<2021年度版>カスタマーサクセスに関する実態調査(第5弾)
こんにちは!バーチャレクスのTKです。
この記事は、2019年3月から毎年実施している「カスタマーサクセス」に関する調査の結果レポートです。先日の2021年度第1弾~第4弾に続いて、最終回となる第5弾の結果をご紹介します。
◆カスタマーサクセスに関する実態調査:2021年度版 第1弾~第4弾はnoteの「まとめ記事」からご覧いただけますので、あわせて読んでみてください。
※まずは、カスタマーサクセスって何?などを知りたい!という方は、"カスタマーサクセスの「いろは」がわかるサイト"で解説をしていますので、ぜひこちらもご覧ください!
▼CSのいろはがわかるサイト【カスタマーサクセス for Succession】▼
「カスタマーサクセスとは?」
https://customer-success.virtualex.co.jp/about.html
<第5弾 調査結果概要>
対象:第1弾の調査対象である20代から 60代の有職者21,526人のなかで、カスタマーサクセスを
「自身が担当している/社内に取り組んでいる部署、または担当者がおり、自身もかかわっている」と答えた500人に対し、カスタマーサクセスに取り組んだ上での業況への影響や、指標とするヘルススコア項目等具体的な運用、また取り組み前後での変化などについて調査を行いました。
カスタマ―サクセスに取り組む企業の半数で「事業全体の売上が向上」
カスタマーサクセスに取り組むことで「事業全体の売上向上に影響があったか」をたずねたところ、約半数が「影響があった」と回答、反対に「影響はなかった」と答えたのは12.6%でした。
「カスタマーサクセス効果を感じている(n=257)」層と、「効果を感じていない/どちらとも言えない(n=243)」層別で、直近一年での売り上げの推移を見てみると、「効果を感じている」層においては45.9%の人が新規顧客により売上が増加、また33.5%の人が既存顧客からの売り上げが増加したと回答しました。
それに比べて「カスタマーサクセスの効果を感じていない/どちらとも言えない」層においては、新規顧客獲得による売上増加は12.8%、既存顧客からの売上増加については約1割にとどまる結果になりました。
カスタマ―サクセスの取り組みを行っている企業の中で、効果の感じ方や売上に差が出てくるのはなぜなのでしょうか。その要因を探るべく、取り組み内容や施策に違いがあるのかをみていきたいと思います。
顧客にどれだけ向き合えているかを可視化し検証すること、顧客の声にどれだけ耳を傾けるかもカギ
まず、カスタマーサクセスの成果指標として定めているKPIについてたずねました。
「効果を感じている」層では、「継続率/数/額」(56%)、「解約率/数/額」、「アップセル率/数/額」(共に36%)を追っているのに対し、「効果を感じていない/どちらとも言えない」層の実に半数以上が「特に定めていない」ということがわかりました。
次に、成果指標であるKPIの先行指標として用いられるヘルススコア項目についてみてみると、「カスタマーサクセスの効果を感じている」層が幅広く様々な項目を指標として利用していることがわかります。
それに比べて「効果を感じていない/どちらとも言えない」層については34.6%の人が「わからない/特に利用していない」と回答しており、ヘルススコアへの意識の差も明らかになりました。
また、カスタマーサクセスにおいて重視される「顧客の声」をどのように集めているかを聞いたところ、「カスタマーサクセスの効果を感じている」層の実に9割以上が何かしらの方法で顧客の声を集めていることがわかりました。
具体的には、「カスタマーサクセス/営業時のヒアリング」(56%)が最も多く、次いで「ユーザー会の開催」や「(webでの)ユーザーアンケート」が4割と、手法は様々ですが、「顧客の声」を重要視していることがうかがえます。
「効果を感じていない/どちらとも言えない」層の34.2%が「特に何も行っていない/分からない」と回答する結果となり、明らかな"温度差"が存在していることがわかります。
では、その顧客への向き合い方の差が、業績の差とどれだけ関係しているのでしょうか。
「NPS」、「満足度評価」、「口コミ評価」、「継続率」の4つの指標について、カスタマーサクセス取り組み前後でどう変化したかを聞いてみると、「効果を感じている」層の満足度評価については8割強、NPSと継続率についてはいずれも7割強、口コミ評価については65%の人が「向上したと感じている」と回答しました。
「効果を感じていない/どちらとも言えない」層においては、いずれの項目も向上したと感じる人は約2~3割にとどまる結果となりました。
