みせとものときろく 長谷川商店
はじめに
夏ですね。今年はもう、、暑すぎて、梅雨があったからどうかも記憶がないぐらいですよね。
日中は地獄の業火に晒されて、命の危険を感じる暑さに震える毎日。
そんな夏こそ、昼間は家でゆっくりして夜を外で全力で楽しむのはいかがでしょうか?
お供はもちろん花火!…ですよね!
今回は東京浅草橋にある老舗花火問屋にして、花火コーディネーターとして日本一・いや世界一花火を販売し、玩具花火の構成・イベント企画に長けた長谷川商店様を取材させていただきました!
9月末までは毎日休まず営業!コンビニやスーパーで買うセット売りはそろそろ卒業して、国産の花火を完璧なコーディネートで楽しむ特別な体験を是非!
長谷川商店のご紹介
公式HP
https://www.21hasegawa.jp/hanabihtml/hanabi_kind.html
Instagram
https://www.instagram.com/hasegawasyouten/
ミニ花火大会 / 花火コーディネーター
配置・演出方法・点火順まで全ての行程を完全オーダーメイドでコーディネート
ミニ花火大会についてのお問い合わせは、ぜひ一度当店までご来店ください。遠方の方はメールや電話/FAXなどでもご相談に応じます、お気軽にどうぞ!
mail:info@21hasegawa.jp
tel: 03(3851)0151
fax: 03(3851)0153
Chapter1. 原点
神谷:コロナも落ち着き、花火の需要も少しは戻ってきているかと思います。長谷川商店といえば花火コーディネーターかと思いますが、今年の状況含め教えてください。
長谷川:だいぶ戻ってきたけどコロナ前ほどとまではいかないね。花火コーディネーターだけど、何を買うか迷う人がほとんどだからそういう人に向けてのサービスでやっているんだよね。
今日も6歳の子供20人ぐらいに何をやらせればいい?って相談があったんだけど、そういう時ってまずみんなセットを見ようとする。
うちは正直に言ってセットは否定派。中国生産の安物を外装でよく見せていたり、お客様を騙そうとしていているようなことは花火業界全体をダメにするから。
面白い花火はたくさんあるし、セットでは買わせたくない。
神谷:実は私も数年前から夏になったら長谷川商店さんで花火を買わせてもらってます。自分自身が花火で有名な愛知県岡崎出身ということもありますが、やはり国産花火に愛着がありますし、実際に美しさも持ちも全く違いますよね。
花火コーディネートにはどういった方々の依頼が多いのでしょうか?
長谷川:多いのは団体さん。6月中旬の幼稚園行事に始まり、7月は林間学校系、そこから町内会や老人ホーム。コロナの影響で担当者が変わっていることもあってコロナ前は毎年変わらず依頼してくれていた先もまだ戻っていなかったりもする。何年か先にならないと完全には戻らないかな。
PTAとか親と子供どっちが子供かわからないぐらい親が楽しんで、みんな笑顔になる。
構成・演出まで全てレクチャーすると、最初不安そうだったお客さんの目がどんどんキラキラ光ってくるんだよ。それでもう成功。お客さんも本番やってみて癖になる。
無料でコーディネートしているのは大きなお世話だから。もちろん、自分で好きなものを選んで買いたい人はそうしてもらったらいい。
※花火の代金は勿論必要
神谷:花火コーディネートを始めたキッカケを教えてください。
長谷川:父の時代に町会から花火を選んでほしいと言われたのがキッカケ。最初は床に花火を順番に並べて、こんな感じでどう?ってやってたんだよね。それを卸用の伝票に最初から最後までの流れを書いて渡す。それが原点だね。
だから根本からサービス。大きなお節介だから今も無料でやっているんだよ。
それが2000年代になるとノートPCを買って管理し始めて。翌年から本当に楽!(笑)前の年の構成を見ながら依頼額によって商品を入れ替えたりするようになった。
当時は景気が良くてね。1シーズンで1700件の依頼があったよ。ヒアリングから含めると一組一時間かかる。それを2名でやっていたから大変だったね。
花火コーディネーターという名称も、ワインが流行った時にはソムリエとか紆余曲折を経てたどり着いたんだけど、これが言ったもの勝ちで面白いぐらいメディアが釣れたよね(笑)
Chapter2. 特徴
神谷:花火コーディネーターで注目された結果、他の店が真似されて困ったことはないんですか?
