24時間営業!?台本印刷のスペシャリストたちに聞く![前篇]
映像制作現場で使われている「紙」についてお話を聞くシリーズ第二弾です!
制作現場とは切っても切れない「台本」は、どのように作られているのか?
台本を中心としたアニメや実写の映画、ドラマなどの制作現場で使われる印刷物を専門に制作されている株式会社三交社のお二人に、お話を聞いてみることにしました。
※所属・肩書は取材当時のものです。
第一弾・アニメ制作現場で使われる「紙」、その魅力と課題とは?はこちら
―三交社が台本印刷をメインの事業にされたのは、どのような経緯からなのでしょうか?
増きららさん(以下:増) 創業者が一般の印刷会社の中で台本印刷の部門にいて、当時懇意にしていただいていたテレビ局で現在もご活躍のプロデューサーからアドバイスをいただき、24時間営業で対応する台本に特化した印刷会社として独立しました。
脚本は深夜に書き上がってくることも多く、翌朝からの撮影に対応するには24時間営業でやってほしいという現場の声があったようです。
山本麟太郎さん(以下:山本) その当時は手書きの原稿だったので、活字に起こす作業をする人がいたと聞いています。向田邦子先生の直筆の原稿を扱ったことを誇りにしている社員もいたそうです。
―一般的な印刷業と比べて、台本ならではの独特な部分はどういったところでしょうか?
増 やはりスピード感が全然違うなと思います。データが入稿されて校正が戻ってきて、印刷して梱包、納品までが一般的には3日から1週間ほどが多いと思いますが、台本の場合は「明日まで!」とか「今日中にお願い!」みたいなこともあったりするので、エンタメ業界ならではだなと思います。
―当然、脚本家としてはギリギリまで書いていたいでしょうし、現場は撮影の準備を早くしなきゃいけないでしょうし…
増 そうですね。
―クライアントの制作会社とは、どのようなやりとりがあるのでしょうか?
増 台本には決まったフォーマットがあるのですが、原稿の段階ではその形になっていないので、弊社で台本として形にします。その際のレイアウトにこだわりのあるお客様も多いので、意思疎通に苦労することもあります。
山本 今はWordの原稿だったりレイアウトしたPDFのようにデータで確認していただくのが主流ですが、やはりデータで見るのと紙に印刷されたものを見るのは違うんですね。文字の校正でも、データでは見落としてしまったミスを紙だと見つけられることもあるので。それをこの業界のスピード感の中で、いかにコミュニケーションを取りながら進められるかが勝負なのかなと思います。
―クライアントはどのようなところにこだわられるのでしょうか?
増 改行の位置にこだわられることが多いですね。「ここから始めてほしい」とか、「ここは見開きで」というご指示です。「現場の人がこの方が見やすいから」「この人はこの方がいい」とか、関わる方によって違ったりするんですね。
山本 テレビ局ごとに特色があったり、組(制作スタッフのチームのこと)によっても違ったりします。
あとは脚本家によっては、ルールが決まっている方もいらっしゃいますね。そういう方の場合は、「この人の脚本ならこういうレイアウトで作りましょう」というルールが弊社では存在しています。
―たしかに現場で、大事なところの途中で「次のページにめくらなきゃ」となると煩わしくなりそうですね。
山本 そうですね。1ページに何行まで詰めるかなど、いくつかパターンあるのですが、それでも場合によっては変形させたりすることもあります。そのあたりが先程申し上げたような、意思疎通を大事にしなければいけないところで、そこは三交社が徹底しているところかなと思います。
―お仕事の中でやりがいを感じられるのはどのような時ですか?
増 自分が手掛けた台本(の作品)が世に出て、それが人気になると、やりがいも誇らしさもあります。「この作品の台本を納品したぞ!」と思うとやっぱり嬉しいですね。
山本 僕らは制作スタッフの方々とはあくまで印刷会社という立ち位置でのお付き合いなんですけども、番組のプロデューサーだったり、監督だったりという方々と直接お話しする機会も多いです。納品に行った時など、その現場の熱量や、どれくらい大変なのかということを見ているので、自分の担当するクライアントへの思い入れが強くなります。テレビだったら放送が、映画だったら公開が楽しみになりますね。
―エンドクレジットで三交社の名前を見ることも多いですね。
山本 ありがたいことに載せていただいていることも増えてきましたね。
―台本以外にも、映像関係の印刷物で手掛けられているものはあるのでしょうか?
増 小道具の印刷物を作ることが多いです。作品内に登場する(架空の)雑誌や絵本などです。学園ものだと、教科書などもありますね。
山本 作品に登場する札束とかもですね。
オンデマンドで少量から印刷でき、24時間動いていて、現場に配送するルートがあるのが弊社の特色なので、台本印刷と一緒に「これもできないか」という相談をいただきますね。
―時代の流れとしてはペーパーレス化も進み、電子書籍も一般的になってきたと思います。台本はまだ紙の方がいいのでしょうか?紙ならではの利点はどのようなところでしょうか?
増 デジタル化の波はもう確実に来ていますが、やはり紙の魅力すぐに書き込める点かなと思います。制作現場では流動的に変わっていくことが多いと思うんですが、タブレットだと起動するとか、何か動作を一つ挟まないといけないんですけど、紙だとパッと書き込めるので、そこは現場との相性がいいんじゃないかなと思いますね。
あとは曲げられるというのは大きいんじゃないでしょうか。現場の皆さんは丸めてポケットに入れますから(笑)その使い勝手の良さはやはり紙ならではの魅力だと思います。
山本 10年前に比べたら明らかにデジタルデータで作業する現場は増えていますが、完全に紙がゼロになっている現場はほぼないのではないでしょうか。デジタル化を進めたけど「やっぱりこの部分は紙が必要」とか、逆に完全にデジタル化してみたけど「ここは紙に戻そう」という話も聞きます。
そして、作品制作が終わった後、台本や紙資料はどのように扱われるのか?というお話もお聞きしました。
持続可能な社会のために、「消費するだけではない」作品制作を![後篇]はこちら
「捨てたくない! でも残しておけない! アニメ制作で使われた紙をもう一度使いたい!」
Makuakeにてプロジェクト実施!
運営:株式会社バリュープラス
実施期間:2024年8月21日(水)11:05 ~ 2024年11月17日(日)22:00
目標金額: 500,000円
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