【No.1492】型の効用
こんにちは、前のめりの藤倉です。
東京は雨が上がってご機嫌です。秋のような涼しさも相まって勉強が進みます。
学習塾の講師として、現在、漢文を教えている生徒がおり、彼が古文は読めるのに、漢文になじめず悩んでいます。どうも、漢文の文章は読めるのだけれど、結局何が言いたいのかが全く理解できないということです。たとえば、漢文には比喩表現が多いのですが、その比喩が何を何と対比させているかまでは読めても、「だから何なの?」
この点について講師の先輩に質問したところ、今回の生徒については暗記は超得意。でも、思考して、自分で何かを編み出すことや、自分の意見を述べることが現時点では苦手なので、「型」を与えるという方針をアドバイスしてもらいました。
型とは、今回なら中国思想です。漢文において、どのような結論が導かれることが多いのか中国思想を背景とした枠組み(型)を、知識として覚え、読解において型を当てはめ教訓を推測・読み取っていくという試みになります。パターン学習ともいうかもしれません。
さて、方針が決まったのはいいものの、僕自身、中国思想が全く分かりません(笑)そこで、同じ先輩講師から世界史をならったのですが、めちゃくちゃ面白かった!ので、ここでお裾分けさせていただきます。
中国思想について、メインとなる思想には、儒教、道教、仏教の三つが挙げられます。もちろん他にもたくさんありますが、覚えるべきはこの三つでしょう。
儒教は孔子が立てたもので、「仁」と「礼」を重んじます。つまり「思いやり」ですね(超訳しすぎかw)。『論語』は孔子の教えを弟子が集めたものですね。
孔子の思想を継いだ、孟子(もうし)と荀子(じゅんし)は重要です。有名な性善説と性悪説です。どちらも同じ師匠、同じ儒教だったのです。(知ってました?w)
孟子が性善説、荀子が性悪説を唱えました。ざっくり言うと、性善説は人間の「善」を引き出す教育や環境を重視し、性悪説は人間の「欲」を制御するルールや規律の必要性を説いています。
ただ、共通点として、もともとの儒教が国家や社会の安定を目指しているので、性善説も性悪説も「人を教育し社会を安定させる」点では一致しています。へー、知らんかった。
そして、一応僕も世界史専攻だったのに知らなくて恥ずかしいのですが、ここがめちゃくちゃ面白かったところで、
性悪説を唱えた荀子(じゅんし)ね。
この人の弟子が!
なんと!『キングダム』にも登場する韓非子(かんぴし)や李斯(りし)なんですよ!!!
この二人は法家と呼ばれ、法治国家の構築につながっていきました。
はい、法治国家!といえば『キングダム』の嬴政(えいせい)ですね!
ただ、『キングダム』では秦や嬴政が話の中心なので、法治国家が良く描かれている印象ですが、漢文では、実は秦の始皇帝やその法治国家はあまり良く言われていないように読めます。
つまり、秦の始皇帝は儒教を抑圧(儒学者を殺しまくったw)し、法によって厳しく人を罰しすぎたために秦は滅んだ。だから思いやり(つまり儒教)が必要なんだといった論調が、入試で出題される漢文ではよく見かけます。O MO I YA RI。
その後も戦乱の歴史が続き、いろいろな考え方が盛り上がったり廃れたりします。それでも、儒教が根強い中国は北方に強い異民族が控えているため、「思いやり」だけでは攻め込まれて国が滅んでしまいます。
そこで、儒教をさらに理論化した朱子学が生まれてきます。(懐かしいですね。覚えていますか笑)
朱子学は「目上の者は絶対!それが宇宙の原理なんだ!」みたいな思想です。朱子学は日本にも伝わり、目上が絶対の原理とすると統治者にとってはありがたい。江戸幕府では幕府の絶対権力を堅持するために重用されました。
一方で、中国でも朱子学は理論が強いため、民衆に受け入れられにくく、その後、陽明学という思想が生まれました。
陽明学といえば「知行合一」です。これは、知識と行為(行動)は一体であり、実践を伴わなければ真の知識にはならない、という意味です。でも、権力者からすると陽明学は面倒ですね。朱子学なら宇宙の原理として俺らに従えと言えますが、陽明学に従って民衆に行動されると困っちゃいますから。弾圧されつつも根強く受け継がれ、今でも「知行合一」という言葉は生き残っていますよね。
こんなことを一気に習った僕ですが、めちゃくちゃ面白かったです!
「え!ここがこんなふうに繋がっているんだ」という発見が次々と出てきて!もうね!これが学びの醍醐味ですよね!
今日は中国思想については以上ですが、こういった「型」があるとないのとでは、読解力に差が出てしかるべきだなと思いました。
漢文には入試問題になる前に、そもそも当然ですが、筆者がいます。筆者がどんな時代を生きどんな思想を持って、こういった文章を残したのか。どうしてそれが受け継がれたのか。
今回の生徒も、古文の世界はなんとなく同じ日本人なので分かるのでしょうか。また、日本史専攻だから、特に中国について分からないことだらけなのかもしれません。
型とは、本棚のようなものです。まず型という本棚の枠組みを作り、その中に知識という本を整理して入れていく。知識がたくさんバラバラにあっても分かりませんが、本棚があれば本が見つけやすくなる。だから、先に型を作らないと知識がバラバラで、繋がりも見つけにくいし、引き出しにくいのです。
最近「前のめりの仕事術」とはどんなものなのかを考えています。相手がだれであれ、お客さんでも、部下でも、たとえ上司でも、最初に、型を与える・共有するというのも前のめりの一つなのかも、と感じています。
ということで、今日も一日「優柔不断は誤った決定よりなお悪い」「あらかじめ○○していたら、あとで楽になる」という言葉を胸に、結果の有無に関わらず、前のめりに邁進してまいります。
■■今日の教訓(ポイント)■■
知識がないと、相手の真意が理解できない
知識があってもバラバラしていたら、
やっぱり理解できない
知識を体系的に整理した「型」をもとに
考え始めると理解しやすくなる場合がある
■■以上■■