ビジュアル・ファシリテーションとは何か? 絵が苦手でもできる理由
こんにちは、楽描人カエルンです。今回は、会議やワークショップで使えるビジュアル・ファシリテーションという手法について紹介します。
ビジュアル・ファシリテーションとは
ビジュアル・ファシリテーションとは、参加者の発言や意見を写真やイラストや図解などに変換して可視化し、共有することで、コミュニケーションや理解を促進する手法です。以下の写真は、ビジュアル・ファシリテーションの一例です。
この写真では、参加者が付箋に書いた意見や感想を壁に貼り、それらを色分けや矢印などで関連付けています。また、ファシリテーターが参加者の発言をイラストや図形で表現しています。これらのビジュアルは、参加者同士の対話や共感を促しています。
ビジュアル・ファシリテーションのメリット
ビジュアル・ファシリテーションには以下のようなメリットがあります。
直感的:ビジュアルは言葉よりも伝わりやすく、関心や注意を引きます。
感情的:ビジュアルは感情や感覚にも訴えて、モチベーションやエンゲージメントを高めます。
共通認識:ビジュアルは抽象的な概念やイメージを具体化して、共通認識や共感を生み出します。
分析力:ビジュアルは全体像や関連性を一目で把握して、分析や洞察を促します。
記憶力:ビジュアルは記憶に残りやすく、学習効果や行動変容を促します。
ビジュアル・ファシリテーションの方法
では、実際にビジュアル・ファシリテーションをする場合にはどうすればいいのでしょうか。ここでは、「デザイン思考」という手法を使って、「イノベーション創出」の目的でビジュアル・ファシリテーションを行う例を紹介します。ただし、この例は一つのパターンに過ぎません。他にもさまざまな場面や目的でビジュアル・ファシリテーションを使えます。
デザイン思考とは
デザイン思考とは、ユーザーのニーズや課題に寄り添って、観察・共感・定義・発想・試作・評価という6つのステップで新しい商品やサービスのアイデアを生み出す手法です。デザイン思考は、ビジュアル・ファシリテーションと相性が良く、よく組み合わせて使われます。
ビジュアル・ファシリテーションの準備
ビジュアル・ファシリテーションをする前に、以下のことを準備します。
目的:新しい商品やサービスのアイデアを生み出す
プロセス:デザイン思考の6つのステップに沿って進める
素材:紙、ペン、付箋、マーカーなど
ファシリテーター:デザイン思考に詳しい人
参加者:商品やサービスの開発に関わる人
ビジュアル・ファシリテーションの実施
ビジュアル・ファシリテーションを実施するときには、以下のように進めます。
ファシリテーターは、目的やプロセスや素材や役割を説明し、参加者に質問やフィードバックを促します。
参加者は、ビジュアル・ファシリテーションに参加することに同意し、自己紹介をします。
ファシリテーターは、参加者の自己紹介をビジュアルに変換し、可視化し、共有します。たとえば、参加者の名前や役割や興味などを記入したカードやバッジなどを作ります。
ファシリテーターは、ビジュアル・ファシリテーションの実施に入ります。各ステップで、参加者に課題や質問や指示を出し、発言や意見を促します。参加者は、発言や意見を述べます。ファシリテーターは、発言や意見をビジュアルに変換し、可視化し、共有します。
ファシリテーターは、ビジュアル・ファシリテーションの終了を宣言し、参加者に感謝と拍手をします。
ビジュアル・ファシリテーションの例
ここでは、ビジュアル・ファシリテーションの試作と評価のステップで作成されたプロトタイプとフィードバックの例を紹介します。
この例では、ユーザーのニーズや課題に応えるために、「スマートミラー」という商品のアイデアが生まれました。スマートミラーは、鏡に映った自分の姿にさまざまな情報や機能を表示することができる商品です。たとえば、天気やニュースやスケジュールなどの情報を見ることができたり、メイクやヘアスタイルなどのアドバイスを受けることができたりします。
この商品のプロトタイプは、紙とペンとマーカーと鏡で作られました。プロトタイプをユーザーに評価してもらった結果、以下のようなフィードバックが得られました。
良い点:便利で楽しくて使いたいと思う。自分の好みや状況に合わせてカスタマイズできる。操作が簡単で直感的。
悪い点:個人情報やプライバシーが心配。鏡が汚れたり割れたりしたらどうなるか。電源やネットワークが必要か。
絵が苦手でも大丈夫な理由
ビジュアル・ファシリテーションに興味があるけれど、「自分には絵が描けないと思っている方も多いかもしれません。しかし、実はそんな心配は必要ありません。なぜなら、我々はもともと絵を描くための能力を持っているからです。
絵を描くための能力を持っているという根拠は2つあります。
ニューロン・リサイクル仮説
ヒトはみな同じ文字を書いている
前者は、人間が読書できるのは「もともと別の機能があった脳の領域をリサイクルした」からと示す研究結果です。この研究では、人間の脳は本来、自然界に見られる形や色や動きなどを視覚的に処理するために進化したものであり、それらを組み合わせて新しいイメージや記号や文字を作り出すことができることが示されています。これは、絵を描くことにも応用できる能力です。
後者は、ヒトはみな同じ文字を書いているという主張です。この主張では、人間の文字は、自然界に見られる形や色や動きなどに基づいて作られたものであり、それらは人間の視覚システムに適応していることが示されています。これは、絵を描くことにも関係することです。
これらの根拠からわかることは、絵を描くことは人間にとって本能的なことであり、誰でもできることです。もちろん、絵を上手く描くためには練習や技術が必要ですが、最初の一歩としては、自分の視覚的な感性や想像力を信じてみることです。
ビジュアル・ファシリテーションをする場合には、最初のうちは絵をかくことに苦痛を感じるかもしれません。しかし、これは慣れの問題です。慣れていくことで、参加者の発言や意見をビジュアルに変換して可視化し、共有できるようになっていきます。紙やペンや付箋やマーカーなどのツールを使うことを当たり前にする。そこからはじめてみてはいかがでしょうか。
以上のように、ビジュアル・ファシリテーションは誰でもできる手法です。ぜひ一度試してみてください。きっと新しい発見や感動がありますよ。
以上、楽描人カエルンでした。ありがとうございました。
参考文献
楽描きが世に浸透するための研究のための原資として大切に使います。皆様からの応援をお待ち申し上げます。