいませんか?

齋藤:実はもう子育ての環境は次のステージにはいってきていているんです。国の政策もガラリと変わってきて、今までは施設に子供が入るという発想だったのが、施設ありきではなく子供を主体にしようという流れになっています。来年あたりから始まる「こども誰でも通園制度」は、子供が希望すれば一定時間どの園でも通園できるという制度なんですけど、本当に革命的で。DXなど幅広い分野も絡めながら私達がもっている場を今まで以上にどう活用してもらうかという「こころみ」があります。

次の取り組みへの熱意を語る理事長と興味深く耳を傾ける中村

齋藤:それ以外にも海外の視察を再開して海外とのつながりを強化したり、国内でもいろんなチャレンジをしている園を集めて「新しい保育イニシアチブ」というイベントを作ったり。300施設くらい集まったので事業化を試みてるんですけど、アライアンス関係をどうやって表現していくかというところも考えています。

中村:すごい…!実はプロジェクトが終わったあとも1年ぐらい情報をキャッチアップするために月1回対話をしていただいていたんですけど、また毎月から来るのを再開したほうが良さそうですね(笑)


まとめ

保育園の概念を覆す、正和行学グループの取り組み。理事長の社会変革への熱意は留まることを知らず、取り組みは日々アップデートされています。今回のプロジェクトは新しい保育の形を知るきっかけとなり、学びの多い時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

ワヴデザインでは、組織構造などのハードの部分から、理念・価値観などのソフトの部分まで包括的なブランディングが可能です。伴走しながら情報を整理していくこともできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

Credits
Client: SEIWA GAKUEN [SEIWA GYOGAKU GROUP]
Producer: Kazutaka Nakamura
Creative Director: Kazutaka Nakamura, Taeko Watanabe
Web Director: Takuya Kagiwada(parklife)
Art Director: Kazuya Yamaguchi
Designer: Kazuya Yamaguchi, Katsuya Kawamori, Kozo Asada(longwalker.net)
Developer: Katsuhiro Watanabe
Copywriter: Tetsuo Morita(Rockaku)
Photographer: Shuhei Yoshida, Tomoya Uehara, Keisuke Kitamura, Shuhei Shine
Illustrator: Doisena

製作期間
プロジェクト期間:2年

制作物
ロゴ、ホームページ、パンフレット、ブランドコンセプト、コピー、ネーミング、オリジナルフォント

使用ツール
miro、XD など

撮影 / 新江 周平
聞き手・文 / 佐藤 教子(Wab Design INC.)



正和行学グループ
東京都町田市を中心に2つの認定こども園と多数の小規模保育園、企業主導型保育園、送迎ステーションを運営し、「こどもが中心」の、こどもたちが主役の保育・教育を実践しています。



ワヴデザイン
ワヴデザインは、ブランディングやデザインコンサルティング、サービス開発支援などを手掛けるデザインファームです。領域を定めず、本質的な発想で課題の抽出から戦略立案、クリエイティブ制作まで幅広く価値を提供しています。