父からのプレゼント 小学生編
暑いッス。まぁ暑い。
だからここでひとつ以前のような、父と僕の
冷えるようなプレゼントのエピソードを。
クリスマスの話ですけど、んまぁいいじゃない。
正直言うと運営からお知らせの来る連続投稿の
記録が欲しくて、書きためたやつを投稿してやろうという魂胆です。ではお付き合いください。
前回の記事
これは小学生の頃に起きた、父からのプレゼントに
まつわる残念エピソードです。
前回と違ってこれはマジで残念です。
・プレゼント買いに行くぞ、本屋に
小学校4年生〜5年生と記憶してる。
クリスマス、母は仕事に出掛けていたので
父が姉2人と俺を伴って、家からほど近い
大阪・難波に出向いた。
父はプレゼントを買ってくれる場所を、分かる人は分かると思うけど千日前のジュンク堂書店に
決めた。現在はドンキホーテになっている。
父は大の読書家ゆえ、子ども達3人にも本を
買い与えてやろうと思ったのだろう。
あと、1ヶ所にとどめて買ってやると
手っ取り早いと思ったのかも知れない。
小学生ながらにこの大型書店には自転車を
20分ほど走らせてしょっちゅう行っていた。
中高生になっても大人になっても、閉店するまで、
本といえばまずここだった。
だいたいの本の類なら何でもかんでも揃った。
余談ではあるが、未就学児の頃から連れて行って
もらい、小さい子から見るスケール的には
デパートと遜色ない程度なので迷子になり下がり
大号泣する俺をレジカウンターまで親が平謝り
しながら迎えに来たことが数回程度あった。
だってさ、この本屋でかいんだもん。
通い慣れた場所ではあるがクリスマスプレゼントを
買ってもらえるとなると胸が高鳴った。
街中や店内のクリスマス感も相まって
テンションが爆上がりしていた。
俺も読書が好きだ。何でも買ってくれるらしい。
流石にコミック全◯巻みたいなのはダメだが
選りすぐりの一冊は買ってくれるようだ。
・俺のクリスマスを探しに行くぜ
半ば、よーいドン!ってな具合に俺達3人は
散り散りになってお気に入りを探しに走り出した。
興味もなく、ましてや読める訳がないのに
大人が読むようなビジネス書を眺めたり、
はたまた当時より以前からずっと好きだった
ブルース・リー関連の書籍を眺めたり、
まるでトイザらスみたいにどこに目をやっても
楽しくて仕方がなかった。
探している最中、いずれかの姉を見付けたら
「良いのあった?」
「まだ無いー」
「ふーん、まだ探してみるー!」
…みたいな感じで四つ葉のクローバーを
探すみたいに店内をくまなく歩き回った。
その間、父はエスカレーター沿いの椅子に
腰掛けて、既に買ったであろう自分の本を
黙々と読んでいた。
・探し歩いた末路
体感で2時間半ほど経った頃、さすがに俺も
いささか歩き疲れて、ジュースでも買って
くれるのを少し期待しつつ読書中の父に駆け寄る。
コーラがいいな。350mlの缶がいいかな。
「お父さーん!」
「おぉー利喜弥、見付かったかー?」
「まだやねーん!」
「そうかそうか、姉ちゃん等は?」
「まだ決まってないみたい」
「ほーん、そうか、ところでなぁ、お前のは
コレがええと思てもう買っといたぞ」
…え?もう買った?
利喜弥少年は優しいので、裏切られたが
「話が違うやんか!何でやねん!!」
とは食い下がらない性格をしていた。
そんな事より先程からいやに漂うコーヒーの匂い。
父は、テーブルに置いた缶コーヒーを飲んでいるが
普通はこんなには匂いは強くならない。
しかし二人の空間を厚く包むようにコーヒーの
匂いが鼻につく。小学生にとっては比較的
悪臭めいたもののように思えた。
さっきまでは新品の印刷物特有のパリッとした
清潔感のある香りが鼻に染み付いていたハズ。
俺は(コーヒー臭いな…そんなに飲んだの?)などと
浅はかな推理をしつつ、片や父は書店の袋から
俺に買った本を取り出しながらこう付け加えた。
「お前に買った本やけどなーうーん、
コーヒーこぼしてもうてなハハハハハ」
は??????
差し出された本に目を落とすと、表紙はおろか
コーヒーが内側のページにまで何滴も何滴も
大小撥ねかかりまだそれが乾き切らぬ、
今しがた汚れたばかりの剣道の教則本。
気色の悪いことに茶色い水滴は大きなものになるとそこだけいやに波打っている。
胸の前あたりで手に本を持っているとまた一層
むんむんとしたコーヒーの匂いが強くなって
気分が悪くなった。
コーヒーをこぼしてしまったと。本に。
息子へのプレゼントの、新品の本に。
びしょびしょと、コーヒーを。
・内心
ちょっと待て、どこから突っ込めばいい?
