ありがとうの文字
実家のお墓は数年前までは、札幌から車で5時間ほど走らせた江差町にありました。
両親も気にはなりながらも、なかなかふるさとの江差まで行くことは一年に一度あるかないかになっていました。
ところが、弟のALSが発症してから、
「ご先祖様へのご挨拶が足りなかったのかもしれない・・」
「お墓のお掃除が思うようにできなかったのが気になる」
などと弟も言い出し、家族もだんだんみんな気になってきました・・・
そして、父が決断して、故郷の墓じまいをして、札幌の実家にほど近い綺麗な霊園にお墓を移すことになりました。
その時はまだ弟も右手の症状だけで、故郷への車の運転もしていってくれました。
新しい札幌の霊園はとても景色がよく、眺めの良い場所で、札幌市が一望できます。
今までお墓参りになかなか行けなかった一家が、身近なところにお墓を立てることで、ご先祖様に感謝するということを当たり前にするようになりました。
恥ずかしながら、私はそれまでは仏壇に手を合わせることも、お墓参りに行くこともあまりしなかったのですが、今の自分がいるのは父や母、祖父、祖母、その上のご先祖様の誰が欠けてもこの世に生まれることはできなかったんだなあ・・・
そう思うと自然にお墓に行き手を合わせることが増えました。
『おじいちゃん、さとしを助けてね!』『おばあちゃんさとしを治してね!』
お願いばかりでしたが、いつもそんな感じで話をしに行きました。
きっと両親も弟自身もそんなことを話をしてきたのではないかと思います。
はじめはゆっくり歩いて行っていたお墓参りも、車いすに乗せたり、リハビリがてら行ったりしました。
その時はまさか弟が一番先に入るとはその時は全く考えませんでしたが、
もうすぐお墓の雪も解けて、あいさつに行けるようになります。
近いので、弟の友達もよく顔を出してくれます。
父のアイディアで5人の孫たちに一文字ずつ書いてもらった
『ありがとう』
お墓にその言葉が書いてあると必ずその言葉が口から出てきます