vol.543「社員を守るカスハラ対策は万全ですか?」
カスタマーハラスメントの深刻な実態
カスハラ、という言葉をご存じですか?
「カスタマーハラスメント」の略で、お客が従業員に対し、クレームが高じて強烈な嫌がらせをすることを指します。
3月、労働組合でつくるUAゼンセンがサービス業の組合員3万人を対象にアンケートを行いました。その結果、「2年以内にカスハラの被害にあった」と回答した人が、46.8%もいました。
この調査によると、最も印象に残っているカスハラは、
「暴言」が39.8%、「威嚇・脅迫」が14.7%、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が13.8%、「長時間拘束」が11.1%でした。
さらにカスハラの原因は「客の不満のはけ口や嫌がらせ」が26.7%、「接客やサービス提供のミス」が19.3%、「消費者の勘違い」が15.1%など、客側に原因があるケースが目立っています。
「お客様は神様」の呪縛から脱却
この結果を見たら、経営者は黙っていられないでしょう。近年は「社員第一主義」の企業が増えています。社員第一と考えているのなら、理不尽な顧客から社員を守るのが経営者の義務です。
それには、わが社にとってお客様とはどういう人なのか、これを明確に定義する必要があります。
わが国には、「お客様は神様です」という言葉がありますが、私はこの言葉が、お客様を増長させているのではないかと思います。
この言葉は「俺は客だぞ。客に向かってその態度は何だ」「上司を出せ」「土下座しろ」という、心理的な優越感を客に与え、傲慢な態度に走らせます。
また、昨今は「ネットに書き込むぞ」というのも相手を屈服させる脅し文句になっています。
「お客様は神様」の本来の意味
そこでこの「お客様は神様です」のルーツを辿ってみました。どうやら、その原点は昭和の演歌歌手、三波春夫さんです。
三波春夫オフィシャルサイトには、三波春夫さんが「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な芸をお見せすることはできないと思っております。
ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです」と書かれています。
つまり彼は、手を抜いても誤魔化してもお客様に見抜かれる。地道に、陰での努力を重ねたらそこはちゃんと伝わる。どれだけ喜ばれようと思って準備してきたかは必ず伝わる。お客様は「何でもお見通し。だから神様だ」ということです。
決して「お客様は神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさい」などの発想、発言ではないのです。
お客様の適切な定義づくり
経営者はこのような背景を社員に説明して、まずは、「お客様は神様です」という、漫才師が受け狙いで繰り返しただけの、間違いだらけの昭和言葉の呪縛から社員を開放する必要があります。
その上で、お客様とはどういう人を指すのか。「お金を払ってくれる意思があるとしても、こんな態度の人はお客でも何でもない。お客ではない」という基準を示すべきです。
私のクライアントの鋳物製品製造業は、それを実践しています。同社では、お客様を以下のように定義しています。
1.私たちへの「社会の期待」を明確に示してくださる方
2.期待に応えた私たちに、しっかり「ありがとう」を感じていただける方
3.その上で私たちを評価し、社員を笑顔にしていただける方」
この定義は社長と部長3人、入社2~3年目の社員4人の計8人で作成しました。若い人たちが一緒になって考えることで納得感を高め、全社共有しやすくなると考えたのです。そのため、誰にでもストンと腹落ちする内容になっています。
対策の具体化が重要
近年のカスハラ増加に対応するためマニュアルを用意する会社も増えてきています。先ごろJR東日本がマニュアルを作成し話題になりました。
上記のような「お客様は神様です」の勘違いの払拭や、「お客様とは何か」の定義をしたうえでやり方を示していただければ、社員は安心して行動できるでしょう。
社員を守るのは経営者の仕事です。過度のカスハラで実行判決が出た例もあります。
是非、社員が傷つく前に、守る行動をとってくださいね。
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実践に役立つ動画の解説
このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。
自社にとっての「お客様の定義」を考える具体的な流れや方法は?
社員がカスハラに適切に対応できるようになるにはどうすればいい?
そもそもカスハラに合わないためにできることはある?
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