いったん、いったん、俺の気持ちを考えてくれ。
まず、まず、俺の気持ちを考えてくれ。
第一、俺は自由に本を買ってくれる約束で
店内を歩き回ってお気に入りの一冊を探していた。
俺に無断で全ての選択肢をフイにして
勝手に買うな。俺はまだまだ選びたい。
しかも何で俺だけ勝手に買われてるんだ。
姉ちゃん二人は最終的に好きなの選んで買って
もらったじゃねーかよ。
内容として、剣道の教則本だった訳だけど、
実際に、当時俺は剣道を習ってはいた。
それなりに熱意を注いで稽古に勤しんでいたが
だからといって別にそこで俺は別に剣道の教則本を
欲しかった訳ではない。
…高名な剣道家が昔出した自伝兼教則本だった。
そんで悪いけど、その著者である剣道家さんは正直
興味ないし知らないし装丁が古臭くてパラッと
開いても当時の俺にはなかなか読みづらかった。
せめて、最近の見やすい教則本を買ってくれ。
というか既にその本より読みやすいのを持ってた。
俺のために選んだ、んだろうけど、そういうのは
今いちばんありがたくない気持ちだった。
第2に、というか一番言いたい事なんだけど、
コーヒーこぼしたって何なの?
ナメてる?
10歳くらいの息子とは言えナメてる?
お前が勝手に、息子とは言えども他人へ贈る
プレゼントに手前の不注意でコーヒーこぼして
ヘラヘラしないでくれる?
親が思う以上に子どもにとってはクリスマスの
プレゼントって本当に特別なんです。
最終的にその年のクリスマスプレゼントに貰ったの
コーヒーまみれで悪臭を放つ
欲しくもない古臭い剣道の教則本
なんですけど。
クリスマスプレゼントと呼ぶにはあまりにも
ガラクタ過ぎるじゃねーか。何やってんだお前。
BOOKOFFでもまず見当たらねーよ。
査定後に買い取れませんって言われるやつな。
勝手に買った、好きじゃない本どうのはとりあえず置いといて、愛息子の今年のクリスマスを
いいものにしようと思わなかったのか?
俺なら、コーヒーで汚してしまったらその本は
バレないうちに捨てて新しいものを買うくらいの
ことはすると思う。
値段は覚えてないけど大層な金額じゃなかった。
それがバカ高い本だったとしても値段の問題では
ないから多少無理をしてでも新しいのを買って
与えるんじゃないかな。多分ね。
父が一方的にかつ全面的に悪い結果及びその本を
どんな表情と言葉で許したかは覚えてない。
もちろん怒りの感情は持ち合わせてはいたが。
勝手に選んだ汚い本を差し出された時点で既に
お気に入りを再びその足で探し始める気力は
失せていたと思う。
長時間ウキウキで選んだ挙げ句、突如選択の自由を
奪われ、かなり最悪に近い形でプレゼントを
与えられてしまった俺の気持ちを考えろ。
なのにコーヒーこぼして大した謝り方もせず
何ヘラヘラしてんだお前。
当時のアンタにうってつけの映画がある。
息子より仕事を優先してしまうあまり、失った父
としての信頼を取り戻す為に、クリスマス前から
息子が欲しがっていた、大人気で超入手困難の
「ターボマン人形」を手に入れる為に我が子を
想う父が奮闘する姿を描いたハートフルな
ドタバタコメディ「ジングル・オール・ザ・
ウェイ」を観て出直して来い。
単純にこの映画自体めちゃくちゃ良い。
「ホーム・アローン」シリーズ以外での
全年齢層向けクリスマス映画で一番オススメ。
この映画の主人公のシュワちゃんなら、入手困難のその「ターボマン人形」をやっとの思いで手に
入れても、もしも汚したり傷つけてしまったなら、
それを貰う息子の気持ちを考えてまっさらな新品をひたむきにまた探し始めるほどの気概を見せると
思う。きっとそうだろう。
剣道の教則本なんて余程じゃなければ
売り切れないし、せいぜい2000円そこそこ程度で
手に入るんだからそれくらいはしろよ。
よく知らないけどターボマン人形よりは比較的
安いもんだろうよ。分かんないけど。
何を貰ったかなんて、友達に言えなかったなぁ。
・その後
ふと気付くと、次のクリスマスくらいには
コーヒーの臭いが自然と消えていました。
以上