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映画#6 『インファナル・アフェア』/善悪の対立の行方を目撃する
悪の仮面を被った善人と、善の仮面を被った悪人。対極の宿命を背負った2人の男たちが辿る道はあまりにも険しく、切ない。
本作は、洋画でも、邦画でもない、生粋の香港映画だ。ここまで洋画ばかり紹介してきたわたしが”名画”のひとつとして香港映画を並べることに違和感を覚えた人には声を大にしてお伝えしたい。
本作は、わたしのみならず、世界中の映画人が憧れて止まない正真正銘の傑作犯罪映画なのである。
その証拠に、巨匠マーティン・スコセッシ監督によって映画『ディパーテッド』としてハリウッド版が製作され(ちなみにこれがアカデミー賞作品賞を受賞している)、日本でも、西島秀俊と香川照之のW主演ドラマ『ダブルフェイス』としてリメイクされている。
わたし自身、父に勧められていなかったらこの作品を観ることはなかったかもしれない、というくらい当時ハリウッド以外の映画にほとんど興味がなかったのだが、そんなわたしの価値観を180度変えてしまうほどのパワーを秘めた本作。4K上映が楽しめる今、ぜひ多くの人に体験してほしい。
< voodoo girl’s 偏愛ポイント >
・香港色に染まったネオ・ノワール
・とくかくかっこいい名優トニー・レオンの黄金期
①香港色に染まったネオ・ノワール
「フィルム・ノワール」という映画用語がある。「ノワール(noir)」はフランス語で「黒」という意味で、文字通り、コントラスト強めのモノクロ映像でスタイリッシュに仕上げた犯罪映画を指す。主に1940-1950年代くらいの映画を指すことが多いが、本作は、それをさらにアップデートさせた香港流ネオ・ノワールと言えるだろう。
内容としては、[マフィアに潜入する警察官]と[警察にスパイとして潜り込むマフィア]という正反対の2人の攻防戦を中心に、警察vsマフィアの構図が描かれる。この秀逸なプロットに、エキゾチックな音楽と夜の香港の怪しい雰囲気が加わることで、ありそうでなかった唯一無二の世界観が作り出され、フィルム・ノワール×香港の相性の良さに驚く。
スタイリッシュさと絶妙な緊迫感と異国情緒が入り混じった映像。「香港ノワール」への憧れは募るばかり、、、
②とにかくかっこいい名優トニー・レオンの黄金期
この作品を観て、[マフィアに潜入する警察官]である主人公を演じるトニー・レオンに魅了された人は数多くいると思う。
顔がかっこいいのもある。
役柄がかっこいいのもある。
でも、それだけではない、彼の存在感にとてつもなく惹かれる。
広東語特有の響きもあるのだろうか?
彼が話すと、「めんどくさいなあ、そんな細かいこと気にしてられるかよお。まあでもあんたが言うならやってやるよ、しょうがない。」みたいな、抑揚の付け方と、ほどよくしまりのない口調から滲み出る人間味に惹きつけられる。
かと思えば、悪と対峙する重要なシーンでは打って変わって、逃すまいと真っ直ぐに相手をとらえる鋭い目つき、余裕の微笑みにドキッとする。
最近でもMarvel作品の『シャン・チー』にヴィランとして出演するなど、まだまだ現役で活躍の場を広げ続けるトニー・レオン。彼の最も脂の乗った時期を本作で堪能してみてはどうだろう。
三部作のジンクス
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『マトリックス』など、三作で構成されたシリーズ映画は、たいてい1作目だけ観ても面白い。一作品で無理に全てを描こうとするプレッシャーがないからか、そこから先に展開の広がる余地を残しているからか、むしろ綺麗に仕上がるのかもしれない。
本作も三部作構成で、三つ観てこそ物語が完結するのだけれど、正直一作目だけでも十分楽しめる。2時間×3本で先が長いことを思うと手を出しづらいという人は多いが、こういう作品は全部観なかったとしても面白い!という根拠のないジンクスに騙されて、まずは試してみることをお勧めしたい。