海街diary すず
海街diary。この映画が本当に好きだ。いつも心の奥底にあって目立たないけど、たまに思い出しては観たりする。ふいに観たくなる。オープニングが好きだ。次女役の長澤まさみが彼氏の家から朝帰りする場面、海沿いの道を歩く彼女の後ろ姿を見ながら堤防に海街diaryの文字がフワっと浮かぶのを見る。何とも静かで朝の潮の匂いがしてきそうで、子供の頃に行った海沿いの旅館の朝を思い出す。朝窓を開けた時の潮の香り、朝ごはんの海苔のパリパリ感。非日常の楽しかった思い出が頭の奥底から無意識に顔を出し、気持ちがほころぶ。
舞台は鎌倉。私自身訪れた事もなく、海沿いの旅館など何の関係もない。長澤まさみだってこの鎌倉でごくごく普通の日常を送っている、そういうストーリーの映画なのだけれど、なぜかこのオープニングを見た時のふんわりと記憶の断片が触れられて優しい気持ちになるような感覚が映画の最後までずっと続くのだ。
どこか懐かしく、いつしか感じたような、いつだったか思い出せないけど、何となくわかるというか。知っているというか。
だからこの映画をたまに観たくなるのだと思う。内容に入り込むというより観る事によってなんとなく呼び起こされてくる感覚に酔っている様な気がする。とにかくとても心地よいのだ。
鎌倉に暮らす3人姉妹のもとに離婚後離れて暮らす父の訃報が届く。葬儀に参列した際に腹違いの妹すずと出会い、すずを鎌倉に呼び寄せ姉妹4人で暮らし始めるところから話が展開していく。しっかり者の長女は綾瀬はるか、次女は長澤まさみ、三女は夏帆、そして腹違いの妹は広瀬すず。すずという役名と同じなのでとてもしっくりくるが実際の年齢も役と同じくらいで15歳だった。
すずを取り巻く環境は、3人の姉を含む大人たちや学校の友達、部活の仲間等様々だが、各々が人生のドラマを抱えながらも優しく優しく穏やかにストーリーは進んでいく。そしてすずも素直に優しく成長していく。こんなに穏やかに心地よくラストまで連れて行ってくれる映画って他にあるだろうか。
素直でかわいらしいすずは新緑の葉っぱみたいだと思った。瑞々しくて、きれいで可愛くて柔らかそう。
新緑の葉っぱの様なすずが笑うと嬉しくて、姉の気持ちになったりおばさんの気持ちになったり、友達の気持ちになったりした。すずの傍でずっと成長をみていたいし、一緒に笑いたいし、泣きたい。ゆらゆらと現れては消える自分の奥底の記憶に心地よく酔いながらそんな風に思った。
この映画を今度はいつ観たくなるのだろうか。いつも心の底にそっと居て、自分の事を思い出したい時、考えたい時に観たくなるのかもしれない。新緑のすずは変わらずここにいる。
若く、愛らしく、瑞々しいすずをイメージしました。芽吹いた新緑はいつしか立派な木々へと成長していくけれど、この始まりの儚さがまた美しいのですね。