無意識の偏見とソーシャルアクション
Wisdom 2.0Japanは、昨年から「自らの気づきを元に社会をより良い方向に導こうとしているリーダー、社会活動家」の方にも特にフォーカスをして、登壇をいただいています。
そして、ではWisdom 2.0Japanが自らできるソーシャルアクションは何かといえば、登壇者の男女比率を同じにすること、または、女性の登壇者を多くすることと考え、その実現に2020年の第一回目より取り組んできました。
日本で開催されるカンファレンスのほとんどで、男性が中心の登壇者であることは、いろいろなところで指摘されはじめています。SDGs、これからの働き方改革、など未来志向のテーマにも関わらず、登壇するのは、男性ばかり、または、その男女比率で男性優位となっていることがほとんど。
でも、この背景にあるのは、決して男尊女卑の思想ではない(結果的にそうなっていると指摘する人もいるかもしれませんが)ように思えていました。
自分たちで「日本のカンファレンス登壇者の男性ばかり問題」に取り組んで分かったのは、自分たちの内側、または、日本社会の根底にあるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)がそうした結果を導いてしまっている、ということ。
僕に、この気づきを与えてくれたのは、今年もWIsdom2.0Japanに登壇いただく、コンパッションの世界的研究者:ジョアン・ハリファクス博士。
WIsdom2.0Japanを立ち上げる数年前、彼女を招聘してのコンパッションのプログラムを開催していました。ある日、そのセッションの一部として、ご自身の経験を共有いただける方に登壇いただき、パネルディスカッションをしようということになり、その登壇者のリストを見たハリファクス博士から一言。
「なぜ、男性ばかりなの?」
その一言をもらった時に、さまざまなことへのたくさん気づきとまさに顔から火が出るほどの恥ずかしい思いが立ち上がってきたことを今も鮮明に覚えています。
立ち上がってきたたくさんの気づきとは、どれだけ、僕たち、または、日本の社会に男性優位になってしまう無意識レベルの偏見がはびこっているのか、ということであり、そのことに全く気づきを向けようともしない僕たちの気づきのなさであったり、または、そこに気づいていても、それを指摘しようとしない、または、指摘できない無意識の圧力がある、ということ。
「気づきの力が大切、マインドフルネス、アウェアネスが必要」とメッセージしている自分にも関わらず、自分自身が全く気づいていない、という矛盾と恥ずかしさ。
自分自身のアンコンシャスバイアスに強烈に気づかされたとともに、これは日本社会において根強くはびこっているモノだとも思ったのでした。
「日本のカンファレンス登壇者の男性ばかり問題」に対して、時々、「でも、それぞれの領域の専門家を集めると結局男性が多いし、話術やプレゼンテーションに長けた人を選ぶと結局男性になってしまう」的なご意見をする方がいますが、それは違います。それも全くの偏見なのです。
ハリファクス博士からのいただいた気づきをもとに、第一回目のWisdom2.0Japanでは、登壇者の男女比率を同じ、または、男性の数の優位問題に対するアンチテーゼとして、女性が少し多くなるようなバランスを意図して、登壇のお願いをしていきました。
そして、結果はどうなったか。実は、男性が6割、女性が4割という比率だったのです。
「ガーン」
自分自身でもショックを受けました。あれだけ大切な意図としていたのに。
なぜそうなってしまったのか。そこで僕も、「それぞれの領域の専門家を集めると結局男性が多くなってしまう」のか、と一瞬考えたのですが、より広い視点で考え直してみると、表面的にはそうかもしれないが、しっかりと気づきの目を持って、登壇していただきたい人物の探索に当たっていくと、素晴らしい専門性をもち、かつ、素敵なお話をされる女性の方はたくさんいることに気づいていきました。
もしくは、社会として、男女差別、区別なく、また、男女バランスを踏まえた上で、各領域、各業界が専門家を輩出するとする土壌を耕してきていれば、注目すべき女性はもっとたくさん輩出されてきたはずでしょう。それをしてこなかった日本社会の過去の結果として今があることへの気づきも自分自身の責任として持つべきではないでしょうか。
つまりは、旧来のフレームワークにはまって、表面的な人物探索だけしかするのではなく、これまでの自分がかけている世の中をみるフレームワーク、色メガネを手放し、あるがままの世界を見ていく、または、新たなフレームワークで世界を見て、具体的にアクションをしていくと、新しい世界が見えていくのです。
新しい社会や世界を創造しよう、立ち上げようとするときに、でも、その足かせになっているのが、目に見えない自分や自分たちの内側にあるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)なのです。
言い換えると、新たな社会の創造、ソーシャルアクションのためには、いかに自分たちの社会・世界の旧来の常識、価値観に無意識レベルにも気づきを向け、そして、手放していくか、が必須なのだということに改めて気づかされました。
そして、昨年開催したWisdom2.0Japanのメインステージでは、男女比では女性の方々に多く登壇いただくことを実現しました。
(正直にいうと、メインステージ以外のセッションやプラクティスをリードいただく方を含めると、若干男性が多くなっていたのです。ここでも難しさを味わいました。理由はいくつかありますが、ここでは割愛します)
今年は、じっくりと登壇者の叡智に耳を傾けていただきたいと考え、昨年よりは登壇者のお声かけは少なくしていますが、まさにこの2022年に触れていただきたい経験と哲学をもった方々にご登壇いただきます。そして、登壇者の方は、19名中、10名が女性となり、ようやく当初の意図を実現することができそうです。
Wisdom 2.0Japan
Co-Founder 荻野淳也
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