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どれだけ追い詰められても構わない 怖くはない

思い立って残り15分で走り書き(ある程度書いてとりあえず公開したけど元旦に加筆。笑)。2022年、端的に表すなら“挑戦の先の確立・諦念の先の本懐”だった。今年の、その都度のタイミングの自分を象徴した曲たちと共にざっくり流れを振り返る。

ついに30代に突入した今年。とにかくまず、20代の間に遂げることのできなかった、本気のオリジナルバンド活動をついに始めることができたことに尽きる。今となってはどうやってここに辿り着いたのか実感がない。自分のことと思えない。21年5月に福岡に移住してから回り始めた気運がここまで大きく広げられるとは。

忘れられない日々 忘れたくない光 
精一杯この瞬間に喰らいついて 
色褪せない風景は 間違いなんかじゃない 
精一杯この瞬間を掻いて引っ掻いて
愛そう As long as I live 
触れよう As long as I love 
感じよう As long as I touch
-TK from 凛として時雨“As long as I love(with 稲葉浩志)”-

しかしながら当たり前のように音楽活動できてると言うのは本当に自分からすれば奇跡的な感覚だ。詳しくはもっと落ち着いたタイミングで記すことになると思うが、その過程での数々の美しき心意気の人たちとの出会いとエネルギーの連鎖。

1月に始動してから、5曲のレコーディング完遂・3曲の新曲制作・5月のファーストライブにしてワンマン公演・6月の大阪城野外音楽堂でのイベント出演。悉く満たせなかった音楽をやるということの渇望が、この半年間に圧縮されたようだった。

-Von-fire at ウルウェス[大阪城野外音楽堂]-

自分の人生そのものが具現化した曲たちが、確かに誰かの元に届いた実感。特にライブで見てくれた人からのリアクションが悉く良い。信じて積み重ねてきたことが確かに具現化できている。オールドルーキーだって勝負できると証明していけてると思う。

ファーストシングルはサブスク配信も開始、人生初めての正式なリリースだ。個人的にデモを完成させてたのは5年も前のことだ。ようやく形として示せる日が来てよかった。

今までの人生で1番の曲をつくることもできた。自分が音楽に対してだけは真っ直ぐ折れそうになっても腐らずに向き合ってきたからこそここに繋がった、人との出会いの尊さを物語るような曲が自分の元に生まれてきてくれた。

Von-fireは正式バンドじゃないが、参加者は誰もがメンバーだと思ってる。自分ひとりでは作れなかった、色んな人の力を受けて生まれてきてくれた曲。来年の早いうちにリリースできると思う。この曲が持つ力は本当にすごい。

夏は何も心が動かずただ苦しかった記憶しかない

しかしそこで全てを使い果たした自分は、福岡県に移住してから初めて、関西にいた頃以来の希死念慮にとらわれた。もう何も自分の中に残っていなくて、これだけ豊かな時間を過ごしたのにそこへ戻ってしまった絶望感は果てしないものだった。

夏の殆どが苦しい夜のまま過ぎていった。つい1ヶ月や2ヶ月前までの自分が遠い他人のようで、それまでの感覚がまるで思い出せない。何の力もない、価値のない人間という感覚に支配された。圧倒的孤独だった。

いつか空の上で風を止めて 
光のうねりを殺す羽で
めまいと憂いが不意をついて 
ゆがんだ時間だけ過ぎてゆく
まだ見たことない きわどい角度で
わたしを追い越す わたしの残像 そう

世界が終わるなら 
君とずっともっと 箱の中にいよう
かわり続ける ことばの意味は

いつかの夜の君の淡い影 
光るナイフが切り裂いたとき
散らばるガラスが床を染めて
掴んだ鍵はすり抜けてゆく
まだ見たことない 妖しい温度で
わたしを包んで わたしを見せ続ける
-Mondo Grosso“STRANGER feat.齋藤飛鳥”-

一人じゃないからこそ未だに自分は独りだという真理に引き戻されてしまった。死を見たことのある人間とそうでない人間の間には、決して埋めることのできない圧倒的隔たりがある。その感覚はこれだけ生きた心地がした一年の後も拭いきれなかったし、だからこそ余計にショックだった。

でも堪えて立ち上がるチャンスが来るまでやり過ごした。建設的に未来を感じられる自分を取り戻すことに努めた。結果得た知見、世間的通念ではネガだとしても自分にとって納得いく道をゆけ。そうやって、まだ認めきれずにいた自分の弱さを受け入れ、自分の味方をした。

誰も無傷じゃ済まないのが人生
吹き荒ぶ嵐を走って
上がり下がりや泣き笑い
悩みがない日を探し足搔き
いいことは頑張ってもなく
やなことはただ待ってもある
それなら死にたいの悲鳴は
それでも生きたいと似ていた
-ZORN“いたいのとんでけ”-

最後の1ピースが埋まった気分だった。何よりピンチをチャンスに変えることができた経験から、それ以降何か問題が起きても動じなくなった。それまで通りのやり方が通じなくなった時、それは変化のタイミングの知らせだと捉えるようになった。

