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包帯の記憶
夏休み・お盆・帰省、こんなワードが並ぶと私は包帯を思い出す。
長男が幼稚園に入る前ぐらいの夏、帰省前に足にけがをしてしまった。自転車の後ろに乗せていて後輪に小さい足がどういうわけか入ってしまい、くるぶし近くの肉がえぐれてしまったのである。スポーク外傷というらしい。
傷が深かったのでしばらく通院していたのだが、帰省先でも消毒のため病院へ行かなければならなかった。
けがをした当初は痛みで大人しくしていたものの、傷が治ってくるとじっとしてなんかいない子どもの足首の包帯はすぐにユルユルになってしまう。
だが、夫の母は昔看護師だったので、それはそれはきれいに包帯を巻き直してくれた。きれいなだけじゃなく、きつすぎず、ゆるすぎず、その上息子が動きまわっても乱れない絶妙の巻き加減だった。
息子も心地よい巻き方の包帯に、ご機嫌なようだった。
きれいに巻かれた包帯で病院へ行くと、若い看護師さんがその美しい包帯の巻き方を見て、絶句していた。
もう一人の看護師を呼び、「これ」と言って、息子の包帯を見せていた。
最初に対応してくれた看護師さんが何か言いたげにこちらに近づいてきた。
「あの、お母さんは・・・」
私は、付き添いで来ていた義母を紹介するかのようなジェスチャーで、「元看護師です!」と言うと、彼女の顔がやっぱり!!という表情になった。
そして、医師の診察が終わり、新しい包帯を巻く段になって、若い看護師さんは「はー、緊張する~」と何度も言いながら、息子の包帯を巻いてくれた。
それを見た義母は、やさしい微笑を浮かべ「大丈夫、大丈夫」と声をかけていた。
家に帰ってから義母から聞いた話だが、包帯の巻き方を見れば経験値がわかるらしい。
経験豊かな義母の包帯巻きは、若い看護師さんの驚きと敬意を引き寄せた。義母への誇らしい気持ちと、一方で息子にけがをさせてしまった申し訳なさの両方が夏の思い出の一つになっている。