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vol.557「やらされ感をワクワクに変えるビジョンの発想法」(2024年9月6日配信)


ビジョン開発の重要性と増加傾向

残暑の厳しい毎日が続いていますね。今年の4月のメルマガで、「今年はビジョン開発の年だ」と申し上げました。2030年という区切りの年が5年後に迫り、今年から来年にかけて自社の2030年ビジョンを開発する会社が増えるのでは?という予測です。

2019年、弊社は総計43社もの2025年ビジョン開発に関与させて頂きました。それと同様に、今年もたくさんのビジョン開発のオファーをいただいています。3日連続、日替わりで3社にビジョン開発のコンサルでお伺いする日もあります。

私のやり方は、クライアントの社長と幹部社員が1つの経営チームになって「私たちのビジョン」を侃々諤々議論して開発します。私はそのファシリテータを務めています。そのおかげで、私は毎日、とても楽しいです。というのも、クライアントの皆さんがビジョンを考えてる姿がとても楽しそうで、それを見ているとこちらもまた楽しくなるからです。

ビジョン開発の2つの発想法

ではなぜ、ビジョン開発は楽しいのでしょう。ビジョン開発には、2つの発想法があります。

1. アウトサイド・インの発想法

この方法は、まず自分を取り巻く環境(アウトサイド)のことを考えます。社会、経済の動き、法規制の変化、ライバル会社の動きや株主、銀行等からの要請などが外部環境です。また、組織としてどうしてもアウトプットしなければならない結果、達成目標や、KPI/KGIなども外部環境です。

アウトサイド・インで未来を考える時はネガティブ・アプローチやギャップ・アプローチの発想法を用います。ネガティブ・アプローチは、上記の外部環境に適合するために自社の短所や欠点を洗い出し、それを補強するために何をするべきかを考える方法です。また、ギャップ・アプローチは何かと比較してそれとのギャップ(差)や違いを埋める発想法です。

このネガティブ・アプローチやキャップ・アプローチは自社が克服すべき課題がはっきりと見えるという意味で、極めて有効です。しかしながら、この発想法には限界があります。まず、この発想法から見出した課題を見ても、それは他社と同質、平凡なものになってしまうことです。しかも、語尾が「**しなければならない」のように強制的に迫ってきます。それに取り組む現場は「やらされ感」一杯になってしまいます。

2. インサイド・アウトの発想法

インサイド・アウトは直感的に「これ面白そう」とか「やってみたいなあ」「あんなふうになりたいなあ」「まあ これがいいんじゃないかな」など自分が日頃から感じていることや、想い描いていることをどんどん膨らましていきます。

それを仲間と話していると「こんなこともできたらいいな」という欲が出てきます。また、「常にこうでありたいよね」をあるべき姿も出てきます。そうして徐々に理想像ができてきます。そうしたら、さらにその実現に向けてどうやって歩んでいったらいいかを考えていきます。

このときポジティブ・アプローチやビジョン・アプローチの発想法を用います。ポジティブ・アプローチは、自分の得意や魅力をさらに伸ばすとどうなるかな?を考えていきます。またビジョン・アプローチは、自分がなりたい目標を設定します。そこから逆算して、今、何をやりたいかを考えていきます。

インサイド・アウトの優位性

アウトサイド・インとインサイド・アウトの2つの発想法のうち、私はインサイド・アウトを多用します。なぜなら、話し合っていてワクワクするからです。

今日、どの会社のビジョンを開発していても必ず出てくるのが「離職防止」という課題です。そのための手段として賃金アップは欠かせません。このとき、アウトサイド・インで考えると「離職を防止するために、賃金をアップする」となります。言外の表現を加えれば「離職を防止するために、仕方なく賃金をアップしなければならない」となります。なんか「やらされ感」や「いやいや感」が伝わってきます。

一方、インサイド・アウトで考えると「社員のお陰で今がある。彼らこそがわが社の宝だ。だからこそ、皆に笑顔になってもらいたい。業界水準や地域の同規模企業の水準より10%は高い賃金を支給できる会社になりたい」となります。

すると、そのような体力のある会社にするためにどうしたらいいか…が自然と頭に浮かんできます。

・設備投資、DX投資を行い、生産性を高める
・価格政策を進める一方で、不採算ビジネスを整理する
・5Sと改善提案活動を今より活発にする
・毎月一定時間を確保して社員教育に取り組む

こうした課題はすべて「ねばならない」ではなく「やりたい」になります。しかも、社長だけでなく社員皆がそう思うと大きなエネルギーになります。

ビジョン開発の実践例

経営方針書に、「組織横断のDX委員会を創り、毎年の売上の0.3%をDXに投資する」「毎年の粗利の目標達成超過分の10%を賞与にアドオンして社員に還元する」などの記載を見かけることがあります。こういう会社は「ねばならない」ではなくて「会社はやりたいことで溢れている」状態だと感じます。

あなたの会社は、アウトサイド・イン、インサイド・アウトのどちらの発想法を中心にビジョンを開発していますか?もしアウトサイド・インが多い会社は、やらされ感の蔓延に気を付けましょう。そして、インサイド・アウトの発想も加えてみてくださいね。

実践に役立つ動画の解説

このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。

質問項目

  1. インサイド・アウトはビジョン開発以外の場面でも有効ですか?

  2. インサイド・アウトに不慣れな人でも実践しやすくする方法は?

  3. インサイド・アウトで生まれたアイディアやプランを実行するときに大切なことは?


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