このように、顧客の状況・機微を定量的・定性的に捉えようとする意識や文化が明確に"数字"に良い影響を与えることが見て取れます。顧客が起こすアクションやエンゲージメント状態、ユーザー視点の要望やインサイトなどをいかに細かく拾っていけるか、そしてそれを自社の製品/サービスの改善、向上につなげていくかなどが、カスタマーサクセス効果体感の差に出てくるのかもしれません。
取り組み層の中でも、コロナ禍での新たな顧客との向き合い方やテクノロジーの活用状況から効果の差が
第3弾の調査結果において、カスタマーサクセスに取り組んでいる・取り組んでいないそれぞれの層で、直近1年で新たに始めた取り組みに大きく差が出る結果となっていました。これをさらに深掘りしたところ、カスタマ―サクセスの取り組みを行っている人の中でも、「効果を感じている」層がより積極的に新たな取り組みにチャレンジしている実態が見えてきました。オンラインチャットサポートや動画コンテンツの充実化、オンラインセミナーの開催など、テクノロジーを活用した非対面での顧客フォロー体制を整えてきたことがわかります。反対に「効果を感じていない/どちらとも言えない」層の約3割は特に何も着手したものはないとの結果となりました。
さらに、カスタマ―サクセスの取り組みにおいて活用が推奨されるテクノロジー・ツールの利用状況について聞いてみると、「効果を感じている」層の54.5%が何かしらのヘルススコア管理ツールを使っていると回答している一方、「効果を感じていない/どちらとも言えない」層の6割弱が特に何のツールも利用していないということがわかりました。指標を特に定めていない組織においては顧客情報管理が属人的になり、全社的なツールの導入に至らないということなのかもしれません。
カスタマ―サクセスには体系化・ルール化された運用が必要不可欠
次に、タッチモデル構築の有無について尋ねたところ、「カスタマーサクセスの効果を感じている」層の34.6%が構築している、30.7%が検討中、と回答しました。「効果を感じていない/どちらとも言えない」層については約3%しかタッチモデルを構築していないということがわかりました。
カスタマーサクセスを取り組むにあたって、「サクセスロードマップに応じた運用プロセス・ルール」を定めているかどうかを尋ねたところ、「効果を感じている」層の約4割がオンボーディング~アダプション~リニューアル~エンゲージメント等、フェーズに分けて運用している、また35%の人はその試験運用を始めていると回答しました。しかし「効果を感じていない/どちらとも言えない」層においては、フェーズを分けた運用を行っている/試験運用を始めているのは合わせても約2割、また約4割の人は「わからない」と回答する結果となりました。
このことから、「カスタマーサクセスに取り組んでいる」という中でも、テクノロジー・ツールの活用状況含め、コロナ禍における顧客との向き合い方や寄り添い方には、大きな差があることがわかる結果となりました。
調査結果から見る、カスタマーサクセス実践による効果創出の法則
一律に「カスタマーサクセスに取り組んでいる」とかかげていても、その運用ルールや取り組み内容を深掘りしてみると、企業によって取り組み方法・内容にばらつきがあり、その効果にも差が顕著にみられる結果となりました。
効果が表れている層に見られた傾向をみていくと、まず「データドリブン」であるかがあげられます。自社が追うべき指標であるKPIを設定し、その先行指標としてヘルススコアを定め管理する。その変化を見つつ、日々の業務の中で集まるデータを活用しながら顧客対応や施策をブラッシュアップしていく。この流れがカスタマーサクセスにおいては非常に重要です。
また顧客の反応や声を正しく拾い、サービスの改善等に活かしていくことで、NPSや満足度が上がり、それが口コミやリファラルなどのポジティブな"拡散"に繋がっていることもわかりました。
次に、積極的な「テクノロジーの活用」があげられます。データドリブンで進めるためには不可欠となるテクノロジー・ツールですが、非対面での顧客対応が避けられない今、テクノロジー・ツールの"力"を最大限に活かせるかどうかが重要だということがわかりました。
最後が、「タッチモデルの構築やフェーズ定義など、運用ルールに即した取り組みの実施」です。部署横断で共有できるルールの作成や運用における定義づけを行うことで、属人的になることなく、効率的かつ全社として一貫性の取れた対応が可能となります。これにより、いつ・誰が対応しても同質以上の価値を顧客に提供できるようになり、自社カスタマーサクセスレベルの底上げに寄与するといえます。
こまごまとした取り組みや運用方法の違いでその効果の差が歴然
今回の調査では、「カスタマーサクセスの取り組みを行っている」人たちの中でその効果を体感できている・できていない差はなぜ生まれるのか、その理由を詳しく見てみました。カスタマーサクセスがただのバズワードではなく、自社の事業を成功に導く需要戦略であるということも改めて明確になったと言えるでしょう。