長谷川:もちろん真似されたけど他はセット売りなんだよ。うちは完全フルオーダー。だから一度ウチを使ってくれたら100%リピートしてくれる。
花火屋もだいぶ淘汰されたけどね。
神谷:そもそもお父様の頃にそういったサービスができた土壌はあったのでしょうか?
長谷川:それは自分が花火屋の倅(せがれ)で、幼稚園・小学生の頃から雨が降っても雪が降っても花火で遊んでいたのが大きいかな。
中学生・高校生になると花火屋の看板を背負っているからやり方・魅せ方・裏技だったりを周りに教えてね。
大学生ぐらいになるとグループで海にナンパしに行って、自分ともう一人で花火の準備する。あちこちで花火をやっている中で花火屋の倅として絶対に負けるわけにはいかないじゃん。
自分が花火を楽しむというより花火で喜んでいる人の顔が見える。その楽しさが花火コーディネートの原点かな。
神谷:結局そういう経験が一番強いですよね(笑)
長谷川:喜んでくれる顔がメイン。大きな花火大会って誰がやっているかよくわからないよね。
「PTAならお父さん達が主役だよ。どう魅せるのか、だからカッコよく動くのよ。ダラダラしてたらダメ」ってよく言うんだけど、そういうところも全て繋がってる。
お客さんも代が変わっても繋がっていく。昔、大学のサークルで来てた子が結婚して子供できて幼稚園で花火やるからお願いしますって。それが嬉しいよね。
それこそ今日来てくれた中でもう子供がいる常連がいるんだけど、その彼は学生当時「好きな女の子を落とすのに花火大会をして告白したいんです。」って相談を受けて、結果的にその時の彼女が今の奥さんだったりする。
それ以外にも知床の小学校から依頼を受けて、卒業するして知床を離れなきゃいけない6年生のためのミニ花火大会を企画したり。
思い出の手伝いを花火ができているかなと思うよね。
神谷:このお店でドラマが生まれているんですね。
Chapter3. 伝える工夫
長谷川:そもそも火を使って火薬で遊んでいるのは日本人しかいないんだよね。他の国だと魔除けとかが目的で、こんなに種類はない。
だから、線香花火やって侘び寂び感じて、匂い・音。それを感じるのは日本人だけ。
だから玩具花火っていう概念があって、法律で火薬の量とかが決まっているのは日本だけ。アメリカでも中国でも規制がないからなんでもありになっちゃう。それが玩具花火のいいところで日本人の心にあるんだよ。
これも言ったもん勝ちなんだけど、そうなるとうちは日本一じゃなくて世界一だよね。って話はお客さんとするよね。
神谷:昨今は外国人旅行客もだいぶ戻ってきているように思いますが、こちらにもいらっしゃいますか?