その苦しみから夏の殆どを無碍に過ごしてしまったけど、Summer Sonicで見たThe1975、そこからのSigur Ros来日公演全通、そして念願の東京新宿ゴールデン街で得られた生きてる実感。自分が自分の好きで自分のためだけに積み上げてきたもの、それが縁を生むとわかった。これから再会していく度に自分の成長を報告したいと思える相手や場所がまたひとつ生まれた。

僕がやることと言ったら
ただ座って君のことを考えるだけだよ
君がやろうとしていたことをもし理解できていたならと
綺麗な靴を履いたままの僕の静脈を切ってくれ
死んだも同然さ、君と居られないなら

僕がやることと言えば
ただ座って君が不在のなかで酒を飲むだけさ
もし僕が選んでしまえばその瞬間が敗北となる
酷いニュースから僕の意識を遠ざけてくれ
君と居られないなら死んだも同然なんだ
-The1975“It's not living(if It's not with you)” 私的和訳-

それ以降、関西と福岡を行き来する生活に切り替えた。ひとつの場所に留まって生きていけない自分を受け入れることにした。その上で今年上半期、自分がVon-fireを進めていく過程で出会った人たちとお酒を呑む機会があって、彼らが皆その頃の自分の鏡のようなことを言ってくれる。

そうだ、こういう人たちが好きだ。こういう人たちとアツい話をしている自分が好きだ。ということを思い出した。福岡にも既に立派な居場所があった。これもまた自分がただやりたくて積み上げてきたものを介して生まれた繋がりだ。

君は君でいられなくなる 
呼吸の仕方さえ思い出せない 
処刑台の列は続く 染み一つない純白の地平線へ 
傷跡に針を落とす メロディが君を呼び起こす 
なにもかもをこわしたい 君を蝕むもの全部 
酷く清く美しく とりかえしがつかないくらい

ああ 忘れないで 私の終りを 
ほどけないようにきつく結んだ 君が一番欲しかったもの 
消えない痛みが僕らを 連れて行って 輪廻の向こうへ 
引き裂いて 抱きしめてよ 何度だって 何度だって 
消えない傷をあげる 花束の代わりに 
癒えない痛みが奏でる 繋いでいて 繋いでいて
-THE SPELLBOUND“すべてがそこにありますように”-

自分を形成してきたあらゆるトラウマが払拭されていき、クリアな視界に辿り着いた自分の元に残ったのは、執着や不純なく混じり気なく他者を想う心だった。それが誇らしかった。こんな風にまた人を想える時が来た、その事実が本当に嬉しかった。そしてそこに導いてくれたのはやっぱり音楽だった。

その時その時自分の心を導く音楽が俺の前に現れる。それに従っていれば俺の背筋は自然と正されてなりたい自分になっていく。自分が関わっていて好きな相手や好きな場所に出会っていく。だから何があっても音楽だけには嘘はつかない。それが俺の最大の強みで、それを曲げたら何も残らない。

お互いの何を知っているかな
傷つくのが怖いと臆病になる
大切な言葉 素直に言えなくて

恋の予感からひとすじの愛を
注ぎ込んでいこう
馬鹿をみるでも信じていたい
昨日今日明日と同じ日はないさ
心が苦しい時は抱き合って

満ちて欠ける月の様な
光も影も僕らの心の姿のまま

積み上げていこう
素顔のままを裸の想いを

恋の予感から一番大事な
想いが溢れた
君の心に届けたいんだ
好きだよ 好きだよ たったそれだけで
どれだけ追いつめられても
かまわない怖くはない
-レミオロメン“恋の予感から”-

終盤には音楽だけでなく、写真を通しての縁や自分が成長を実感できる時間も増えてきた。自分がただやりたくて取り組んでいることを通して生まれる出会いや時間は、自分の心意気が真っ直ぐな部分で関われる人たちとの時間は最高に楽しいし活力になる。その関わりの入り口となる方式も増えている。

逆にお互いのだらしない部分を認め合える長年の付き合いも本当に心強い。俺の美しい部分、汚い部分どちらも本当だ。それぞれのところで関われる相手がいればそれでいい。全てを同一の相手に理解してもらうことは求めてない。気分良く関われる世界が色んな場所にある。

(Von-fireでも大活躍してくれてるドラマー・カートくんとフォトセッション)

自分が自分のために突き詰めてきたことを通して、好きな人たちと繋がれて、好きな話を重ねてる。生きてきてずっと求めていた状況を手に入れている。十分幸せだ。でも今なら、それ以上のところへ向かっても良いと思う。自分はそういう器に進化していける。もっと成長したい。だから仮に茨の道でも自分のやりたいことならとことんやる。

痛みを含めて幸福を実感できた、大きく成長できた一年だった。でも不思議と満足していない。沸々と衝動が湧いている。良いバランスだ。来年もっとバンドも俺個人も成長する、前へ行く。とにかく生き延びて笑顔で会おう。今年関わってくれた皆さんに感謝!

(今年の自分のヴァイヴを物語る被写体作品 by 敏腕ギタリスト・ノリアキくん)