手漕ぎボートで沈没したはなし
むかしむかし
男仲間5人で千葉まで行き、海水浴や巣潜りなどをして夏を満喫していた。
現地の人が「今日すごいキスが釣れるよ!」と
ひょんなことから定員3名乗りの手漕ぎボート2艘を借りてキス釣りをすることになった。
じゃんけんで勝った2人チーム、負けた3人チームに別れ、
釣れた数を競うことにした。
最初に勝った私は釣りのスペースを広く使え、漕ぐのも楽な2人チームを選んだ。
陸から少し離れるだけで釣果がすごく、
最初はやれ勝った負けただの楽しんでやっていたが、30分もするとどちらのボートもクーラーボックスはすぐ一杯になり、釣果の勝負は引き分けとした。
次はどちらのチームが遠くの沖まで行けるかを勝負することに。
頭の中では自分達がボート部の選手になったかのように沖に舳先を向けて必死に漕ぎ続けた。
序盤は私達の2人チームが軽さで有利だったが、
交代メンバーが多い3人チームの追い上げがすごく、
意外に接戦でどんどん陸が小さくなっていった。
普段漕ぐという行為をしない偽ボート部の選手達は腕がすぐパンパンになり、
お互い漕ぎ手チェンジを複数回繰り返したところで、
3人チームのオールを固定するところが割れて破損した。
その部分を直そうと3人が同じ方向に体重をかけた瞬間に転覆。
見てる2人チームの私と相棒はまるでスローモーションを見てるかのごとく船が傾き、3人がゆっくり海に落ちていった。
ひっくり返ったボートと海に浮かぶ放心状態の3人。
こちらの相棒が「ボートを元に戻そう!」と海に飛び込んだ。
4人で立ち泳ぎからボートを持ち上げようと頑張るが、
水が入ったボートは持ち上げられることはなく、
間もなく4人と共に海に吸い込まれた。
諦めて手を離し水面に上がってきた4人は我先にと
私のボートに向かってきた。
この状態ではこちらも転覆すると思い、
「一気に船を掴むとまた転覆するから、4人で話し合って1人ずつ船に近づけ!」
乗ってる私と落ち着いてバランスよくボートを掴む4人と話し合い、
3人は乗って、2人は後ろからバタ足でモーターをやって陸に帰ることに。
波に流され右往左往しながら、長い時間をかけ無事陸に戻り、近くの民宿で揚げてもらったキスの天ぷらの味は一生忘れることはない。
という初夏の思い出。