トレンド調査では、3つの視点(天候 / 人々 / 環境)の調査が重要
こんにちは、VUの伊藤です。今日は僕たちが仕事で使用しているメソッドについて解説してみたいと思います。
今日ご紹介するのは、トレンドスクレイピング(trend-scraping)という手法です。この手法は、事業開発からデザインリサーチ、webデザインからブランディング、パーパス策定まで、あらゆる基本となるリサーチの手法です。トレンド(trend)の先端を削り取る(scrape)、ことからこの名前がついています。
特に我々は未来のニーズ探索、もっと言えばデザインリサーチや新規サービス開発、新規事業開発のプロジェクトにおいて活用しています。
具体的には、特定の領域でアイデアや機会領域を探す際に用います。例えば、あなたが心のケアにまつわる領域や市場でなにか新しいサービスをつくろうとしたときに、様々な事例を調査すると思います。
注目されているサービスやスタートアップ
日経などのメディアでのテーマに対する特集
業界紙による、最新の研究開発の事例
どれも重要な情報ですね。しかし、このような悩みをもっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
集めたはいいものの、まとめるのに苦戦する
業界情報ばかり探してしまい、結局どこかで見た事例のトレースになってしまう
新しい発見がなかなか導き出せない
これらの課題に共通するのは、トレンド調査を単なる事例調査として行ってしまっている点にあります。あくまで僕の考えですが、トレンド調査と事例調査は別物のリサーチだと捉えています。
世間的に言われるトレンド調査をしたいというご相談を受けた際に、私は以下のような分類を案内しています。
産業単位での先行事例調査
対象市場における現在の概況調査
特定領域の現況を形成した経緯の調査
対象市場における、先進兆候(未来のニーズ)の探索
などなど。他にも色々とありますが、ざっくり言うとこのくらいあります。
ので、トレンド調査といっても広く、特にどこが目的なのかによって選択するアプローチが違いますし、トレンド調査するにも、どのような点を調査スコープとするのかが異なってきます。
ただ、単なる事例調査とか、現在の概況、経緯の調査みたいなものについては、様々な専門家の方がやりかたを解説してくれているので問題ないかと思いますが、最後の先進兆候の調査についてはやり方があまり解説されていないように思います。
そのため、今回は私たちが日頃のプロジェクトで使用している、未来を探索するためのトレンド調査の手法について、ご紹介します。
3つの視点(天候 / 人々 / 環境) を抑えよう
対象市場における、先進兆候、すなわち「次に何が来るのか?(what’ next)」を考えることは、難しいのですが、考え方自体は割とシンプルだったりします。それは3つの視点抑えることです。
私はそれを「天候 / 人々 / 環境」で説明しています。それぞれについて簡単に説明すると、天気が政府の動向や法律規制などのマクロ動向、人々が私達の周りや対象とする顧客の人々の間で発生している流行や消費行動、そして環境がその領域において存在しているサービスや技術などを指しています。
図で考えると、以下のようなものになります。
なぜこの3つの視点は、人の意思決定の仕組みや社会構造の観点から考えています。例えば、わたしたちが「〇〇したい」と思ったとき、すでに存在している選択肢の中で吟味し、消費を行います。(ここでいう消費は広義の意味で捉えてください)
そして、その選択肢を提供しているのは企業だったり、そのもとになっている技術だったりが影響しています。さらには、そもそもの〇〇したい、という欲求もその人が身を置く環境や文脈によって形成されます。
ちょっとわかりにくい言い方かもしれませんが、需要と供給は相互に関係しあいながら、ニーズと解決策を相互に提供し合っています。企業は人々のニーズをもとに製品を開発するし、新しい製品による新しい生活習慣の中で、新たなニーズを生んだり、既存のニーズが変化したりします。
このような関係性が、人々と環境の間に成立しています。またその一方で、天候=政府などのマクロ動向も、それぞれ人々と環境に大きな影響を及ぼしています。
たとえば、金融領域などは顕著ですが、規制緩和によってこれまでできなかったサービスや製品を企業が提供できるようになり、その結果として新たなニーズが人々の中に生まれます。
また、その一方で既存のルールや規制の中で人々のニーズが解放/抑圧されることもあります。晴れや雨みたいなものは、一見何てことないように見えて、私達の生活に大きな影響を与えているのと同じだと思ってもらうとわかりやすいかもしれません。
未来を想像するために
ちょっと長くなってしまいましたが、未来を探索する際には上記のような考え方に基づいて調査をしていくのが大事です。まだ製品にはなっていないけれど、現在開発中の技術がやがて未来の製品となる可能性があります。また一部の人々の中で生まれている新しい行動や価値観がやがて大きな規模になっていき、そこに対する解決策を提供した企業によって、新しい市場が顕在化するかもしれません。
逆に今ある市場が、人々の変化の中で小さくなっていったり消えていくこともあります。さらには天候の変化=政府の規制緩和や国の予算の割当によって、新しい消費行動が促されたり、特定の技術開発が進むこともあります。
まとめると、あなたが検討している領域において「これから何が起きるか?」ということを考えるために、そのためにトレンド調査を行うときは、3つの視点に基づき「直近でどんな変化が起きているか」「その変化がそれぞれのファクターにどのような影響を及ぼすか」を考えていくことが重要です。
闇雲に最新のスタートアップのみを調べたり、ソーシャルリスニングでSNSの流行だけを追ったり、政府動向を調べるだけでもダメなわけです。それぞれをバランス良く調べながら、その特定領域のゲームルールがどのように変化するのかを観察して想像することが重要です。その業界の第一人者がなぜ未来を見えるのかというと、これらの情報が備わっているからです。
最後に
と言うことは非常にかんたんなのですが、実際にやるのはとてもむずかしいです。言うは易しというやつで、まんべんなくリサーチするのは骨が折れる行為ですし、場数を踏まないと「何が変化のファクターか」を考えることは難しいといえます。
さらには、ちゃんと満遍なく調べても、経験値に基づく想像力がないと身も蓋もない結論に至る可能性もあります。ので、どうすればって話はパートナーを見つけて、外部視点を入れながら着実に取り組みましょう、としか言えません。
ただ、ちゃんとやれば、今までになかった気づきや新しい事業機会にたどり着けるかもしれませんので、面倒だとは思いつつも、まずは手を動かしてチャレンジしてみることが重要です。どうしても自社でできない!時間もない!というときは、ぜひ私たちにご相談ください。