カスタマ―サクセスの取り組みを始めるにあたって、組織的にまず「アート(=思想・哲学)」を最初に正しく掲げることは非常に重要です。社内での意識統一、向かうべき方向の目線合わせができていない状態で取り組み始めてもうまくいきません。そのアートとしてのカスタマーサクセスを正しく掲げたうえで「サイエンス(=仕組み)」としてのカスタマーサクセスを行っていく、この二つを両輪で進めていくことが「カスタマーサクセスの取り組み効果を生む」ためには必須です。
カスタマーサクセスの実務的なノウハウや事例などが国内でも少しずつ情報としてあがってきているものの、ただそれらを真似てやみくもに業務を行っているだけでは正しく成果は上がりません。また、「カスタマーサクセス」という言葉を「カスタマーサポートの延長」として捉えただけの総花的な活動でも、同じく成果は上がりません。
部門横断横並びでテクノロジーやデータを上手く活用し、追うべき指標を正しく設定、そしてそれら指標に対してのアクションを明確にしてプロアクティブに動いていくことが求められますが、その一連のルールやアクションは自社にカスタマイズされたものでなければなりません。この施策を打てば必ずうまくいく、この指標は絶対必要、そういった必勝法は存在しないため、必ず各社の顧客のペルソナや製品/サービスの特性に合わせたサクセスジャーニーを描いたうえで指標や施策を決めてく必要があります(カスタマーサクセス0.0)。運用ルールが決まれば、テクノロジーを活用しつつ効果的に施策を打っていくことで顧客のチャーンを防ぎ、リテンション率を高め(カスタマーサクセス1.0)、既存顧客からの更なる売り上げやリファラルなど(カスタマーサクセス2.0)に繋げていく。この一連のフローを作るためにも、「正しいカスタマ―サクセス運用設計」が重要となってくるのです。
この先もまだまだ不確定な要素が多い時代が続くことが予想されますが、物理も含めた顧客との向き合い方については確実に変革が求められます。これまでと変わらない動きをしていては、顧客はどんどん離れてしまうでしょう。
いかに顧客の要望に先回りし、先手を打ったアクションを打って顧客をつなぎ留め、満足させ続けることができるか。そしてその仕組みをいかに社内で確立していくか。変化の激しい今の社会において、こうした取り組みの差が企業の業況の差にも大きな影響を与えていくことでしょう。
【調査実施概要】
「2021年カスタマーサクセスに関する調査」
・調査方法 :インターネットアンケート
・調査実施期間:2021年2月19日~2021年2月22日
・対象地域 :全国
・対象者 :20代から 60代の有職者(パート・アルバイト、専業主婦・主夫、学生を除く)24,274人
おわりに
「カスタマーサクセス実態調査/2021年度版」を第1弾~第5弾まで、5回にわたって調査レポートを公開しました。
同調査を始めて3年目となりますが、「カスタマーサクセスを取り組んでいる企業」と「取り組んでいない企業」では事業売上にも変化があらわれる程となり、顧客と伴走し続けるために、カスタマーサクセスを企業として理解し、自社にあった形を追求しながら進み続けることの重要性がわかった結果となりました。
バーチャレクスは、今後も「カスタマーサクセス」の認知度や取り組み企業の実態などをモニター・分析し、継続的に情報発信をしていきたいと思います。
また、バーチャレクスでは、「カスタマーサクセス」をより多くの方に知っていただくために定期的にオンラインセミナーも開催しています。
近々下記のウェビナー(オンライン)を予定していますので、ぜひお気軽にご参加ください!
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▼【11月24日(水)13:00- 開催 カスタマーサクセス共催ウェビナー】
経営層が理解しておくべきDX時代の顧客との向き合い方
〜そのカギを握るカスタマーサクセス〜
不確実性が高まる中で企業が求められる"トランスフォーメーション"。その中で「顧客との向き合い方」を変えることの重要性も一層ましており、その動きは、顧客起点化を推進することで継続的に顧客を維持し、提供価値を最大化することが可能となる、という「カスタマーサクセス」の考え方に集約されています。
現代において企業はどう変化すべきなのか、毎年実施している「カスタマーサクセス実態調査」結果をご紹介しながら、企業の実態と今後の進むべき方向性について、アイティクラウド社と一緒にお話していきます。
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