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サラバ、自己啓発本

家にある自己啓発本を売った。

今、棚の中は隙間だらけで、寂しそうに残った本が傾いている。
首を傾げながら本棚を見つめる。
『次は、どんな本が入っていくのだろう?』
と思った。

元々、自己啓発本は嫌厭しているタイプだった。
読み始めたのは社会人になってから。
生き方、メンタルコントロール法、コミュニケーション法…etc
仕事がうまくいかず病んだ時、無我夢中で読んでいた。
「死にたい」「自分なんて居なくなればいい」と思うほど、仕事ができない自分が嫌いだった。
「私は、そもそも、この仕事に向いてなかった」
と何度も突きつけられる度に、自分の存在全てを否定されている気がした。
この仕事に誇りを持っているからこそ、見合わない自分が許せなくて。
「できない」ことは悪だと思い、誰にもそんな気持ちを打ち明けることができなかった。
なんとか上手になりたくて、自己啓発本に救いを求めた。
深夜、休日、心休む間もなく勉強し続けた。
縋るように、一人、必死に。

何故もっと人に頼らなかったんだろうと思う。
もっと人に弱味を見せて、できない自分を受容してあげればよかった。
あの時は出来なかった。
今では、メンタルが不調になると、noteに書き出したり彼に相談したりする。
職場の人にも『失くし物をよくする』『コミュニケーションが苦手』ということを言えるようになってきた。
仕事における命題も、上手にするというより、いかに誠実で謙虚でいれるかということに重きを置くようになってからは、少し楽になった。
そして、仕事を上手くやっているように見える人は、血の滲むような努力や、周到な準備をしているということが徐々に見えてきた。
それこそ、向いている/向いていないということが問題にならないほどに。
そんな努力も準備もできていないのに、『自分はこの仕事に向いていない…』なんて落ち込むのは甘えていたなと思う。


でも、五里霧中を無我夢中に進むような、あの時があったからこそ、今の自分があるとも思う。
もう自分を痛めつけながら生きていかなくていい。
常に切羽詰まった思いを一人で抱える必要は無い。
私には、貴方という絶対的な味方がいる。
貴方のいる人生にピントを合わせれば、私の幸せは保証されているから。


自己啓発書を売る。
それは孤独な私との訣別でもあった。

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