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vol.555『次の幹部社員を育てる社内〇〇会のススメ』(2024年8月23日配信)


「木鶏会」:読書を人材育成につなげる方法

先週は夏休みでしたね。今年は9連休の会社も多く鋭気を養われた方も多かったのではないかと思います。私はあまりの暑さに外出を控えて読書に耽っておりました。

とりわけ読み出したら止まらなかったのが直木賞作家・池井戸潤さんの『俺たちの箱根駅伝』。チームビルディングやリーダーシップがたくさん学べる良書です。

そんな有益な読書を、人材育成につなげる方法があります。「木鶏会(もっけいかい)」と言います。木鶏とは、その字の通り木の鶏のことで、何事にも動じない、堂々たる姿勢を表します。

木鶏会では、参加者が同じ本を読んで、そこから得た気づきや感想を信頼できる仲間と話し合います。「そんな考え方もあるね」「その見方、いいね!」のように、自分の考えを発表したり、他者の意見を聴いたりします。

すると、知見が広がり、固定概念や先入観が破壊され、人としての度量を高めることができます。そうして、徐々に木鶏のようなぶれない人間に成長していこう。その目的で『致知』という出版社が全国に木鶏会を広げたのです。

木鶏会に真摯に取り組む会社は、だんだんと社員一人一人の行動の基盤となる価値観が揃い、組織の一体感と全体のモチベーションが上がる効果があります。

社内木鶏会の実践例

この木鶏会、読む書籍は『致知』の本である必要はありません。経営者が「これいいな」と思ったものなら書籍や雑誌、DVDでも何でもよいのです。

前々回のメルマガで、中田敦彦さんの『youtube大学』を毎月役員全員で観ている会社の例を紹介しました。皆で同じ動画を観て、その後気づきの交換会をすればそれも立派な社内木鶏会です。

そんな社内木鶏会を、私のクライアントの製造業では、後継者育成のために実施しています。月1回2時間。参加者は、社長と副社長、及び2人の後継者の計4人。最近の課題図書はモラロジー研究所発行の『徳づくりの経営』。

同書は5章立てですが、毎月1章ずつ読んで、気づいたこと、思ったことをシェアするのです。が、漫然と読んで感想を言い合ったところで、なかなか良い議論にはなりません。そこで同社では私から課題を出すようにしています。

先日、私は以下のような課題を出しました。

問1 本書には「繁栄の原理は、資本、経営法、人員、広告等の大小によらず、道徳の質と量による。かつ開運の結果による」とあります。当社もいくつもの「開運」を招いてきたと思いますが、当社では何をすることが開運に繋がりますか?

この問いに対し、社長は以下のように発表しました:

「我が社は、過去20年間だけをとっても、いくつもの危機があった。財務上の危機、工場の火災、無謀な受注、仕入れ先とのトラブル、請求のトラブル…etc が、そのような危機に際してわが社は絶対に逃げなかった。どんな時も受注責任を全うしようとしてきた。それが、開運につながった」

これを聞いて、私には社長がとても逞しく見えました。実際に起きたエピソードを具体例に聴いていると、「絶対に逃げない、受注責任を全うする」姿勢はまさに当社にDNAだとわかります。

特に後継者には、ここで聴いたエピソードと言葉はこれから予期せざる危機に襲われた時に寄って立つ大きな精神的な支柱になるでしょう。

同じ問いに対し、後継者からは次のような意見が出ました:

「開運は偶発的に起こるものではなく、結果として『あれが開運につながった』と思うようなことだと思う。そのために普段から会社を良くするためにやるべきことをやっておく必要がある。『あの時やっておけば』…などと、タラレバが出ないように」

開運というと、神頼みのようなイメージがあります。が、日頃からしっかりやるべきことをやって準備しておけば、結果的に運が良い状態になるという考え方です。「運にすがる」のではなく、「運を拓く」発想とも言えます。

また、もう一人の後継者は、「失敗を恐れずまずやってみること。社員を信じること。人と人とのつながりを大事にすること。いろいろな人と話をすること」それが開運につながるのだと発表しました。

「やらない後悔より、やった後悔」といいますが、やったことで仮に失敗したとしても、そこから何かを学び取ることが開運に繋がり、やがて成功するという意見でした。

このテーマだけで、30分以上意見交換をしました。後継者が今まで知らなかった組織の成功体験や黒歴史がどんどん表に出てきました。それがとても新鮮なのです。

木鶏会をやることの効果

結果的に「逃げずに最後まで受注責任を果たす」「日頃からやるべきことをやっておく」「失敗を恐れずまずやってみる」「コミュニケーションする場と時間を創る」ことが当社の開運につながることが明白になりました。これまで言語化できていなかったことが、全役員の心にストンと腹に落ちました。

これが同じ本を読み、感想を交換する木鶏会の開催意義であり、チカラです。

また、同社の木鶏会では、私から課題を出すばかりではなく、メンバーに仲間とディスカッションしたい箇所があれば提案してもらっています。

先日の木鶏会では、社長以外の3人の役員から、「徳を積むとはどういうことか?について皆と話し合いたい」という提案が出されました。

この問いについて社長は、間髪入れずに以下のように答えました:

「徳を積むということは、困ってる人を助けるということだ」

この回答に私はとても感心しました。このように、シンプルで力強い言葉を口癖のように言えるトップがいる会社は一枚岩になりやすく、ミーティングを重ねるたびに組織力を上げていくことができます。

社内木鶏会の始め方

こうしたメリットの多い社内木鶏会ですが、題材は経営の難しい本じゃなくても構いません。社長が『この本を皆で読みたいな』と思った本やDVDなら何でもいいのです。冒頭に紹介した池井戸潤さんの作品や映画でも良いでしょう。

それを元に、意見交換をすれば、お互いを認め、リスペクトし合う強い組織へと進化していくでしょう。

間もなく、読書の秋です。あなたの会社でも是非社内木鶏会に取り組んでみてくださいね。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. 木鶏会の具体的な進行の流れは?

  2. 問いを設定する時に酒井先生が意識していることは?

  3. 初めて木鶏会を導入する際に注意すべき点や成功のためのアドバイスは?


お知らせ

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ほぼ週刊でメールマガジンを発行しています。その時々に経営者の皆さまが関心を持たれるトピックの解説や、そこから経営に活かせる知識などを紐解きます。

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#池井戸潤 #俺たちの箱根駅伝 #木鶏会 #致知 #youtube大学 #中田敦彦 #モラロジー研究所 #徳づくりの経営

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