長谷川:海外からはあまり来ないかな。見には来るけど自国に持って帰れないしどこでやればいいかわからないからね。近隣のホテルと支配人とフロントで売って、駐車場とかでやればいいんじゃない?って話はしているよね。
最近は花火ができる場所も少なくなったからね。バブルの頃はスキー場とかでもやったもんだけどね。冬の方が空も綺麗だしね。
神谷:場所が限られたり、玩具花火を気軽に楽しむ難しさは近年増しているように感じます。
長谷川:一時期から花火が悪者になってしまったんだよね。20年以上前かな。二子玉川で花火が禁止になった頃。報道番組が取り上げるようになってから風向きが変わった。
一部の危険な花火遊びも勿論原因だけど。なんか取材減ったよね。って。
神谷:私が今36歳ですが、確かに小さい頃と比べて花火ができる場所が限られてきたなって実感はあります。
長谷川:若松屋って花火メーカーが"花火で遊べる場所・花火を買える場所の検索アプリ"の「Hanabi-Navi」を作ったりはしているんだけど、
長谷川:でもうちは10年ぐらい前かな。音と煙のマークを統一で作ろうって提案したんだけど、やれ基準がどうだってなかなかまとまらなくてね。その後も高さ・広がりのマークも始めたよね。
明らかに今のお客さんは煙が立たない、高さが出ないことを意識しているんだよ。聞いてくるお客様が少なからずいるしね。
通販・オンラインだとそこまで気にしないよね。それに比べてうちは実際にお客さんの声を聞いているからそういうことをやろうとなるんだよね。
さらに最近だと噴出花火ならそれがわかるデザインだったり、YouTubeに飛ばすQRコードをプリントしたり工夫はしているよ。
今の人は確認したい。後悔したくない。たいした事ないなって言われたくないみたいだからね。玩具花火も内容が見えないといけない時代が来るなって思ってたからその通りになってきているよね。
神谷:確かに昔はこういう表示はなかったですよね。
長谷川:昔は隅田川で常連のお客を集めて品評会をやったりしていたんだけどね。
Chapter4. ビジョン
神谷:品評会的なものは今でもイベントとして成立しそうですけどね。
長谷川:やろうとは思っている。30代の子達が地元で開催するイベントに手持ち花火を持って行って、花火をやったことのない子供達に「花火教室」って形で花火の危険さも含めて伝えていきたいし、それが何年か続いて行った先にコンテストっていう形式でメーカーに新商品を出させて品評会ができたらね。
花火をやった事ない世代が出てきている中で何もしないわけにはいかない。
このお店に並んでいる全ての花火に音・煙・高さ・広がりのマークとQRコードが付いていたら今よりどれだけ選びやすいのよ?って話だよね。
日本で一番花火売っているのはウチの店は、お客様が何を求めているかが一番集まっているんだからメーカーも店頭に立ってみて。とは言っているんだけどね。なかなか伝わらないな。
ひと夏で50-100本しか売れない花火をウチだったら5000本とか売るんだから間違えないんだけどね。
神谷:この先、花火はどういった方向に進化していくと思われますか?
長谷川:コロナを見て思ったのは、音もしないゴミも落ちない花火ってなると花火は要らなくなっちゃう。だからさっき行ったように少し多くの場所で花火ができるように。もう一度、それを教えてあげないといけない。戻さないといけないよね。そのために花火教室だったり場所の確保を進めていきたい。
日本中で花火を買うって人がうちのお客様になればいいよね。一回使ってみてって思うよね。
Chapter5. お店の象徴
神谷:お店を象徴する商品を教えてください。
長谷川:そういう意味ではオリジナル花火だけど、その中でも「碧火(ひゃっか)」は花束状に打ち上がった後、青い星がさく裂する華やかな打ち上げ花火で、息子の名前から取っているから思い入れが強いね。
今だとサッカーの田中碧がいて、うちの息子より2年ぐらい年上かな。当時はこの漢字を「あお」って読ませることはなかったから、田中碧のお父さんはすごいと思うよ(笑)
Chapter6. メッセージ
神谷:最後にこれから長谷川商店さんにいらっしゃるお客様にメッセージをお願いします。
長谷川:花火はそこらで売っているセットだけじゃないんだよと。日本の職人が一生懸命作っている花火を一度やってみて欲しいね。
神谷:休みなく営業されてお疲れの夜分にありがとうございました。
編集後記
日本人なら誰しも楽しんだことのある花火。そんな時代も今は昔。なんでしょうか?
長谷川さんのお話を伺い、花火の可能性と共に業界全体の課題の根深さを感じました。
結局、最後は選ぶ我々消費者側が決めること。安かろう悪かろうな中国製を手軽にコンビニなどで購入するのか。少し移動が大変でも長谷川商店さんのような専門店で一本一本考えて、本気で楽しむのか。
日本独自の玩具花火文化が途絶えず、進化していけるかの瀬戸際に立っています。
私自身、長谷川商店さんで購入した花火を自分の子供達と一緒に楽しみますが、やっぱり違いは感じてくれますし、全体の本数は少なくても一本一本の充実度は段違いです。
江戸っ子な長谷川さんや心強いスタッフさんのコーディネートで特別な花火大会を少しでも多くの人に楽しんでいただけたら幸いです。
ものときろく代表 神谷