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ふるさと納税の落とし穴──不交付団体の住民が直面するリスク
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ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付した額に応じてその自治体から返礼品が貰えて、かつ住民税も還付・控除されるというお得な仕組みとして人気があります。しかし、特に、不交付団体の住民にとっては、自分で自分の首を絞める悪魔的な制度とも言えます。
不交付団体とは、地方交付税のうち普通交付税が国から交付されない、財政力の高い自治体のことを指します。令和6年度の不交付団体は以下表のとおり83団体あります。
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不交付団体は住民の多い首都圏の市区町村をはじめ、観光業が盛んな自治体、工業が盛んな自治体、原発マネーで潤う地域の自治体など様々です。不交付団体の住民が別の自治体にふるさと納税(寄付)を行った場合、寄付者に「住んでいる自治体」から税金が戻ってきます。これを全体として見れば、不交付団体から別の自治体へ資金が流出していることになります。
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ふるさと納税による資金の流出が大きくなればなるほど、不交付団体の財政に対するマイナス影響も大きくなります。そして不交付団体の公共サービスやインフラ整備に割ける予算が少なくなっていく可能性があります。
つまり、不交付団体の住民たちは、自分の利益を優先することで、地域の公共の利益が阻害され、結果的に自分たちの暮らしの質が低下する可能性があるわけです(なお、交付団体においても、流出額の75%が交付金として国から補充されるので影響は不交付団体よりも小さい(25%相当)とはいえ、ないわけではありません)。
ふるさと納税を利用する際は、単に返礼品のメリットだけでなく、自分が住む自治体や地域全体への影響も考慮することが大切でしょう。