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キャメラとカメラ:映画「キャメラを止めるな」(2019・仏)

「ナントカ・オブ・ザ・デッド」のアタリの方

2017年に日本で「カメラを止めるな!」が公開され、低予算作成・ゾンビ系映画の中では異様な人気を博した。
あのヒットは、公開当時の「映画の半券をお持ちの方は2回目半額!」のキャンペーンがかなり後押ししたように思う。私もまんまと釣られておかわり観賞した記憶がある。

ただ、フランス版は、映画ファンの中ではあまり評判が芳しくなかったため未鑑賞だった。結局、今日になって同居人が「カメ止め」すら観ていないと言うので、それならばせっかくだし、と流したのが「キャメラを止めるな!」(2022年・フランス)だった。

自宅鑑賞派におすすめのリメイク版

日本で「カメ止め」が地上波放送された際、冒頭30分で脱落者が続出していたのをTwitterのトレンドで見ていた。あそこを経るから面白いのだが、確かに、あの30分は映画館の身動きが取れない環境だからこそ観続けられたところもある。劇中劇の意図的な間の悪さや、シーンとした場面があまりにも「観てられない」感を演出しているからだ。

リメイク版のミシェル・アザナヴィシウス監督は「冒頭の30分間の『出来の悪い映画』で観客に席を立たせないことが重要だった」とコメントしている。
まず映画館でも席を立つ人がいるのかというカルチャーギャップもあるが、結果としてリメイク版は映画全体のエンターテイメント性が高まっていた。

一部の日本の原作ファンからは「コピーでしかない」「説明が長い」と言われていた辺りは、逆に日本のハイコンテクスト(文脈の中に複数のニュアンスが絡んでいる)文化についていけない層や、途中で気が逸れても中身に追いつける説明調を求める「ながら鑑賞」にはむしろ最適だった。これはもはや、フランスだとか日本だとかではなく、自宅鑑賞が爆発的に広まった2020年代の映画に必要な要素に思える。

基本的に原作を踏襲しつつ、背景文化の予備知識が必要なエピソードの付け足しは行わない。必要な部分に万人がわかるユーモアを挟む。

ローカライズの逆「グローバライズ」されていながらも、よくある「原作の要素が皆無の同タイトル作品」にならなかったのは、原作脚本へのリスペクト故か、それとも劇中で度々登場した「日本が改変を許さなかった」からなのかは不明だが、リメイク作品として一種のブラッシュアップされた景色を観れたという意味で、私は本作を高く評価したい。


2023年4月 鑑賞


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