【詩】日向
日向
灰色のカーテンの向こう側には窓などないと誰もが薄々気づいている密室で
通気口が
夕方の外気を
陽光がわりに差し入れる
風通しの良すぎる密室
自分のことを広大な空だと思い込んでいる天井
「歩行者」たちは
誰にも見せたことのない美しい靴底を
まるで大地であるかのような
床にへばりつけている
饒舌な外気
せめてもの夕方らしさ
まがい物の陽光は
灰色に染まることを
何もかもに強いている
壁の隅まで塗りたくられているはずの
無意味な
不可視の塗料
「歩行者」たちの
陰鬱な日向ぼっこ
すべての灰色の皮膚が
いかにも密室らしい淀んだ空気に
さらされることを望んでいる
夕方の外気で敷き詰められた密室
通気口以外に何もない
灰色のカーテンの向こう側