茶色いお弁当
「お弁当のおかずは、もう少し、色があるほうががいいな」
毎日作ってもらえることへの感謝のかけらもない私の言い草に母は
「だったら明日から自分で作りなさい」と言った。何だか少し、待ってました!と言わんばかりの言い方だった。
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
翌朝から、私のお弁当作りは始まった。
今にして思えば忙しい朝の台所で私がちょろちょろとお弁当のおかずを作るのは邪魔ではなかったのだろうか・・・。
でも、記憶に残っているのは「ふーん、あなたが望む色があるおかずってのは、そういうやつなのね・・・」という感心しているようでもあり、呆れているようでもある母の顔だった。
母は、私に家事をやらせるのがうまかったと思う。
私が中学生になると、大きな蓋つきのバスケットを買ってきて「はい、これに自分の洗濯物を入れてね。自分の物は自分で洗濯してね。まだ私にパンツを洗い続けてほしい?」と言った。
そんなふうに言われてしまうともう自分でやるしかない。
料理の手伝いも、「あ、手が空いているならインゲンの筋取りお願い」から始まって、「あ、ちょっと鍋を混ぜててくれる?庭から大葉をとってきたいから」「あ、ついでにゆで卵の殻を剥いておいて」で、いつの間にか切ったり、焼いたりの工程が追加で頼まれ巻き込まれるのがいつものパターン。
おかげで料理は見て覚えた。
一人暮らしをするときに「家事に関しては何にも心配いらないね!」って母は鼻を膨らませて言った。
いつの間にか家事ができるように仕向ける母のこの作戦に感謝はしている。けれども、お弁当に関しては、自分の発言に後悔をしている。
だって、茶色いお弁当って本当は美味しいんだよね。
今ごろ言って、ごめんなさい。
見出し画像は500mlさんの作品をお借りしました。
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